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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

イーロンマスクは火星に行けるのか

先日、アメリカの宇宙船が久しぶりに人を載せて宇宙に行った。さてこれからどうなるんだろうかアメリカの宇宙計画をまとめて、将来性を考えてみた。

 

 

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(今週の一枚)晴れ間に神社を訪ねてみると(pixiv

 

 

アメリカと宇宙

 アメリカではニューディール政策を引き継ぐような形で、様々なビックプロジェクトを国家規模で行ってきた。ガン撲滅、軍近代化、アムトラック、宇宙計画などである。これらは失敗も成功もしたが、その結果はアメリカ本土の資本形成だけでなく、例えばインターネットの様な現在まで続く地球全体のインフラの基礎的考え方を変えたと考えることができる。

 その過程で、同盟国が利益を上げ、ソ連が消え、戦う相手がいなくなったアメリカ政府はそのノウハウを後進国に与えて安い労働力でアメリカに利益を上げるようになったり、政府がそういった技術を手放し、アメリカと同盟国の企業がその基礎技術を元に利益を上げようと切磋琢磨するようになったのが、我々が生きている世界だと思う。

 その流れの中で、アポロ計画以降イマイチパッとしなかったのが、宇宙で何かをする…宇宙を開発して人類(アメリカ人)の糧にするという公共事業だった。多くはNASAがそれを差配していたので、その予算の推移を見ると宇宙へのアメリカの興味の変化が分かる。金額こそ巨額だが、連邦予算に占める割合が1970年代の約2%から2020年には約0.5%に減っている。つまり、ここ50年でアメリカとしての宇宙の価値は4分の1になったと見ることができる。

www.universetoday.com

 しかし、今でも地球の重力圏には多数の人工衛星が存在し、GPSは携帯電話やカーナビに地上の位置情報を伝える、なくてはならないツールとして存在する。そのため、地球の静止軌道より内側の勢力圏を確保することはアメリカの経済にとって必要不可欠であり、それを民間でどうにかしようとしたのが、民間宇宙飛行や商用衛星ビジネスだったが、これがま~たくうまくいかなかった。何年かけても繰り返し失敗するし、詐欺があったりそもそも紙に書いただけで宇宙船のエンジンがないなんてものもあった。

ja.wikipedia.org

 そんなすったもんだの末、2011年のミッションSTS-135を最後にアメリカが独力で人間を宇宙に送る力を失い、NASAは月に行ったのは政府の陰謀だなんてウソが広まり、アメリカはこの分野での優位性をついに中国に譲るのではないかと言う憶測が飛ぶまでになった。

www.chinadaily.com.cn

 そんなアメリカはもうおしまいか…と言う中で現れたのがイーロン・リーヴ・マスク Elon Reeve Muskと言う企業家である。

 

ビジネスとしてのイーロンマスク

  マスク氏と言えば、生粋のアメリカ人みたいなイメージがあるが、南アフリカで生まれたカナダ人であり、大学を中退した移民の企業家である。

 彼の経歴を簡単に追うと、当時のインターネットバブルに乗って起業した会社を売ってその資産を元に、オンライン決済のX.com(現在のPayPal)の共同設立や電気自動車のテスラへの初期出資し、この記事でフォーカスする宇宙船の輸送サービスをするスペースX社を起業した。 

www.spacex.com

 彼のやり方は技術者的なあれやこれやを作りました…と言うような物作りタイプの会社設立ではなく、すでにあるシステムを如何に有効に投資することによって効率化し、今の世の中にその技術を当てはめていけるかを提案するタイプの企業家である。

 インターネットでお金のやり取りをしたいと思えば、その会社を作り、新しいモータリゼーションと言えは電気自動車の会社を作り、アメリカに宇宙が必要不可欠だと知れば宇宙船の会社を作るといった具合に、その社会の根っこにあるニーズを読み取って金をだし、自ら広告塔になって新しい未来像を宣伝し、政府や出資者、庶民や技術者をうまく繋ぐパイプになった人物ともいえる。

 現在進行形の巨大なビジネスを抱えており、その評価をするのはおそらく20年後以降になると思うが、現状ではまさにアメリカンドリームを現代に蘇られた成功者なんだろう。

  

宇宙開発の危険性と成果

 さて、10年以上前に始めたこの宇宙輸送業はスペースX以外にも多くの企業が手をあげ、ほぼすべてが撤退した。日本でも堀江貴文氏が広告塔となってインターステラテクノロジズ社を作って頑張っているけれど、なかなかうまくいかない。

 スペースX社の場合もその当初はNASAから引っ張ってきた技術者を多数抱えて、ロシア製のエンジンを試したり、様々なアプローチをしたがなかなかうまくいかなかった。

natgeo.nikkeibp.co.jp

 アメリカの宇宙航空産業としてネックとなっているのが、値段と再利用の問題である。スペースシャトルを見ればわかるが、行って帰ってきてまたその機体を使う。巨大なロケットエンジンとそれを支えるドンガラを作るのには巨額の金がかかるためそれを使いまわすが、再利用するとどうしてもメンテナンスする必要が出て高コストとなり、それをさぼると爆発してみんな死んでしまう。このバランスをどう担保するかがずっと話し合われてきて、結局連邦政府はその能力を手放したという経緯がある。

spacenews.com

 …と言うわけでロシア製エンジンとその失敗である。ロシア製は安く、優秀で安定性があると過度に思いこんでいたが、使ってみると予想よりもメンテナンスが難しく、どうやって作っているのかいまいちわからないので、高出力だけどぶっ壊れやすいというのが本音だったんだろう。

