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くそつまらない The Boys がどうすれば面白くなるのか悩む

自分の作品内容の質を上げたい。そこで尖った作品といわれている The Boys を見たが驚くくらいつまらなかった。なんでだろうか考えてみた。

 

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(今週の一枚)異界にお散歩(pixiv

 

 ちょっと気を緩めると何も感も興味がなくなる瞬間がある。そういう虚無を避けるために普段見ないものを見ようと思って、「The Boys」というAmazon Video限定で配信しているシリーズ(8話構成、シーズン2まで配信)を半年くらいかけてやっと見終わった。

 DCコミック、マーベルの作品はエンタメとして結構好きだったのでそれなりに期待して視聴したんだけど、これがまたどうしようもなくつまらなかった。でも、ただつまらないとケチをつけるのもまぬけなので、自分の作品の糧にするためにもその原因と解決策を自分なりに考えてみた。

※若干ネタバレ有り※

 

作品概要とストーリー性

 マーベルに出てくるようなスーパーヒーロー達が社会的に認められた世界で、彼らはその地位を維持するためにあくせくと働く。しかし、実は、異能を持つ彼らは聖人や巨悪ではなくニューヨークの道端でいそうな平凡な性格だったらどうなるだろうか…というお話。

 ストーリーは二頭立てになっている。一つはうだつの上がらないバイトの青年ヒューイがスーパーヒーローとの事故で恋人を粉々にされ、その恨みを晴らすために仲間たちと一緒にヒーローを殺害したり恋に落ちたりする。もう一つはヒーローの中心人物ホームランダーがキチガイでいかれた行動をするが、彼を軸にその出生の秘密やどうしてヒーローが生まれるかを追う。

 導入はいいし、一般社会の中のヒーロー(アンチヒーローという意味で)と反ヒーロー連をぶつけるという試みはいい化学反応になって話が面白くなるという期待がある。確かに最初の数話は無力な芋くさい一般人が何とかしてヒーローを潰そうと右往左往して面白かったしその期待に沿っているのだが、フィリピン育ちの強化日本人女性(俳優は韓国系なので日本語がしゃべれない)が登場したことで話が破綻する。

 結局、戦闘は(ヒューイの彼女と強化日本人)vs(ヒーロー)になるので、頭を使ったりする展開は起こらず、意味不明な自爆や偶然で話が進み、反ヒーローの連中がいる必要がなくなってしまう。後はアメリカドラマにありがちなお気持ちトークセッションが延々と続き、ばたばたがあって気づいたら話が終わるので、本当に内容がない。

 どうすればよかったのかなぁと考えると、やはり無力な人間と超人の騙しあいのような対立軸を作るべきだったし、「薬で人工的に作ったヒーロー」という秘密よりもっと深いテーマが必要だったのではないかと思う。

 

キャラの特徴とセールスポイント

 この物語は最初にスーパーヒーローが上っ面優しいだけのクソ野郎どもだということで話が進む。彼らが普通の人間的感性を持っており、ただ異能を持っているだけの存在である。これがヒーローキャラクターに共通する特徴となっている。そして、そのヒーローたちはどこかマーベルのヒーローの面影があり、例えば、ホームランダーはスーパーマンサイクロプスを足して割ったような姿と設定になっている。こういったキャラたちは意図的に衣装や行動をダサくしたり、性格を極端にして、面影の元になったキャラたちのパロディをしている。その上で、本当だったらスーパーマンはこんなことしないよ、サイクロプスは型にはまった定型文は言わないよ…みたいなギャグを各所に入れている。

 この普通の人間性とマーベルキャラに対するジョークが核となってキャラクター達を引き立てるアピールポイントなのだろう。しかし、これが実にキャラ建てとして弱い。控えめにギャグにしているので、あまりに普通な印象になってモブキャラの群れになっている。それに気づいているのか、途中から変なフェチズムを入れたり、突然性格を歪ませたりして味付けを濃くしようとしているが、基本が薄いのでどうしても中途半端になる。

 この中途半端な状態で反ヒーロー連の普通の人を加えると話がごく普通の会話になってしまう。つまり、ニューヨークの街角でおっさん達が話しているような会話がずっと続くのでとても退屈になってしまうのではないかと思う。

 …ならどうすればいいのかと思うと、やはり極端なキャラの見せ方でなく、キャラ建て・キャラの設定をしっかり練るべきなんだろう。パロディキャラはあくまでパロディ元を知っていないとネタが寒いし、くすっと笑えないと逆にキモイ。しっかりと話を作るならパロディはあくまで触りで、実体のある性格や技の限界を決めないと切迫感もないし、どこか軽い。

 もう一つはこういうバトルやアメコミものだと必要な対となるキャラが必要なんだろう。無敵のパワーを持った奴(頭が悪い)がいるなら、それと戦うのは蟻もつぶせない弱者(頭がいい)というような対があると、話がググっと面白くなると思う。

 つまり、キャラ単独でも弱いし、キャラ関係もぼんやりしているからそれをしっかり立てるべきだったんだなぁと感じた。

 

シーンの構成と表現

 この作品ではCGシーンに結構な金をかけているので、バトルシーンやヒーローが技を使うシーンはすごい。電撃や発光、建物の破壊や人間の部位破壊なんかは作り込みがえぐい。

