先日、内閣官房参与の高橋洋一氏が辞任した。どうして彼が支持され辞めなくてはいけないのか考えてみた。
(今週の一枚)ちゅんちゅんとれいん(pixiv)
自分は彼に対して非常に良くない印象を持っているので、彼のファンだったり単純な答えが欲しい人は読まないほうがいい記事です。
辞職の経緯
彼はTwitterやYoutubeで情報発信をしているが、「新型コロナ感染者数の増減がさざ波程度だ」、「日本の緊急時の行動制限は他国と比べて屁みたいなものだ」という発言が元で、ネットサヨクの目に留まり、激しいバッシングを受けた。これが一因となって菅内閣の支持率が下降し、自ら職を辞することになった。
辞職の評価
追求側は運動員を使ったネット活動を扇動を含めて組織的に行っているので、彼が内閣に残った場合、野党政治家の内閣批判、国会への召還、首相の任命責任追及と言ったお決まりの野党芸の出汁に使われる。
それを考えると個人を守る意味ではさっさと逃げ出したのは緊急事態対応がしっかりできているということなのだろう。
一方で、責任をもって仕事をする立場や学者・言論人としては下の下である。汚い言葉を吐いておいて、怒られたら逃げ出してしまったのは傍から見てダサイ。また、もし残っていたら、自分の発言の価値についてしっかりと公の場で自己弁護できる機会があったのに、それを捨ててしまっているので、今までの主張がしょせんその程度の価値しかないということになってしまう。
つまり、彼自身は責任を取らないため、彼の発言には価値がないということになる。
youtuberの炎上芸としては一級品だが、公ではやってはいけないことをしているので、今後の彼の職業をどう選ぶかで今回の評価は分かれるのではないかと思う。
そのため、うまく逃げたなぁというのが自分の評価となる。
本人の主張と齟齬
本人の主張をまとめると、家族に怒られるほど言葉ズラは汚いが、発言の内容は正しく、日本の感染者数は他国より少なくオリンピックを開くべきで、緊急事態宣言の行動制限は弱く憲法を含めた議論をすべきであるという主張を展開している。
また、言葉尻を捕えて彼を批判するマスコミは「マスゴミ」であり、しっかりと内容を理解して議論しない点は非常に良くないと非難している。
では、彼の望むように実際に彼の主張を崩してみる。
まず、感染者が少ないからオリンピックが開けるかと言う点である。
彼は他国の感染者数と日本の感染者数の比較では日本が少ないから大丈夫だという主張であるが、この比較の仕方は明らかな誤りである。
去年から我々はざわざわしているのは、病院の医療体制(専用ベッド数)とコロナ重症者数の比較が原因であり、ベッド数が埋まれば医療崩壊が起き死者数が激増するから困っているのである。
現状ではこのベッド数がギリギリのところを推移しているので非常に危険であり、緊急事態宣言をしたり海外渡航を制限している。
つまり、彼の言う他国との比較は何の意味もなく、当然オリンピックの開催もこの比較では可否を判断することはできない。
次は緊急事態宣言の評価についてである。
他国と比較して日本の行動制限ができないため、コロナが落ち着かないということなのだろうが、他国との比較を行うと見えてくるものはずいぶんと異なる。
上の動画内でCOVID-19: Stringency Indexが云々ということを述べていたが、このIndexは Policy Responses to the Coronavirus Pandemic の中の一つの指標であり、このデータの注意書きではコロナ感染者数と政策の効果が国によってまちまちであり、その強度も国によって違うとなっている。
また、Stringency Indexだけを見ると、日本の行動制限は弱い(50%程度)が、別指標のContainment and Health Indexを組み合わせて見ると、むしろ非常にバランスよく対応していることが分かり、政府が機能していることが分かる。
しかし、問題点もある。日本では他国よりも感染者数が少ない状態で、行動制限を強くかけているが減少の割合が少ない。そのため、行動抑制政策よりも別の要因で感染拡大が起こっている可能性がある。また、コロナ患者増加時に行動制限(緊急事態宣言)によって感染者数が有意に減少しているので、これ自体は効果があるということを示している。