 そのため、プロジェクト開始から数年間は、机上の空論では実際の船は飛ばず、技術的検証もできない状態で何億もの金をどぶに捨てていたことになる。

 そういった失敗を含めて「民間なら安くなる」という初期の宇宙開発事業と出資は完全に失敗となり、ちゃんと金をかけてしっかりしたもの(ソフトとしての発射軌道から帰還までの計算、ハードとしてのロケットエンジンの作成や燃焼周りの整備)をしなくてはならなくなり、結局莫大な投資が必要となった。

 金額として言えば、初め20億円くらい集めればビジネスできますよ~と言われていたのに、ふたを開けると最低2000億円は必要ですね…なんて分かれば、普通は金を出さないし、事業自体破綻である。

 5年くらいのビジネスプランとして考えても、危険な案件だし、素人のみならず普通の投資家なら実物が存在しない失敗の可能性が見えるプロジェクトには投資しない。国家の公共事業と異なり、民間であるため、失敗したら事業はバラバラにされて切り売りされて何も残らないのである。

 しかし、スペースX社というかマスク氏がすごいのはこのハチャメチャな事業に要求額を突っ込んだことであり、そのロケットにしてもブースター込みで帰ってくるシステムを作り、実際に飛ばして成功した点である。いかれているがかっこいい。

 

www.youtube.com ↑の動画は3DCGのだけど実際にこれをやった。

 

アメリカの宇宙開発の次

 宇宙船ファルコンヘビーはかっこいいが、人工衛星の輸送は商用としてヨーロッパのアリアンスペース社や日本のJAXAにもできる。そして、現状において安定的に人間を宇宙に送れることができるのはロシア国営宇宙開発企業ロスコスモスだけであり、システムとしては50年位前のものである。それはアメリカ人にとって屈辱だったろうし、なぜできないのか疑問でもあった。

 しかし、先日、スペースX社によって、かつてスペースシャトルが担っていた仕事、人間を宇宙に運ぶという能力をアメリカは取り戻した。

www.nasa.gov 

 政治的にもアメリカの威信を取り返すことに寄与したことになるし、実際この計画が進むことで、さらなる宇宙開発事業は広がりを見せるだろう。

 そして、アメリカのNASAを含め宇宙開発関連は次のステップに進むという。それが「もう一度月に行こうぜっ」というアルテミス計画である。

www.nasa.gov

 2024年をめどにスペースXとともに開発したシステムを使って、静止軌道上の宇宙ステーションの改修、月軌道上に新規プラットフォームの建設、月表面へのアプローチと基地建設を行うようで、かつて夢見たアポロ計画の続きをやろうということらしい。

www.youtube.com

 また、スペースX社の宇宙開発プランとしてマスク氏が言うには、大体20年くらいかけて火星に街を作りたいと言っていることからも、別惑星への移住と言うものが空絵ごとではなく現実的な可能性を見せてきていると考えてもいいのかもしれない。

www.spacex.com

夢と現実

 では、実際地球人が月に行って、火星に基地を作ってさらには外宇宙へ…みたいなSF展開に行くのかと言うと、そう簡単なものではない。かつて地球が人間で溢れてパンクするから宇宙に行くとか、地球が汚染されて住めなくなるとか様々な理由で我々は外に向かって旅立つだろうなんて言われていたらしいが、現実はそんなことにはならず、スペースX社が出現するまでは、むしろ内向きになっており、天気予報衛星やGPSの維持にも汲々としていた。

 結局のところ、ふわっとした危機感や夢をかなえるためにしては金がかかり過ぎるし、地球もそんなに弱い存在ではなかったのである。

 

 また、スペースX社が行った宇宙ステーションへの人間の輸送は確かに偉業であるが、それはあくまで今までのシステムの「現実の補強」であり、NASAがもくろむような月や火星へ人を送るという「夢」は果たして我々の利益になるのか?と言う疑問を解決していない。

 アポロ計画シュリンクした最大の理由もそこに在り、今もって、地球の重力圏にしか人間の利害が存在しない。火星に行って何をするのか?と言った意味でも答えを出せていない。

 しかし、こういった議論は必ずしも正しいわけではない。例えば、日本に高速ネット回線が敷設された際は、こんなものがあっても意味がないと言う揶揄があったが、引いてみるともう手放せない存在になった。

 人がいて、そこに村ができ、利害が生まれれば、そこには必ず必要が生じて商売が生まれるので、彼らが言うように火星に街を作ってみたら、今の我々の考えに及びもつかない文化が生まれるのかもしれない。

 アポロ計画の破たんとNASAや多くの国の宇宙開発を見るに、大切なのは計画の中に人の生活を満たす何かがあることで、その実現に資金がショートせずに投資し続ける能力がマスク氏やその他投資家にあるかどうかが夢を現実に変える分岐点かなぁと思う。

 

終わりに

 彼がアメ車に乗って火星を走る姿を見てみたいと思う。でも、資産的には月を歩くくらいが限界かなぁとも思う。アメリカは斜陽だと言うが、やっぱりそういう夢を見せてくれる意味では世界一の国なんだろうと思った(^ω^) 

 

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