立体的に絵を描こうとすると陰影を意識する。影は「光が当たらない所」だけど、影自体に色があると仮定したらどうなるだろうか? ちょっと試してみた。
(今週の一枚)急に来ましたね、梅雨☔(pixiv)
一般的な立体化と技法
いつも絵を描く時、立体的に表現したいなぁと思っているが、自分の描き方はどちらかと言うと光よりも影を描きこむ傾向があって苦労している。まぁ誰かにどうのと言うこともないし、別に展覧会に出して評価してもらうようなこともないので、これはこれで個性としてはありと思っている。
しかし、本来、影を作るということはその影を作る光があり、画面を意識するなら、光が作る陰をハッキリとバランスさせることが立体の位置を確立するためにも重要な要素となる。言い換えると、光があれば陰があり、物があれば反射をし、何か現象が起これば必ず応答があって、原因と結果が絵(立体化)になると言える。
(Aでは個体の立体感、Bでは画面における立体感、Cでは奥行きを含めた空間の立体感)
至極基本的だけど、図のように光陰を加えるだけで、3次元的なイメージが全く違うものになることが分かる。以前の記事では自分は対になるこの光陰を別々の現象として分けて、それぞれを別のレイヤーで管理することで、ひとつの絵を作ろうと考えた。
いいか悪いかはわからないが、この基本的考察は今の描き方の骨格となっている。
油絵や厚塗りなどにおいて、こういった光源と陰影の認識、強い光なら強い影が現れるなどの陰影のバランス調整はデッサンや構図よりも必要とされる前提の技術としてあるので、そういった描き方の作家さんの作画過程を見ると非常に参考になる。
陰影を強調するなら、
まず光源の位置とそれにバランスする影を大まかに決めている。
この陰影の視点に加えて、色による視点を加えることで、環境光や遠近感、領域の適正化などの描き込みがあり、それを補う手法として色収差やレンズのブレなど状況に応じたちょい技があると思う。
自分がこういった習練のいる技法をソフトでちょちょっとできるのはパソコン様様だし、一枚(もしくは少数)のレイヤーでそれを完成できる人はやっぱり長い経験とセンスなんだだろうと感心する。筆をもってアナログでキャンパスに描けと言われても、自分にはできない。
対をつくらずに対をつくる
前項では光と陰は対であるという当然の自然現象をくどくど書いたが、自分の描き方はすでにそれを別々の現象として絵を組み立てているので、調整に苦労したり、上手くいかないことが多い…が、一応それを認識して描くことはできる。
その視点で上手な人の作品をいいなぁと指をくわえてみていると、ちょっと面白い発見があった。
それは「色のついた光」と「色のついた影」を使うことである。
光に色があるので影にも色を付ける
光の場合は、距離感を出す為(境界をぼかす)に波長を意識して塗り分けたり、光源それ自体が色を持っている場合があるので、絵の色味を意識すれば比較的容易に「この距離ならこの色」、「光源の光と同じ色」のように見分けることができると思う。
また、その場合影は「null」つまり光がないことを示しているので、眼に見える色は黒一色(見えないことを黒と認識)のはずである。
しかし、華人の絵描きさんの作品を見ていると意図的に影にも色を付けていることがあって、これが実に印象的な作品を作っているケースを最近多く見かけるようになった(流行りなのかな?)。
そんなことが現実世界にあり得るのだろうか?
…と考えると、技法としてではなく現実に起こりえる現象と言える。
一つは、「影」は単色の黒であるといったが、強引に「陰」に色があるということを物理学的に考えることは一応できる。それは色の異なる違う位置の光源を考えることである。物理的には2つ以上の光源が異なった光の波長を持っていればそれが作り出す陰は色を持つことができる。
ただこれはあくまでもある光源作る影を別の光源が打ち消したことで起こる現象で厳密な意味での影ではない。
ただ、実際に多数の光源があった場合、色を付けようとすると明確な影付けの邪魔となってしまい、むしろ絵の印象を妨げてしまうこともあるので、経験的にとても使いにくい。
もちろん環境光と影の組み合わせを考えて、部分的な「自然な影」を作る方法はお絵かき的にはアリの手法だけれど、そういったものを飛び越えて、影それ自体が色(印象)を持つというのは面白い方法ではないだろうか。
もう一点は、ハーマン格子錯視などを代表とする視覚による錯覚の影響が色の認識に異常をきたしている場合もありうる。これは我々人間の「眼の限界」によっておこる現象なので、絵に使っても何ら問題ないだろう。
現象としてはありうるが、あくまでも2次的要素なので影に色を付けるということは絵の中の強調と考えていいし、画法の一つとみていいのだろう。
論より証拠
まぁ理屈は置いとくとして、試しに影を充てて比べてみると違いが分かる。
(元絵は黒で影を作り、左上の光源から光が当たり、陰影を作るとする)
わかりやすいように背景を白にして見たが、下の丸い部分を見ても単色の比較ではほとんど差が見られない。しかし、実際にキャラにあててみると(レイヤー不透明度60%)だいぶ印象が違うと思う。
かなりバランス感覚が必要かなぁと思う方法だけれど、背景とのマッチングに環境光を使って遠近感や強調点を作ることを考えると、影自体をその色調整の一部にできれば結構イメージの幅が広がるんじゃないかと思う。
ここでの一番の利点は光と異なる色の影を作れるという点だと思う。光と対になる影を作るのに対とならない色を秘かに作れる。光源が一種類の波長だったとしても、影でもう一色加えられる。もし距離感を色で補うとするなら、より近傍にいるキャラはRとGの強い彩度で影を作ればいいし、暖かいイメージを出したい場合であれば、Rを高めすればいのかもしれない。
背景として存在する色のイメージとキャラクターとしてのイメージを分ける、もしくは強調することが「背景の陰影と光度を維持しつつできる」ことがこの色影の特徴じゃないかなと思う。
終わりに
そのくらい大したことないよ~o(`ω´*)oプンプンと言う人もたくさんいると思うけれど、自分としては結構な発見であった。仕上げにコントラストなどの調整をすることも絵の質を上げるのに大切な手段だけど、色影で部分的に強調点を作って、全体の印象に深みを出すにはいいかなぁと思う。
ちょっとしたことだけど、ちょこちょこ使いたい(^ω^)
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