つまり、これはあくまで指標であり、「この指標だけ」を参照するなら緊急事態宣言は十分効果を持っており、強弱に評価はできないし、それ以上のことはわからない。
これをもって憲法が~とか、日本は~とか言うのはお門違いである。
つまり、彼の主張は一見それっぽいがよく見ると全く関係ないデータや比較を元に主張しているので、ただの「お気持ち」でしかない。
彼もまた「マスゴミ」の一人と言える。
なぜ彼を信じるか
高橋洋一氏のお話は軽快で答えを決めつけて話すので非常に聞きやすい。難しい論点をわかりやすく話すし、反対論者を劣等生のように見下して話す様は味方側になって聞くととても気持ちがいい。
これは彼の才能だし、素晴らしいタレントなんだけど、それをさらに補うのが彼の経歴だろう。
彼の表の経歴は東京大学卒、大蔵省(現・財務省)入省。理財局資金企画室長、内閣府参事官、総務大臣補佐官、内閣参事官ということで、ピカピカである。
おそらく多くの人はこの経歴を見てきっとすごい人なんだろう、この人の言うことはきっと正しく真実が隠されているのだろうと信じてしまうのだろう。
しかし、彼の関わってきた政策の経歴は真っ黒である。
代表的なもので郵政民営化、民主党埋蔵金、大阪都構想経済効果、リフレーション政策などがある。郵政民営化で何十万人をリストラし、埋蔵金はなく民主党は破たんした。都構想は論理的基盤を失い、金を擦っても経済は回復しなかった。大蔵省退省後に関わった代表的政策はすべて失敗したと言える。
この辺を理解して話を聞くととても面白い。事あるごとに「安倍総理が…竹中平蔵が…」とか「海外の偉い学者が…」と話を修飾するのに必ず権威を使っている。一方で、彼の政策の失敗についてはそれを実行した人が無能で、自分は正しいと主張して自己の優位性を担保し続けている。
つまり、こういった権威に弱い日本人を理解して話術で人をコントロールしており、それに対する心得がない人はみんなやられてしまったのだろう。
また、彼は科学者を称しているが、科学と言うものは失敗の連続である。数学でも物理でも化学でも生物でもあらゆる論理科学・自然科学は仮説の連続でその誤りを反証し検証して少しずつ真実につながるものである。
だから、科学者は自分の論に対して謙虚でなければならず、それを怠ると簡単にひっくり返されてしまうのが科学ともいえる。
しかし、彼の論陣は基本的に「私は絶対正しい」という官僚答弁である。そのため、一度失敗が始まると何度やっても失敗を繰り返し、答えや正解に行きつかない。これは彼の態度や喋り方、行動の結果にはっきりと出ているし、彼にある意味騙されてしまった人達はそれが誤りで損をすると、強く彼を恨んでしまうんだろう。この「恨」が彼を苦しめて辞任につながったのではないかと思う。この様は、彼は学者ではなく宗教家なのではないだろうかとさえ感じる。
人は簡単に騙されるし自分の聞きたい情報のみを選択して失敗する。自分の専門分野であったり詳しいことでも間違えることはあるし、専門以外になると一から調べないといけないし、興味がないことを理解するのが難しい。そのため、権威ある誰かが言っている意見や簡単な断言に流されやすい。
一度、その意見を取り入れてしまうと、なかなかそれを否定したり考え直すことができないのは人間と言うより生き物としての習性なのかもしれないと思う。
だから、彼はエンターテイナーや宗教家だと思っていれば楽しい演者だが、ちゃんとした官僚や政策立案者だと思うと簡単に騙されてしまうのだろう。
営々と失敗を繰り返して多くの人を苦しませて笑っている顔はとても恐ろしい。
終わりに
鳥の雛のように彼の言うことをそのまま頭に刷り込んでしまう人を馬鹿だというのは簡単だけど、上手な人に絡まれると誰しも簡単に騙される。だから、そういった人を否定するのではなく優しく誤りを教えて、自分が引っかかった時も優しく抜け出したいものである。
・・・まぁでも、自分もこれくらい口がうまければなぁなんて思った(^ω^)
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