絵を描く人はぜひ見てほしい映画「REDLINE」についてなんだかんだ思ったことを書いてみた記事
(今週の一枚)お花2(今週も時間とれなかった( ;∀;))
今回は10年くらい前に見た映画「REDLINE」を再び視聴したので思ったことを書いてみようと思う。
映像作品のほとんどはコンピューターグラフィック(CG)が当たり前のものになっている。絵の多くはパソコンで描いたCG絵だし実写のカメラ画像もカメラ内でいったん処理され無加工のものは存在しないと言っていい。
また、「アニメーション」を見ようとすると意外と期待通りのものがない。所謂日本の「アニメ」は紙芝居の延長がほとんどだし、ハリウッド映画にあるCG系の作画は実写のトレースを加工したものが多い。
そんな中で少しタイムスリップして「アニメーション」作品を探してみると、自分が一番すごいと思う作品は「REDLINE」だ。10年以上前の作品だけど、これ以上のアニメーションはCGを含めてほとんど存在しない。今でもdアニメストアやバンダイチャンネルなどで視聴することができる。
今回は久しぶりにこれを視聴したのでぶつくさ書いてみる。
概要
この作品はけた外れの作画枚数、豪華な声優を起用してアメコミチックなキャラクターたちが織り成す全宇宙なんでもありのSFレース映画だ。
ストーリーは主人公 JP (すごく優しい男)がトランザム20000でレースをして勝利を勝ち取る過程を描いている。
レースは予選、決勝の二試合を走り、相棒でメカニックのフリスビーや惚れた女ソノシーたちと共に物語が進む。
予選では荒野を走り抜け、激戦を戦い、イカサマで敗れる。しかし、辞退者が出たことで敗者復活し、決勝に出場することになる。
決勝では独裁国家の首都に向かって爆走する。レース協議会が独裁国家に無断でゴールが指定したためご臭い国家から様々な妨害が行われ、謎の生物兵器が出たり、衛星レーザー砲や軍隊が出撃したりするが、怒涛のカーアクション・デッドヒートの末、ソノシーと一緒にJPがゴールする。
感想
良し悪しがあったのでそれぞれ分けて書いてみる。
良い点
疾走感があってとってもわかりやすい映画だと思う。「アニメーション」、つまり、絵が動き出すという点では他に類を見ない出来で、今のアニメーターにこれを作れと言われてもほとんど無理だろう。
キャラクターにしろ、メカにしろ非常に丁寧に作られている。アメコミ調の陰影をはっきりする画風は立体感を持つため、いい加減な人が作ると簡単にバランスが崩れてしまうが、この作品には表現に関して矛盾がない。この表現力はただ立体物を描くというのではなく、うまい強調表現が各所にあり、動くことが綺麗に表現されている点は驚嘆に値するものだと思う。
絵を描く、アニメーションを作る、CGで表現するといったことに少しでも興味がある人は見ておいて損はない作品だと思う。
ストーリーはとっても単純で、「男の子の夢」がテーマになっているんじゃないかと思う。子供のころ見たかっこいい車、あこがれる金ぴかスーツの男、草レースで見つけた運命の女の子…大きくなった男の子がこれを超えたり手に入れる流れはとても共感できた。
もっと深いテーマを置くとテーマのレースが曇るのでちょうどいい話の持って行き方だと思った。
悪い点
絵やアニメーションに関しては文句の言いようがない。…というかすごい。映像という意味ではいいのだが、音に関して言えばかなり微妙だったと思った。
これはかなり好みが分かれると思うんだけど、自分は「軽い」と感じた。この作品はレースである。そして、そのレースは車が中心である。そして、車はエンジンで動く。絵に関してはそれを中心にアクション・アニメーションが作成されており、その動きの中で様々な表現があるので、とても見やすい。そして、音楽は本来そのレースや個性的な車を如何に盛り上げるかが肝であると思う。しかし、レースのエンジン音がバックの音楽に消されている。
よく聞くと、エンジン音らしきものは各所にあるので、その音をうまく音楽が拾ってビートにするなり、テクノシーンに持っていくこともできただろうが、この作品の音楽は中心が音楽であろうとしてずっこけているのではないかと思う。
実際のレース場に行くととにかくうるさくて車が通る近くでこれを聞くと腹が震えるような振動がくる。実際にレースカーに乗っている場合はその揺れはもっとひどいだろうしもっと騒々しいだろう。
