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飛ばないミサイルを買わない理由

最近どうも防衛省が変だ。イージス・アショア計画も白紙に戻った。どうなっているんだろうか…ミサイル防衛を素人なりに調べて考えてみた。

 

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(今週の一枚)お月見人魚(pixiv

 

 先日、河野防衛大臣が主導する形で、イージス・アショア配備計画が停止された。いったん配備が決定した高額な兵器群の購入計画がひっくり返されることは日本ではあまりないため、今後その判断を検証される必要があると思うが、これはまさに政治決断であり、英断だと思う。

www.taro.org

 …ではなんで政治決断しなくてはならなかったかを考えてみる。

 

本来のMD計画の価値

 こういうイージスシステムとか、ミサイル防衛(misisle defense, MD)構想みたいなデカい軍隊の計画はほぼすべてアメリカ軍経由の焼き増しで、地域ごとにカスタムしたものをそれっぽくしていた計画書ばかりである。そして、お役所が予算を取るためにへ理屈をつけてさらに装飾するので、年を経るごとに実態が見えなくなる。そのため、その価値を図るためにはできるだけ最初の計画を追う必要があると思う。

 そこでミサイル防衛の歴史を見ると、クリントン政権国家ミサイル防衛(National Missile Defense, NMD)計画、ブッシュ政権限定的攻撃に対するグローバル防衛構想(Global Protection Against Limited Strikes, GPALS)、レーガン大統領の戦力防衛構想(Strategic Defense Initiative, SDI)とさかのぼることができる。

 これらの戦略構想をアメリカミサイル防衛庁のスタンスを含めて見ると、大前提は「地球の反対側から飛んでくる核ミサイルをどうやって叩き落すか」という一点に尽きる。

 大切なことは、この構想群は同盟国を守るものではない点と、アメリカ近傍からの攻撃も意図していない点である。

 つまり、この計画自体全く日本を守ることを意図していないことを注意しておかないといけない。

 

日本におけるMDの価値

 長距離ミサイルからアメリカを守る計画がMDの要旨であるが、それだと日本にとって防衛的利益は全くない。百歩譲ってアメリカ防衛のためにアメリカ軍のシステムを日本に置きアメリカ人が操作するならわかるが、アメリカ本土防衛のために日本軍(自衛隊)がミサイルでアメリカを守ることは理屈をどうこねくり回しても違憲である。

 そこで日本では意図的にアメリカへの長距離ミサイルの防衛と日本への短距離ミサイルの防衛をごちゃまぜにしてごまかしてしまった。

www.mod.go.jp

 そこで、日本のMDを長短で分けて見る。

 まず、短距離ミサイルの防衛が大きくピックアップされ、予算が付くようになったのは北朝鮮が日本を超えるミサイルを発射し、練習弾が日本近海に着弾を続けたためである(防衛省資料 pdf)。

 2014年以降、おそらく北朝鮮がロシアから購入したノドンやスカッドなどの射程距離が1000~1500kmのミサイルに対する危機が騒がれたため、PAC-2からの更新と言う形でPAC-3のミサイルシステムの配備がなされた。これは必要に迫られたものであり、一定の理解が得られる買い物をしたと思われる。

www.mod.go.jp

 一方で、アメリカ本土への長距離ミサイルからの防衛用に配備されようとしていたのが、今回問題となったイージスアショアである。もしそのまま配備されることになるのなら、秋田県山口県の二か所に発射基地を作り、ロシアの沿岸部から中国の上海

辺りまでの広範囲のミサイル攻撃を防衛するはずだった。

 防御範囲を見ればわかるが、明らかに北朝鮮の攻撃を意識したものではなく、主に中国からアメリカ本土への攻撃の防衛を意図したと分かる。

  政治的にアメリカを守るというジェスチャーや防衛上アメリカ軍と日本軍が一体であるという意味では価値があるが、長距離ミサイルの攻撃範囲にない日本の防衛という意味では全く無意味な装備だとわかる。

www.mod.go.jp

現実の能力と問題

 さて、配備は白紙になったが、実際配備したとしてその能力はどのくらいあるかは気になる。定価で7000億、実売で1兆円くらいかかる新規システムであるから、超すごそうだが、実際どうなんだろうか簡単に調べた。

 

 そもそも、このイージスアショアは海に浮いてるミサイル艦のドンガラを引っこ抜いて陸の上に基地として置いたものである。東ヨーロッパでロシアの伸張を防ぐため、海のシステムを陸が広いルーマニアに配備した苦肉の策のシステムとわかる。ミサイル艦のシステムを流用したため、新規開発費用が抑えられ、当初はとてもお得なものとされていたようだ。

www.armscontrol.org

 イージスシステムは海軍が戦闘艦に1980年代から実戦配備した実績があり、長年更新が繰り返されたガチの武装である。それを陸にポンと置くので、能力的にも十分価値のあるものであることが期待された。

 

 さて、日本でのイージスアショアは能力的問題点が3つあると思う。

 1つ目は海洋国家の日本になんで内陸国用の装備を置く必要があるのかという点である。繰り返すが、海がないからイージスアショア(イージス陸)なのに、海があるならイージス艦を買えばいいはずだ。

 船を動かすのに人員が…と言うなら、水兵をもっと金を出して雇えばいい。国土防衛計画上も「動的防衛」なんて言っているのに、動的な船を捨てて、不動のミサイル基地をわざわざ立てる意味がない。

