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ターミナル・リストの簡単まとめと評価

アマゾンプライムごり押しの作品ターミナル・リスト(The Terminal List)を簡単に要約して、問題点と内容の深堀にちょっと挑戦してみた

(今週の一枚)夏?梅雨?(pixiv

 

 夏だか梅雨だかわからない気候で創作意欲も減衰しているので、ちょっと志向を変えて最新作品ターミナル・リスト(The Terminal List)を視聴した。ただ見るだけだとつまらないので、作品の要点と問題をまとめてアメリカの雰囲気を考えてみた記事

 

ネタバレを多く含むので未視聴の方は注意

 

8時間ドラマを800字であらすじ要約

 スーパー強いネイビーシ~ルズ☆のジェームズ・リース少佐達ご一行がおり、ある日、彼らは秘密作戦に失敗して部隊が全滅し、少佐がたった一人生き残る。原因は精神が強いはずの部下の錯乱と考えられない異常行動であった。その後、少佐自身にも記憶障害が出ており、作戦中の行動と記憶が一致しないことがわかる。

 記憶の混濁がみられる中、少佐は作戦失敗の報告書に疑問を抱き独自に捜査を開始する。軍関係に詳しい記者と連絡を取り、軍の汚職に関係して自分の身が危ないことを知らせる。しかし、これは少佐の妄想かもしれないと暗示される。そんな中、脳の検査中に病院で少佐は襲撃を受け、家族が殺される。

 これは妄想ではない。少佐達の部隊は精神的に消耗しているということで秘密裏に新薬の実験動物にされていたのだ。そう確信して調査を進めると犯人は製薬会社と軍上層部にいるらしいことがわかる。かつて同じ部隊にいた仲間達の協力で暗殺者の居場所を突き止め拷問し、製薬会社の経営者を街中で爆殺(その後銃殺)する。

 新薬の影響で脳に腫瘍ができ記憶障害に苦しむ中、指名手配犯になった少佐はFBIの捜索部隊から辛くも逃げおおせる。シールズの技能を使って巧みに追跡をかわし、最後は強運によって難を逃れたのだ。

 記者の協力もあり、製薬会社の関係者から軍の裏切り者の名前を聞き出すと、次々とその愚か者たちを殺してゆく。FBIも海軍司令部の汚職に迫るが政治的圧力によって捜査が妨害される。FBI捜査官と邂逅し説得されるが、「俺が法律だ」ということで交渉は決裂し、結果、少佐は海軍汚職の中心人物・将軍を人間爆弾で始末する。

 実はこの事件、海軍内部だけの話ではなく、文官トップの国防省長官も絡んでいた。…というわけで、おまけ的に長官を襲撃して自殺に追い込む。理由は特にない。

 長官とインタビューをしていた記者は関係者がごっそり死んだので、めでたく記事を公にでき、新薬がらみの軍の汚職は明るみになった。

 そして、最後に一緒に戦った仲間が汚職の関係者だとわかる。

 当然ぶっ殺して終幕。

 

正直な総評

 ぼーっと見るのにはとても面白いしアクションシーンも結構すごい。ただ、クライマックスがストーリーの中盤あたりになっていて、最初と最後がとてもつまらない。クライムサスペンスかというとそうでもないし、アクションムービーかというと微妙。おそらく2時間映画として作ればとても面白い作品になったのではないだろうか。

 一般日本人としてみると上の評価になるが、随所にアメリカが抱える問題点、帰還兵のPTSD、軍と企業の汚職アメリカの階層社会、家族・父親の在り方、マスメディアの脆弱性などを含めているので、アメリカ国内で軍に近い人にはトピック的に面白い作品になっているのではと思った。

 おそらく、一本しっかりとした脚本があり、本来そこからさらに無駄を削って作品を完成させる内容だが、この作品では逆に、無駄な内容を取ってつけてふくらましたためにストーリーが複雑そうで中身がスカスカになったんじゃないかと思う。

 ギリギリ佳作かなぁと思った。

 

モヤっとした問題

 各論でモヤっとした点が多かったので個別に書いてみる。

 

主人公の一貫性

 主演クリス・プラットは素晴らしい演技で驚いた。主人公のジェームズ・リース少佐は40歳過ぎて前線に立つレジェンドである。1年のほとんどを訓練と実戦に費やす猛者だ。しかし、それはいい男・いい夫・いい父親ということにはならない。むしろほとんど家にいないから兵隊以外では悪い奴だ。

 しかし、作中ではいい人として描かれている。これが矛盾しているため、話が進むと少佐はどんどん変な人になってゆく。

 例えば、いいお父さんのはずなのに子供との思い出がほとんどない。なんか家でちょっと話したくらいの記憶しかない。学校の演劇会に行ったとか、地域の会合に出たとか、嫁の愚痴を聞いたとか、そういうのは一切ない。少佐が家族は大好きだぁと叫ぶが消えるほどの記憶がないため、家族の記憶が消えようがない。完全に本人の思い込みなのである。戦場以外を知らない戦士は政治も知らないし、家族も知らないし、地域社会も知らない。知っているのは戦場だけだ。そのため、後半に行くほどなぜ人を殺すのかがぼやけて、サイコパスシリアルキラーになっていく。こわい。

 