そういった肌感が映画全体から感じなかった。むしろ、この映画の有志が作ったAMVのほうがそのイメージを強く伝えることができてるのではないかと思う。
(↑ファンによるAMVで有名なもの)
もう一点はとにかくJPとフリスビーの声優がへたくそな点だ。木村拓哉は棒読みだし、浅野忠信は声がこもって聞き取れない。その他声優陣がしっかりしている分、浅野氏のへたくそさが目立ってしまった。
ただ、全体としてキャラクターが会話するシーンはあまりないので映画としての評価にはあまりかかわらなかったのでは…と思う。もし、長回しのセリフや掛け合いがあったら破綻していたのかもしれない。
ちょっとした考察
この作品は一つの作品として見るとわかりにくかったり、面白さを感じない場合があった。アニメーションは極上たけど音は微妙、声優に関してはがっかりというのが自分の意見になってしまう。
なんでこれがうまく混ざらなかったんだろうか。
この作品の各分野で主張したいイメージがそれぞれある。これはうまくシナジーすれば最高の作品になるのだろうが、そんな事は稀だ。もうちょっと言えば誰に向かって作品を作っているかの統一意思がなかったのではないかと思う。
具体的に言えば、ストーリーや作画は「男の子の夢」だ。つまり、男の子に向かって作品を作っている。しかし、木村拓哉は「女の子の理想」だ。つまり、キムタク好きの女の子に向かって言葉を発している。また、音楽は「作者の世界」を作ろうとしている。音楽が主であるためレースの音はかき消える。つまり、それぞれの個性が立っているのに何がゴールかわからない。
主演の木村拓哉を作品の軸にするなら、もっともっとキムタク成分を増やして、彼が引き立つ話にすべきだろう。ストーリーは彼の女性ファンが喜ぶものにするべきだと思った。
音楽が作品の軸になるなら、もっと長回しの楽曲をぶち込むべきだし、音楽を盛り立てるための音響や効果音を当てるべきだろう。
色々な意見や人が頑張って作品を作っているんだろうが、中心にあるテーマに向かって作品が作りきれなかったため、自分にとっての違和感に繋がったのではないかと思う。
漫画映画とアニメーション
REDLINEは異質だ。よくある日本のアニメ映画とは見え方・作り方が異なる。
日本のアニメ映画を見るとぺたーっとした絵にキラキラとした効果を加えて、あまり動かない。コストを考えるとそれが一番いいのだろう。大きな一枚絵を描いてそれを上から下まで動かすとか、キャラクターを置いて口をパクパクさせるだけでも話は作れる。でも、これは漫画の延長で、アニメーションというのにはちょっと疑問だ。もちろん作る側としてはぬるぬる動く作画を作ることはめちゃくちゃ大変なので、部分的に本来のアニメーションを起こしてあとはごまかして作品をまとめているのだろう。しかし、これはちょっとカッコ悪い。
コストと作りたいもののジレンマを打破するという意味で3Dモデリングが徐々に広がっている。一度モデルを作ってしまえばあとは楽にアクション表現ができるという触れ込みで、ディズニー映画のほぼすべてが手書きセル画に入れ替わった。
日本のアニメ・アニメ映画でも同じようなことをしようといくつものデジタル3DCGによるアニメーションを作る試みが出てきたがほとんどがこけた。
日本で何年たってもこの入れ替えがうまくいかないのは漫画の延長がテレビアニメであり、アニメ映画であるという前提があるのではないかと思う。
漫画の絵を立体化しようとするとモデルが破綻するし、それに合わせようと無理やりモデルを作っても、アクションをさせる際に動体が崩れてしまう。ここでいくつもの補正が必要となりものすごく工数が増えることはうかがえる。
では、こういった漫画由来のモデルを捨てて新しいキャラデザインを作ろうとしても客がつかない。また、お客もこういった変なモデルやその動きに慣れているので、わざわざ高度なものを作る必要がないということになってしまう。
結局のところ、我々がアニメーションを求めるのではなく、動く漫画を求めており、それ以外のものを欲しがっていないのではないかと思った。それ故、質のいいアニメーション映画が出てくる土壌ができないのだろう。
終わりに
移動が多くて絵を描く時間がない。それを紛らわせるために映像作品を見るのだけど、こういう映画を見ているともっと絵を描きたいなぁと思う悪循環に陥る(;´Д`)
早く落ち着きたいものだ(^ω^)
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