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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

最近のファンタジー系漫画の良し悪し

最近、移動中にファンタジー系漫画をよく読む。もう一歩で…と思った作品の論評を書いてみることにした。

(今週の一枚)こぼれ種シクラメン(果たして育つのか)

 

 「BOOK WALKER」や「ピッコマ」と言ったサイトのネット発でコミックで5巻以上刊行された作品の中で、もう一歩だなぁっと思ったものについて自分なりに何が面白くて何が足りないのかを書いてみる。有名なものを書いてもしょうがないので、まだ人気がそこまで出ていないものを選んでみた。

ヘルモード ~やり込み好きのゲーマーは廃設定の異世界で無双する~はじまりの召喚士

 まずは良い点である。こちらの漫画に好感を得たのは作画が見やすく丁寧に作品が作られている点だ。なろう小説の原作を損なうことなくイラスト調のキャラがしっかりと躍動し無駄なコマ割りもなく非常に読みやすい。インターミッションで不明な点をしっかり解説して補っているのも読みやすさを補強している。転生した主人公がヘルモード(超高難易度の人生)の中で開拓村の農奴から平民、貧乏貴族の従僕、貴族へと成り上がる様は非常にわかりやすい成り上がり物語で、太閤記豊臣秀吉にように昔から続く人気ジャンルと言えるだろう。

 もちろん、ドクターストーンのような最上位層よりはあっさりとした作りになっている(おそらく人日がかけられない)が、ジャンプ的少年漫画としては十分な作りになっている。

 次に悪い点である。面白いのは最初の3巻くらいまでで、話が進むごとにワクワク感が薄くなってゆく。問題はこの物語が途中からヘルモードでなくなることだ。学園(12歳)に行くあたりで明らかに話が陳腐化して日記帳のように今日は丸々しました→うまくいきましたの繰り返しになっている。元々物語が駆け足な作りになっているので、話にフックがなく流れ作業のような感じを受けてしまった。終いには100万の魔物をよくわからない方法でさっくり撃滅する。戦争描写の適当さを見ると原作側の発想の限界なんだろう。開始当初の超えられないだろう壁を一歩一歩踏破することが物語のテーマ(題名)なのに、超える壁がなくなって迷走しているように見えた。

 物語初めのセリフに「10年以上やり込めるゲームがしたい」と主人公が言ったが、10年ちょっとの冒険でこの「ゲーム」がヌルゲー化してしまうのは皮肉だ。

 物語の展開において、より高い壁(人間関係や敵との戦い方など)がしっかり表現できれば化けたのかなぁと思った。

 参考になったのは物語の核となるテーマをブラさないことで作品の質が上がるのだと気づいた点だ。例えば、同じなろう系漫画の無職転生であれば主人公はいじめを受けた引きこもりが転生しているが、作中では常に前世の自分との比較の描写があり、前世の後悔と今世の挫折と立ち直りを繰り返し人間的に大きくなってゆく。おそらく、無職転生のテーマは人生をやり直すことであり、それをしっかりなぞっていけたから成功したのではないかと思う。ヘルモードでは高難易度ゲームとそのクリアがテーマなんだろうが、それがぶれていまいちな作品に甘んじているのではないだろうか。

 

追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフ謳歌する。

 よくあるなろう系小説のコミック版…でない。良し悪しという点では良さが悪さを内包している不思議な作品ではないかと思う。

 原作では、ポンコツ付与魔術師がギルドで裏方として目立たず働いていた。しかし、実は彼はすごい魔術師で、ギルドを追放されてからその能力を自由に使って成功してゆく物語になっている。社会で目立たなかった個人が才能を開花させて今までの集団を「ざまぁ」(自分を否定していた集団がひどい目に合う)して、新しい世界で万能感を得る様はなろう系の十八番だろう。この原作は非常にあっさりした作品構成で文章量がとても少ないので、漫画化には苦労するのだろうと思った。

 コミック版ではその薄さを利用して物語の隙間に様々なオリジナル要素が入っている。最初でこそ原作通りに描いていたが次第にストーリーが歪み、キャラクターの個性の独自色が出て次々と漫画オリジナルのキャラが出る。なぜか自動車や銃が出てきて冒険者がやくざと戦い、冒険者は工業製品を使うと魔力が弱まるという謎設定の元、現代社会の風刺を始める。

 感想としては5巻辺りまでは大満足。犬の物まねが得意な主人公の空気を全く読めないボケと周囲の突っ込みがうまくはまって独特の世界観を作り、キャラがどう物語を作っていくのかページをめくるのがとても楽しかった。また、変なシーンが随所にあり、作品に異様な個性を出している。例えば、崩落する遺跡で逃げるゴブリンの絶望が妙に質感があって思わず失笑してしまった(物語に何の関係もないのに2ページを使っているところもよかった)。

 しかし、話が進むと原作と乖離(原作が少なすぎてほぼオリジナルになる)しすぎて、全く別作品に変貌して迷走をはじめる。はっきり言って何がしたいのか理解できなくなった。最大の問題は主人公のボケ以上に周り(設定を含めて)が大ボケをかますようになる点だろう。はじめは面白かった主人公のアホ面モードも突っ込まなければ白ける。全員がぼけて誰も突っ込めない状態で話がめちゃくちゃな状態は芸術としてシュールと言えばシュールだが、物語としてはとても読みにくい。