 また、Web配信に特化しているので、地上波TVの規制(アメリカではカルフォルニア州法の厳しい放送規定)に引っかからず自由にエログロを表現できるため、血しぶきが飛んだり、セックスシーンなんかが比較的明示的に出されている。細長いちんちんが黒人の首を絞めたりする。初め見た時は「えっ?」とか「おぉぅ」という声が出る。

 各シーンは1分程度の組み合わせになっているので、ぐわんぐわんするバトルやアハンとなるプレイが各話で必ず出てきて、映像として見る分には損はない作りになっていると思う。

 しかし、これを1時間の映像群として見るとなんだか物足りなく感じたり、妙な違和感に襲われる。これは何なんだろうと考えると、自分はシーンの構成がジグザグになっているのが原因ではないかと思った。

 具体的に言うと、5分程度の虐殺シーンがあったすぐ後に、10分長回しのラブトークが始まったり、3分程度の激しいバトルシーンがあるとすぐ後に関係ない15分以上の会話シーンが営々と続く。この組み合わせがとても悪い。

 普通、物語を作る場合は何かテーマに向かってそれを盛り上げるために会話やギミック、キャラの行動がある。例えば、ホラー映画を見ると、大きな恐怖に向かってお化けを小出しにしたり、それを煽る様な会話が続き、後半ですごいスプラッターが続くとグワーッとくる。バトル映画なら、簡単な組手の後、なぜ戦うのか会話があり、ピンチになって大バトルがあるとイケーッとなる。

 しかし、この作品は突然セックスして急に落ち込んだと思えば、場面が変わって頭が吹っ飛び、その間に家族や恋人の会話が続く。はっきり言ってこちらがどう反応すればいいのかわからない。

 そして、ビックリシーンにしてもワンパターンで、最初ビックリしても2回目3回目になると驚きがしりすぼみになってしまう。例えば、話が煮詰まると誰かが粉々に爆発して周りが血まみれになるのだが(それ自体どうかと思うが)、それを何回も繰り返すので、「おいっまたか」となる。爆死するにしてもなんか面白い爆発方法があるだろうし、ビックリさせて殺すにしてももう少し工夫して欲しい。とても雑なのである。

 これをどうにかしようとするなら、やっぱりシーンごとに暗に流れでどういうシーンなのか導入や説明を入れつつ視聴者を誘導するべきだろう。それがないとただのビックリ仰天ショーになってつまらない。

 遊園地のお化け屋敷に入ってその途中に動物ふれあいコーナーやお手洗いがあっても困る。お化け屋敷ならお化けを出せ。そんな感じ。

 

ブラックジョークの価値

 この作品はタブーに切り込むスタンスがある。アメリカの社会的に目を逸らすようなテーマも話の中に組み込んで、きつめの意見を言っている。

 キャラの特徴で述べた様に、キャラクター達はどこかマーベルを模した作りになっていて、それがアホなことや残虐なことをすると、元キャラへの屈辱となる。

 キリストのような姿のヒーローは禁欲的キリスト系新興宗教の広告塔になっているが、実はゲイで性的に乱れており、その集会に参加したキャラにこういった宗教は愚かだと、事あるごとに非難をしている。

 社会的な宣伝活動をヒーロー達がしているが、その実、行っていることは本心ではなく常に庶民を見下しており、何か否定的なポーズをとられる度に言葉や妄想でそういった人達を馬鹿にしている。

 セクシャリティー蔑視、人種差別、職業否定、大企業非難などなど気にくわないことは唾を吐いてバカにするスタンスをしており、まぁよく言うなぁという気分になる。こういった「ディスり」が好きな人にとってはスカッとするのだろう。

 だた、このディスりがうまいことブラックジョークになっていない点がすごく多いので、正直言っておっさんとしてはもやっとする。

 例えば、宗教ディスに関して、宗教そのものを否定していない。どこかきっと神様がいるけど、それを利用している人たちを否定しているだけにとどまっている。やるのならゾロアスター教的に神様それ自体を否定して問題提起をすればいい。こういった中途半端な否定が多いので、ブラックジョークまではいかないし、かといって問題提起にもなっていないので、なんというか中学生が先生に向かって悪態をつく様な感じになっていてちょっとこそばゆい作りになっている。

 ブラックジョークに押し上げるなら、しっかりと常識がある前提で非常識なことをしないといまいち共感できない。

 

まとめて

 色々な物を斜に構えて見て、「オレ達ロックだぜっ」という作りにしようと頑張っているんだけど、実際は周りを伺いながら「いいかな?やっていいかな?」みたいな作品になっていた。つまり、ファッションロックになっている。

 部分的なものは面白いが、長編にするほどの中心的主張や対立軸がないために中身が薄い作りになっているんだろう。それでも短編や60分くらいのコメディ(ブラック含め)ならとても面白いものになったのではないかと思った。

 

終わりに

 やっぱりキャラでは軸となる設定(と対立軸となるキャラ)が必要で、作品の主張を明らかにしないとエンタメとしてキツイんだなとわかる。自作の糧にするなら、キャッチーでわかりやすい導入と連続性のある物語、さらに分かる人だけにわかる裏テーマがあれば名作になるんだろうと勉強になった。

 …ま、それが作れないからみんな苦しむんだろうけどね(^ω^)

 

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