敵の魅力

 主人公の対となる敵もテンプレな悪い奴・嫌な奴といい人のふりをした偽善者が出てくる。シューティングゲームの中ボスみたいなのがたくさん出て、あっさり死ぬ。

 主人公がなんとなく殺人を続けるので、せめて殺される敵に個性があったらそれなりに面白い作品になったのではないかと思った。しかし、ボスもどこにでもいる一般市民みたいで信念がない。そのため、話が進むとキチガイ主人公が言い訳をする敵を抹殺するみたな話になってゆくのはきつかった。

 一番の問題は、話の筋として「少佐達には戦場で死んでもらうのが一番だ」となっている点で、この作品を見ていると殺人鬼になった少佐に対して一般市民Aである敵の主張が正しいと感じてしまうことになる。

 また、後半は「金をもらったが使っていない」というくそフレーズが出る。そんな彼らは高級別荘や豪華ヨットで楽をしている。単に金が余っているから使っていなかっただけの小物臭がきつく、わかりやすく人物像がバラバラなのがわかる。

 

物語の破綻

 主人公の記憶混濁がどこまで進行しているかが話の核になるはずだが、中盤以降それがなくなって頭痛持ちの殺し屋が裏切り者を殺す話に代わる。また、最初は特殊部隊の技術が一般人や組織よりも優れているから国内テロを続けられるという主人公の位置付けが、後半は頭の骨がちょっと取れても戦えるバトルサイボーグがむかつく愚か者たちを虐殺する話に代わる。

 つまり、主人公の一貫性がないだけでなく話の筋が変わる。これが薬の影響で人格がむしばまれるかわいそうな人の物語とそれに恐怖する人たちなら理解できるんだけど、この話ではむしろ少佐は同じ人ですよと強く主張している。しかし、作中では記憶混濁にあらがう哀れな兵士、家族の復讐を企てる復讐者、軍の名誉を取り戻す元兵隊、法を超えて悪を打つガンマン…みたいな変遷を遂げるので、一見同じ話を見ているようでつながりがなく随所で物語が破綻する。

 無能なFBIとか、正義を言いつつ悪をなす敵とか、記者の存在理由とか接着剤的要素があるのにそれを使わずぶつ切りのオムニバスになっているのはもったいないと思った。

 

アメリカ的視点の評価

 では、なぜこんなぐちゃぐちゃな話になったのかアメリカの状態を重ねて考えてみる。

 

ポリコレ

 ポリティカルコレクトネスという定義のない言葉がある。社会的に正しいことをしなくてはならない。しかし、正しいことは人それぞれなので正解はなく、法律よりも多数の人々の感情が優先される…というのが意訳だろう。

 つまり、カオスである。乗っかるルールがないのにルールがあるふりをしているのが今のアメリカだろう。理想として、しっかりした情報・同じ人数・会話のできる知能の元で話し合いを行えばある程度利益配分ができるんだけど、我々日本人が思う以上にアメリカはジグザグだ。貧富の差、人種の差、地域の差、性別の差など上げればきりがない分断がある。

 そんな中ではっきりしているものがあって、それが「男らしさ」である。一見ぼんやりしているけど恐らく宗教よりも強くわかりやすい概念だ。作中では白人の主人公がそれを担い、強い男・優しい夫・立派な父親を演じようとしている。

 しかし、かつてそれをリードしたトム・クルーズが老いたように、主人公がそれを全うすることができない。ポリコレでは「男らしさ」は否定されるが、アメリカでは「男らしさ」が社会的に要求されている。そうしないとコネも作れないし、そもそもホワイトワーカーとして働けない。この矛盾が作中の脚本の矛盾になったような気がする。

 

社会的不安

 先日もアメリカで銃乱射事件が起こった。結構な頻度で起こっており、なんか超不安定な社会になっている。日本でも映画ジョーカーの模倣犯…の模倣犯…の模倣犯的に電車でバカをする奴がたまにいる。

 こういった無差別殺人を犯す不安定因子は一定数いるし、社会的に完全に排除することはできない。どうにか我々の輪の中に入れて我々が消化しないといけない問題である。

 しかし、どうもアメリカではそれができなくなりつつあるようだ。非常に興味深いのは何か目的(金や怨恨)があって犯罪をするケースと自分の不満を晴らすために無差別に人を殺すケースをごちゃごちゃにして煽りまくっている点である。

 よく言われる原因が銃があるから、SNSで情報があふれるからといったものだが、その根幹は「真似」であると思う。テレビにしろ、ネットにしろ興奮優先で事件を印象図けてその後についてどうなるかはつまらないので報じない。だから、そういったものに興味がある人に「犯罪ができる」というメッセージだけが残る。そして彼らは真似をする。

 奇しくもこの作品はそういったアメリカの不安の先をなぞっているような気がする。良き人であった(あろうと望んだ)人が社会に裏切られ、復讐を企て、皆殺しにする。気づけば無関係の人を巻き込んで多くを不幸にして、その先は何も言わない(シーズン1だから主人公の「先」は告げない)。

 我々にとってはただ無情な作品だが、犯罪予備軍アメリカ人にとっての心象風景がこの作品なのかなぁと思う。スカッとジャパンならぬすっきりアメリカというところだろう。

 

終わりに

 まぁごちゃごちゃ書いたけど、ぼんやり見ていい余暇にはなった。それ以上求めるのはプライム無料視聴プログラムには失礼かな(;^_^A

 そんな感じの作品でした(^ω^)

 

 

 

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