nipplelfsblog

nipplelf’s blog

1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

攻殻機動隊 SAC_2045って面白いのか?

有名IPのアニメを見て、ただ難癖をつけるのも大人げないのでどこがいいか悪かったところはどうすればよかったか素人なりに考えてみた

 

 

f:id:nipplelf:20200504071948j:plain

(今週の一枚)海の底から空を見る(pixiv

 

 気分を変えて、たまにはなにかアニメでも見ようと思って探すと、攻殻機動隊の新作が出たということで閲覧した。自分としてはう~ん出来は微妙だなぁと思ったが、ただブーブー言うのもつまらないので、どこが悪くてどうすればいいのかを考えてみた。

 

ストーリー

概要と評価

 本作攻殻機動隊SAC_2045は前作「攻殻機動隊ARISE」とはまた違った世界線の話で、それ以前のテレビシリーズの副題SAC(second alone complex)という文字と継いでいるので、不評の前作から設定を元に戻すと宣言をした作品なんだろうと思う。

www.ghostintheshell-sac2045.jp

 物語は経済が破綻して国や街ごと(?)の分断が生じて、文明社会が徐々に破綻している近未来の話となる。シーンは国家機関を抜けた主人公と仲間たちが傭兵として盗賊と戦うシーンから始まる。戦闘と作戦失敗、謎の組織との接近、政治的取引、元の組織への復活から経済を壊した謎の集団の捜査という形で話が進む。

 本編については実際に配信をご覧になっていただきたいのでこれ以上書かないが、概要として、以前の作品群よりもとても分かりやすい内容になっている。シーズン2以降どんでん返しはあるだろうが、以前のものよりも純粋な驚きは少ない展開となっている。

 さて、このお話は評価がとっても難しい。前作を見ている人には設定をいじっても結局同じメンバーで同じことをするので「何度目だよっ」みたいな感じになる。前の話を知らない人にはふわっとした話が続き急にドンパチしているのでついていけない。ぼんやりと以前のIPの内容を知っている人しか楽しめない作りになっている。そのため、前知識で評価が割れるが、情報を必要とする分、シナリオ単独での評価はあまり高くないのではないかと思う。

 自分としても、どっかで見たOPだし誰かが言ってたテーマだなという気がして、あまりグッとくるものがなかった。

 

配信とターゲット

 では、なんでこんな状態にしてリリースしたのかなぁと考えると、配信元Netflixのアニメの枠との関係があるのかなぁなんて思う。

xtrend.nikkei.com

 当初、かなり金をかけて大々的にオリジナルコンテンツを発表していたが、アニメ関係は年を経るごとに数・質が共にしょぼくなってきている。通常、ジャパンアニメはキッズ枠を除くと視聴はほとんど日本人で、華人圏がちょっと食い込む程度でそれ以外はない。色々やったけど、フリークスやアニメ好き以上に当初期待した顧客拡大は出来なかったとみるのが妥当であろう。

 そうした中、このまま北米向けのキッズ枠でアニメを作り続ける方策もあるが、攻殻機動隊IPのターゲットは大学生前後とモラトリアム環境の人でジュブナイルではないという点を見ると、折衷案としてある程度低年齢層を含めた広い層で視聴数を稼ごうという方針があり、その中で本作が作られたのではないかなぁと思う。

 そのため、難しい話をできるだけわかりやすくしてジョークや皮肉もできるだけなくし、哲学的問いもやめ、スーパーヒーローの悪役みたいな分かりやすい配役や15歳程度でも共感できる作りにしたのではないかと思う。

 つまり、大学生向けの内容を中学生でもわかるようにしたらこんな感じになりましたということだろう。

 もったいないなぁと思う点はわかりやすくした点はいいとしても、作中で情報を徐々に積み上げていない点である。いらないキャラや単語が増える割に、本来知るべき捜査の証拠など物語に必要な情報が不十分な状態で、いきなりドバっと別情報を突っ込むシーン現れて処理しきれなくなる。その後になんかよくわからない事件が起こり、それが繰り返し続くので話がぶつ切りになる印象が多かった。もっとキャラ数を減らして話の線を減らした方がよかったのではと思った。例えば、1話2話のアホな敵の説明や前説は消して、ひたすらアクションと作戦失敗を見せればいいし、戦いつつ会話で9課や周辺情報を話せばよかったのではないかと思う。そう言う意味で7、8話は全く価値がない。

 視聴層を広げるなら、新キャラ2人は全くいらなかったし、むしろ素子とバトーだけの方が話は成立したと思う。なんというか…選択しきれず迷いのある作りだと思った。

 

アニメーション

 今作はフル3DCGアニメーションが売りらしい。正直言ってすごいなぁと思った。20分×12話(OP・ED除く)を3DCGのみで押すのは日本のアニメーションとしては未だに挑戦の域だし、このIPの都合上様々な場所を行き来して、背景を次々と変えたり、戦闘/アクションが多々あるので傍目に見てもきついことはわかる。そのため、ストーリーとシーンをどうバランスさせるかがすごく難しい作品だと思うし、その中で、しっかり12話作り切ったのはやっぱりすごい。……が、その評価は芳しくないようだ。

www.youtube.com

 上の予告を見た人がどの程度本配信を見たかわからないが、上の動画などではクソコメントが溢れている。これを見たら作った人はしんどいだろうなぁ(;´Д`)

 

 さて、実際本配信を見た自分の感想は「極端なハイローミックスだなぁ」というものになる。モデル・モーション・エフェクトに分けて感想を書いてみる。

 

