映画の名前はシビル・ウォーだ。近年稀に見る「クソ」だと思った映画だったので、なんで糞なのかを書いてみる。
(今週の一枚)凍えるキンレンカ(春の花が冬に咲く🌸)
映画は2時間くらいで話をまとめるので必然的に合う合わないが大きく出るものだ。人によって見え方・楽しみ方が違うのでその評価は人によって異なるとも言える。だから、一つの作品で全員が納得するものはない。しかし、今回ぶつくさ書く作品も当然賛否はあると思うが、アメリカでヒットした割にこれはあまりにもひどすぎるなぁと思ったので、なぜ自分がくそだと思ったかを書いてみた。
作品の概要
舞台は近未来のアメリカで内戦がついに終わろうとしている仮想の世界だ。主人公は白人女性のカメラマン、ラテン系(?)男性のインタビュアー、肥え老いた黒人男性のプロデューサー、白人少女のカメラマン見習いである。この4人の主人公が全く表に出なくなったアメリカ大統領に独占インタビューをすることを目標にニューヨークからワシントンD.C.へ向かう。その旅の際に起こった様々な出来事を綴ったロードムービーになる。
主人公一行はニューヨークでの水の配給で起こった自爆事件を皮切りに、都市を離れて郊外から田舎のアメリカで何が起こっているかの取材・写真撮影をしながら内戦の現実、アメリカの状態を見てゆく。旅は徐々に激戦・最前線へと彼らを導き、最後に旅の目標であったアメリカ大統領と対面することになる。
作品のテーマ
なんの思想的ポジションも持たずにこの映画を見ると、いったい何が言いたいのか最後まで分からないように作られている。そして、最後にこの作品の言いたいことがわかる。
「トランプは死ね」だ。
最初の自爆事件は衝撃的で水を求める人たちがたくさん死ぬが、最後まで誰がどういった理由で自爆したのか全く分からないし、同様に各パートでの言いたいこともよくわからない。各シーンごとでもシーンを繋いで見てもわからない。一方で、映像としては刺激的なものがたくさんある。例えば、リンチされて吊るされている人とリンチした人が誇らしく立っているシーン、道端でスナイプされた死体を車で引いて逃げるシーンなどこういうものに慣れていない人には強いショックを与える。しかし、これらの場面でいったい何が言いたいのかはよくわからない。内戦が悲惨という主張もないし、アメリカが困窮しているという主張も通らない。内戦が悲惨なら、内戦に無関心な村で店番の女の子がつまらなさそうに店番はできない。つまり、内戦に関しての一貫した主張がない。アメリカが困窮しているなら、ジャーナリストがいる綺麗なホテルでとんちゃん騒ぎはできない。ただ貧民が貧乏しているだけで今のアメリカと大差がない。1時間以上のロードムービーに何の意味もない。
そして、最後のシーンでは2流の兵隊に囲まれた不法大統領(アメリカ大統領は3期できない)が助けてくれと言うが、主人公がもう十分だと言って兵隊に撃ち殺させる。その後に大統領の死体を背に記念写真を撮って終わる。つまり、彼らは表面上ジャーナリストとしてフラットなふりをして、実際は気にくわない奴の取材をせず殺してすっきりしたと主張しているだ。この主張のみ反対意見やシーンがない。だから、この映画で一番言いたいことは「気にくわない大領領は死ね」となる。上映時に大統領選真っ盛りだったため、「不法大統領=トランプ」を暗に示しており、トランプは死ねと理解できるようになっている。
まぁ、100歩譲ってこのテーマを認めるとしても卑怯な表現の仕方だ。初めから大統領が嫌な奴だと宣言しておけばいいのに、都合のいいところではPRESSを出して無関係を装い、自分たちが圧倒的に強い立場になったら、本性を現しインタビューせず自分で手を汚さずに人を殺している。最悪だ。
評価が非常に難しい点ではある。マスコミや左翼を悪く描いて「こいつら最悪です」と暗喩として表現したかったならすごいなぁと思う。自分は「我々はトランプを殺して満足です」と感じたので最悪の評価になる。この点は人によって評価は分かれるだろう。
作品のキャラの位置づけ
この映画は人種差別助長映画だ。