 メディア的にはブースターが…とか、官僚の説明に誠意が…なんて騒いでいたが、そんな感情論以前に、地形的に日本に合わない兵器だと思う。

www.asahi.com

 2つ目は存在しない兵器であるという点になる。

 実は、上記の東ヨーロッパに配備されているイージスアショアと日本に配備されようとしていたイージスアショアは全く別物である。

 イージスシステムは大きく分けて、レーダー・情報管制・ミサイルで構成されているが、日本が買おうとしていたシステムはこの3つの部品がすべて新しいしたものであり、まったく性能が未知数である。

 つまり、東欧のミサイル防衛計画は比較対象にならず、新規で日本固有のシステム構築をしなければならない。発射実験や配備のローテーション、実際の性能試験など、試作兵器を実質配備するまでの苦労をほぼアメリカ軍に依存している自衛隊防衛省にそういったことができるのか疑問だし、もしそれをやるのならかなり挑戦的試みであるが、そういった意気込みが見られなかった。

 

 3つ目は配備の場所だと思う。

 構想当初は一応「北朝鮮危機」と言うものがあって、大陸側からの攻撃に備えるという大義があった。しかし、安倍氏の外交失敗もあり北海道の北方領土・千島列島がここ数年に及んで軍備強化され、明確に核ミサイル搭載の原子力潜水艦の基地になった。すでに第二列島線まで抜かれているのである。

globe.asahi.com

 もし、列島線以西でロシアのウラジオストック北朝鮮の山奥の基地、中国の沿海部からの攻撃なら数分の反撃余地が日本にはあるが、アメリカが列島線以東から攻撃されたら日本にMDする意味はなくなってしまう。主敵はあくまでロシアや中国と考えるとイージスアショアは日本においてアメリカのMDとして機能していない

 

本当に買えたのか

 調べてみると何で配備しようとしたかわからないイージスアショアであるが、純粋な防衛でないと考えると理解できる。

 例えば、国内軍需産業との関係の変化である。かつて一大汚職ということで、山田洋行がメディアで強く報道された。

ja.wikipedia.org 

 同じ様な企業が多く日本国内にあり、取次企業の接待だけでなく、防衛関連品として随意契約を結んでいる中小多くの企業群が存在している。そこには食品や衣服などの障碍者雇用であったり、国内の兵器関連企業の子会社がわんさかあり、一概にこれらを汚職や癒着企業というのは難しい。日本の場合、防衛兵器を作ると調達数が少ないので作ると損をすることが知られており、その赤字を埋めるために簡単な仕事を役人がまわしている側面がある。

www.nikkei.com

 しかし、こういった国内産業保護は第二次安倍政権になって急速に減少した。その削った金額をアメリカの最新兵器購入に使うことに費やしている。アメリカの対外有償軍事援助(Foreign Military Sales, FMS)の増加や防衛費の推移(高額の兵器を少数買う→少額の品を買わない)を見れば明らかだと思う。

 この大幅なアメリカ依存の体質変化がさらに拡大・異常化したのがイージスアショア配備計画ではないかと思う。アメリカの高額兵器を購入する際、敵に見られたら困る中身があるので、必ずアメリカ政府はチェックする。そのためのFMSであったが、実はイージスアショアはそのFMSを通していない。

www5.sdp.or.jp

 もちろん表面上のパッケージはFMSなのだが、レーダーを含むいくつかの部品は一般輸入品となる。また、このレーダー周りはアメリカ海軍で実績のあるレイセオン社製のAN/SPY-6でなく、まだ図面もないロッキードマーチン社のAN/SPY-7(LMSSR)を採用した。当然このレーダーも機密の塊なので一般輸入は契約自体違法となる。また、レーダーそのものの品質ではコアとなる半導体素子(窒化ガリウム)に関して、品質が劣るもの(素子密度が薄いため電波強度に問題)を使うようで、日本製を使わないため国内へのキックバックもなくなった。おそらくカタログスペックを維持できず、既存のAN/SPY-6より劣る性能になる可能性は高い。同様な問題点がシステムの情報リンクや、ミサイル制御にもあり、調達計画として破綻していた。アメリカ依存体質が悪い意味で表面化したものと言える。

 

 性能、実績、運用、アメリカ軍との協力体制すべてで欠陥があるものを脱法的に購入しようとしている姿勢は素人から見ても異常としか言えない。

 まぁ…ちょっと調べてみると、ロ社が賄賂攻勢しまくったんだろうなぁ…と暗に示している記事がたくさんあって、実は買う買わない以前の問題だったりする。そのため、慌てて契約を切ったのだろう。

 

まとめ

 戦術的・戦略的に日本にアメリカ本土防衛の一端を担うには無理があり、日本用イージスアショアは実物が一切存在しない杜撰な計画である。

 そんな存在しないおもちゃで1兆円も騙されそうだったが、政治決断でそれを止めた河野太郎はえらい。

 

終わりに

 調べてみると、国家的オレオレ詐欺みたいなもので、よく止められたないぁと驚いた。このままいけば第2次ロッキード事件になっていただろうし、ギリギリの白紙化だったんだろう。アメリカへの忖度とか政治的にはよくわからないけど、まぁ買わなくてよかったと思った(;´・ω・)

 

 

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