モデル

 見た人はわかるだろうが、作り込まれた主人公(草薙素子)、その周辺の数人のある程度整えられたモデルと、顔を入れ替えただけのモデルの3つに分けられる。

 中心となる素子のデザインは賛否が分かれるが、子供っぽくしたのは新しさを求めるという意味では「アリ」なんじゃないかと思った。また、映画版の表現であった「人間なのに機械の様な行動をする無表情な素子」を逆転させて「人形のような顔なのに人間のような動きをする素子」という点は表現方法として面白いと思う。

 難点として、素子アクションショーにするならこの主人公に労力を集中する選択はとてもいい方針だと思うんだけど、この話はあるチームの軌跡を追ったものなので、その都合上、ピカピカモデルとクソ人形が並ぶことになってしまい、それらが戦ったり会話をしているとものすごい違和感に襲われた。キャラ同士のバランスが悪すぎるのである。

 特にひどいのが、肩パッドを付けたような肩の三角筋が爆発してるモデルで、そいつらが登場キャラの半分以上を占めていて、一昔前のPS2のゲームみたいで思わず笑ってしまった。

f:id:nipplelf:20200504103107j:plain

(違和感のあるモデル例:よくできたモデルが並ぶとすごく変に映る)

 

 他にも、妙に手がデカいとかキャラとか、銃が異常に大きい…みたいなおかしなキャラがいる。各所の使いまわし、寄せ集めはいいとして、主人公側ともっと調整したほうが良かったんじゃないかなぁと強く感じた。修羅の国(福岡)じゃないんだから、男はマッチョ以外もいるはずである。

 

モーション

 いくつかのシーンでハッとするようなモーションがあってすごいなぁと思った。例えば、9話で機械を弄るサイトウとその椅子に寄りかかっている素子の会話でポンと肩を叩いて素子がどっか行くシーンである。ほんの20秒程度だけど、本物の人間よりそれらしい動きに見えて、一つの芸だなぁと思った。手の動きや関節の移動から体重のかけ方なんかは教科書的に完璧なんじゃないかと思った。

 一方で不自然な動きをするモーションも並列して存在して、素晴らしいシーンとの落差が極端なため悪目立ちするように感じた。例えば、同じく9話で、みんなで集まって会議しているシーンがあるが、全員がゆらゆら動いて学級崩壊しているような見栄えになり、全員が同じ内容や視点に注目して行動・会話していないように感じた。

 こういったチグハグの重なり、無駄な動きのせいでアニメーション全体の質が落ちているんじゃないかと思う。動かすのなら体全体をふにゃふにゃさせるんじゃなくて、顔や目線を話者や敵(意識の方向の統一)に向けた方がよっぽどそれらしくなるシーンがとても多かった。

 また、新キャラのピンク髪の女の動きは意識的にモーションを臭くしているのに、それ以外のモブがそれ以上にキモイ動きをしてその良さが消えてしまう点も気になった。

 部分的に出来が素晴らしいものも多いのですごく変な気分になった。

 

エフェクト

 同IPには独特のイメージや世界観があるので、それをCGでトレースできれば物語のいい補助になるはずであるが、この作品ではその辺をほとんど放棄している節がある。

 例えば、情報共有で使われるUIサブアイコンみたいなものがあるが、2話以降はほとんど出ない。また、ネット空間で仮想的にモデルを作り戦いをするんだけど、そういったイメージシーンもほとんどない。売りの一つである独特なSFイメージがたりない。

 もちろんハードボイルドな戦闘を推すならかっこいいが、肝心のアクションシーンが素子周り以外ほとんど手抜きなので人形劇を見ているように映る。

 また、見せるシーンがセル画のまんまで、自由なカメラワークなど3DCG技術特異的な手法がほとんど使われていない。むしろキャラが動いてもカメラが全く動かない場面が多いので、いいモーションであっても場面がとても狭く感じることが多かった(9話後半の戦闘シーンをもっとマイルドにしたものが足りないと思う)。

 逆に言えば、その点がすごくもったいないと思う。せっかく3DCGにしてるんだから、遠くの上下から一気にキャラに迫ったり、それこそキャラのボーンに映像を入れ替えて動きをわかりやすくしたりなど、映像として自由度がいくらでも広がるし、モーションの拙い部分をフォーカスを絞って背景をぼかしたり、テクスチャやプロップを画面全体に張って絵を汚せば、一気にそれっぽくなる気がする。

www.4gamer.net(かつてのゲームのイメージの方がそれっぽい)

 

 まぁ、金をかければそういったシーン構築は楽にできるんだろうけれど、別に金を払わないでも煙や砂埃を左右に飛ばすとか、物陰から覗く様なカメラワークするとかいくらでも工夫ができたり遊べるのに「普通の絵」にしているのがものすごく疑問に感じた。この作成法でしかできないことをやらないのはもったいない。

 

総評

 …ということで、作り込んでいるところはじっくりやっていてすごいのに、流すところが雑すぎて全体が崩れているんじゃないかと感じた。作り込み部分を見るなら1流なので、それ以外を上手くカバーできれば評価がガラッと変わるんじゃないかと思う。

 

終わりに

 ちょっときつめなクソ論評だけど、せっかく有名なIPを使って作ってるならもうちょっと工夫して面白いと思わせてくれる点をどこか作って欲しいと思って書いた。

 一生懸命作ってる人は大変だろうけど、頑張って欲しいなぁ( ^ω^)・・・

 

☆エロ同人CG販売中

 

COPYRIGHT Nipplelf ALL RIGHTS RESERVED.