アメリカの映像作品は多くの制限がある。「子供は物理的に傷ついたり死んではならない」や「人種・性別の配役はバランスよく配置しなくてはならない」などだ。本来なら人種性別に関係なく不幸や幸福が起こるはずであるが、それについては縛らない。
この映画ではそれを逆手にとって強い印象操作をしている。まず、正義は白人女性であり、白人男性は粗野で愚かであるという点の強調だ。主人公の女性カメラマンは最終的には撃たれてしまうが、自分の恐怖を押し殺して銃弾が飛び交う最前線でピョンピョン壁の間を八双飛びして写真を撮って大活躍をする。正直あまりに頭の悪い動きで笑ってしまったが、とにかくすごい活躍だ。一方で、白人男性はみんなアホだ。宣伝にも使われた赤いサングラスをかけた白人男性の兵隊は訳の分からないアメリカ感をしゃべり自動小銃を振りかざすが、デブの黒人に車でひき殺されて死ぬ。は?と思ったが、びっくりするほど無能だ。
また、ちょい役の日本人はあっさり頭を撃たれて死ぬし、香港系の華僑(中国人扱い)はブルブル震えて怯えながら死ぬ。一方で、黒人兵士はおそらく急所を撃たれても死なないし、明らかに筋肉が不足している黒人女性兵士は前線で兵長(軍曹?)で活躍しインド系女性はマスコミとして輝かしい働きをする。実に思想的ファンタジーだ。
はっきり言ってキャラ設定・運用がめちゃくちゃで現実味が全くない。差別的な描写があり、撃たれて死ぬ側の我々日本人としては何だこら?という感想しかない。作者たちが心に持つ差別意識を敢えて白人男性に言わせている点がいやらしい。しかし、過激な左翼・リベラル思想の人たちにとっての「正しい現実」はこういった状態だとわかる貴重なサンプルだ。
そのため、糞な映画である。
作品の映像
この映画の絵はとても狭いし手抜きが多い。
映像に金かかってるのかよくわからない。ロードムービー・旅なんだから変わりゆく風景でも流せばいいのに、そういったものを極力排除している。一方で到着した場所も、キャラが活躍する舞台もどこなのか何なのかを明示しない。そのため、旅をしている気分にならない。本来は徐々に戦場に近づき緊張してくるはずなのに、そういった場面の変化に手を抜いているため突然ホワイトハウスに到着した印象を得る。良くない。
また、小道具やメイクも手抜きだ。例えば、女性カメラマンのカメラはSONYのデジタルカメラ(α7R?)を使っているが、そのカメラはピカピカで傷ひとつない。戦場駆け回るにしてはすごい違和感だ。見習い女子のカメラに至ってはフィルムカメラだ。おしゃれに街撮りするならいいけど、戦場で一瞬を切り取るには不向きを通り越して使ってはダメだ。ジャムったら使えないし、フィルム交換に時間がかかり過ぎる。
こういった表面的にかっこいいけど、映像にすると違和感マシマシなものが随所にある。戦車の見せ方も変だし戦闘の仕方だっておかしい。本来そのおかしさを補うために会話シーンでカメラへのこだわりや戦闘に対する心構えを話すべきなのに、主人公たちの会話は浮ついた思想・主義主張ばかりで現実感がない。そのため、映像のおかしさが際立ってしまっていると思う。
これらから感じるものは表面的にカメラマンだけど、実はエセプロ・偽物がショーをやっているという悪印象で、シーンが進むごとにそれが積み重なってゆく。この絵が前提となると作品全体が胡散臭いものになり、作品の主張自体も胡散臭く感じてしまう。
学生の演劇(小さな劇場で場面を大きく見せる)ならちょうどよい見せ方かもしれないが、これは映画である。何か勘違いしている気がして非常に印象が悪かった。
終わりに
いやぁクソだった。こんなものに何億もかけて思想誘導しようとするのはちょっとひどいなぁと思った。映画としても低品質だし、これがリアルなアメリカ内戦の未来予想図なんて言えば笑われるだろう。アメリカ大統領選挙にかこつけて儲けようとしたのかもしれないけど、さすがにひどすぎて逆にトランプをアシストしているようにも見えた。
まぁ、トランプが勝ってしまい作戦は失敗したからさもありなんと言うことなんだろうね(^ω^)
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