 ただ、少なくとも途中までのやり取りは引き込まれるような魅力があるので読んでみて損はないと思う。

 勉強になった点は緩急のつけ方だ。この作品ではかなり頻繁に緊張感の上げ下げがある。最初はそれがうまくはまって名作感があったが、ボケっぱなしになったりシリアス続きになると凡作に感じた。この緊張感のブレや幅をどの程度作るかで作品の質が大きく変わってくることが良く分かった。

 ベルセルクを例にとると、常に主人公ガッツは緊張している。ガチガチで何時も意固地だ。物語が進むと、その緊張を周囲が少しずつ和らげようとするが、乱世がそれを許さず悪意が世界を破壊する。結果、主人公以上の緊張が世界を覆っていく。この緊張の強弱はとても難しいけど、作品の質を上げるには緊張の波を作ってゆく必要があるんだろう。

 

勇者に敗北した魔王様は返り咲くために魔物ギルドを作ることにしました。

 この作品は物語としてとてもよく作りこまれている。しっかり練られたストーリーの元でキャラクターがその物語の核心に向かってゆく点は非常に好感が持てる。

 魔王が勇者に負けるが、分魂しておいた別個体から徐々に力を取り戻してゆく魔王の物語だ。最初はコミカルに冒険を描いているギャグマンガだが、力を回復してゆく過程で王となにか・悪と正義とはなにかといった人間劇・バトル漫画に変ってゆく。そして、実験として存在する勇者の意味や世界を構成している常識は作為的なものであり、魔王に封じられた記憶に隠された秘密を徐々に明かしてゆく作品構成はとても面白い。

 また、各パートを無駄にしない点は非常に好印象だ。例えば、寄り道として突然筋トレが始まるシーンがある。なんでやねん!と思うが、筋肉は世界を救うのだろう。しかし、ボディビルディング(挫折)するおふざけパートで終始するのではなく、しっかりと何故筋トレをするのかを問いかけて、他人の価値について考えている。

 こういった読者を引き込む問いかけや世界観の説明を楽しく読み進められて、作画もどんどん気合が入ってゆくので、バトル漫画に変化していってもほとんど違和感なく読めるのはなかなかの名作だと思った。

 しかし、悪い点もある。キャラが薄いという点だ。例えば、主人公魔王の存在だ。物語の核心が彼の記憶に隠されており、それを暴いてゆく都合上主人公と我々読者の視線が同じになる。それなら、魔王様はもっと弱くしてもいいし、失敗があっていいと思う。強く感情を表に出してああだこうだ言ってもいい。しかし、手痛い撤退も敗北の苦痛もなく物語が進むので、なんとなく作品に入り込めない。それを補うために家臣や仲間たちが頑張るけど最後は魔王様頼りになってしまうのは残念だ。

 また、主人公の初期キャラ造形があっさりしすぎているものもったいないと思う。この作品は物語とバトルを売りにしているのだから、そう言ったキャラ構成でいいかもしれないが、1巻の表紙を見て買おうとは思わない。物語を推した表紙にすべきなんじゃないかと思う。他のなろう系はおっぱいで釣ったり、童話のような表紙にして盛り上げているのに、青系の色で骨顔の小人が杖を持っている絵では客を引けない。比較として、平和の国の島崎へは同じように地味な主人公であるが、その1巻は強い視線と白地に赤でその赤の中に紛争があり、見た瞬間になんだろう?と手に取りたくなるデザインになっている。作者というより、OKを出した編集がアホなのかもしれない。徐々に物語が盛り上がってゆき、作画もガチめになって面白くなってゆくから読者は脱落率は低いはずなので、はじめの客引きが大切なんだなぁなんて思った。そういったボタンの掛け違いがもったいない。

 

まとめ

 最近はネットで漫画を買ってスマホで見るのが当たり前になった。読書形式が変わることで様々な作品に簡単にアクセス出来て楽しいが、作る側の競争はものすごいことになっている。ファンが一定数確保できるなろう系小説原作の漫画が多くなっているもの一つの特徴だろう。

 そんな中で巻数が出ているものはやはりそれなりに面白いけど、話が進むとその面白さが続かないものが非常に多くなる点が最近の作品(ネット刊行型)に多いと感じた。

 はじめにビュー数が確保できないと打ち切られてしまったり、商売にならないから作者が折れてしまうからかもしれないが、もう少し練った話が読みたい人にはネット漫画はちょっと合わない点は注意したほうがいいと思った。

 なんだかんだで週刊誌、月刊誌が刊行する作品は編集もがっちりしているので、安定を取るならそっちなんだろうな。

 

終わりに

 偉そうに講釈を垂れたけど、作品を作ることはとても大変なのはわかっているので、作品を世に出してくれた作者様には感謝しないといけない。

 …とはいっても、もっと面白い作品を読みたいという欲はどうしても出てしまうので、 悩ましいところだね(^ω^)

 

 

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