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タクシーの窓の外ともう一色

【オリジナル】「上から下へ」イラスト/ニッペルフ [pixiv]

↑実験的に色を加えたクラゲ女

 

 ちょっと偉い人たちのパーティに遅れて出席した。「ちょっと」豪勢なパーティは立食・ビュッフェスタイルで、こういう形式の常として、初動の食糧確保に失敗すると、途中からの補給がめったに行われないので、くいっぱぐれる。
 そういった関係上、遅れた自分が目にしたものは銀色の大皿に残ったレタスとプチトマトだけであった。悲しいウサギ気分で野菜を安ワインで流し込みながら、軽く挨拶をしてちょっと偉い人のちょっと偉い話を聞いて、愛想笑いと一緒にタクシーで帰ることにした。


 帰り道、車の外の景色を見て、考えたことと閃いた描き方を忘れないうちに描いておこうと思う。

 


 タクシーの備え付けテレビに映る、繰り返しのCM?を見ていると気持ち悪くなるので、ラジオを付けてもらって音楽を聴きながら窓の外をぼぅっと眺めながら帰路に就くことにした。
 会場が湾岸沿いだったので、海辺を橋の上を通るようなルートで見る薄暗い景色は意外と幻想的でちょっとした発見だった。
 手前の明るい道路灯とビルの飛行機除け赤の光、窓の蛍光灯の帯白色の少し強めの光、真っ暗なようでうっすらと見える雲の輪郭、それらを反射する海面と揺れる波間。
 これを窓越しに見るので、ガラスに映りこんだ車内の色が混ざっていた。
 酔っぱらっていたからか、なかなかいい風景と色だなと思ったが、今の自分の画力ではどうやら表現するのは難しいだろうなとも思った。

 

そこで、少なくとも色の使い方に何か工夫はできないかと考えてみた。

 


・単独の物体と色

 まず、何も映りこまないキャラやオブジェクト単独を考えてみると、それ自体は単色でいいのだろうか?と思う。
 例えば、人の皮膚を表現する色は「肌色」(今はこの呼び方はいいんだっけ?)であるが、厳密には違う。手のひらは他より赤いし、血管がよく見えるところは少し青い、近づいてみると毛や毛穴があるのでちょっと黒い。
 つまり、肌色はそいう言った色を平均化している色であって、肌はいろいろな色を持っている。それぞれの状態に合わせて色を加えられればいいのだが、描ききれないだろうし、面倒くさい。
 そこで筋肉の流れに沿って赤を入れると、結構それっぽくなる。
 エロを考えれば、さらに赤の割合を増やせば状態の変化を表せるのではないかと思うが、通常の状態でもこういったうっすらとした下味的な色を加えることで、立体感や現実味を目に訴えかけられるのではないかと思う。
 服であれば、その服の色に肌の色を乗せるとか、葉っぱであれば、緑色に変化の黄色を乗せるとか、とにかく別の色を薄く加えるといいことが分かる。


・複数の物体と色

 では、その色変化を加えたキャラ(オブジェクト)と背景を組み合わせてみるとどうなるかというと、やっぱり少し浮く。背景とキャラの明暗を調整したとしてもキャラが飛び出しているような印象である。
 これをはめ込むために光源を意識して陰影を入れたり、オーバーレイを考えて輝度を調整するが、他のオブジェクトからの映り込みを考えると環境色(光)をキャラの側面に加えることで、背景とキャラ境界をぼかして一体感を得られることが知られている。
 これはオブジェクトから反射した一定の光がキャラに当たって輝くというイメージなので、そのオブジェクトが疑似的な光源となっているとイメージしてもいいかもしれない。

 ただ、ここで問題なのが、この色はオブジェクトが増えれば増えるほどその色の数が増加して、バランスが崩れる可能性がある点である。
 例えば、左右に緑と赤の花瓶があったら、当然、キャラの顔の左右が緑と赤を帯びた色になる。一見、正しい色の使い方だと思うし、現実に左右から緑と赤のライトを照らすとそういった色になるんだろう。
 しかし、絵としてみた場合は非常にバランスの悪い彩になる。せっかく一体感を出すために色を加えたのに、異常な印象を作ってしまっては意味がない。
 そこで、自分の場合はこういった映り込みは1色に限定するか、キャラ近傍のオブジェクトをコピーして、ぼかしてテクスチャのようにキャラに張り付けることにしている。もちろん環境光自体が弱い光源と考えるので、うっすらと加えるのが大切なんだと思う。

 

・絵全体と色 

 ここで絵自体を引きで見てみると、だいぶましになったかなぁと思うが、冒頭の幻想的な景色を思い出すと何か足りないような気もする。

 そこで、もう一度窓の外を思い出してみると、光源の明暗に合わせるように色の輝度も光源の距離に併せて少しずつ落ちているのではないかと感じた。つまり、カラーパレットの斜め下方向に変化していくイメージである。
 でも、これを表現しようとする能力は自分にはないし、そういった光源がいくつもある場合はもしその技術を持っていたとしても、上手くコントロールできないだろうな・・・と思う。
 ぼやいていてもつまらないので、考え方を変えて、背景を含めた絵そのものを「一つのオブジェクト」として、項目「単独の物体と色」で書いたように、これにもう一色加えることで、それに実体感を出せるのではないかと考えた。
 色の選択はその場所の雰囲気を選択して、塗り方は空気や水、つまりその空間を漂っているものに合わせて筆を撫でるように描くことにした。
 色の強度についてはその絵で表現したい状態に合わせて変更すればある程度の印象の補助ができるのかもしれない。

 


 というわけで、実験的にPixivに今回クラゲ女の絵を投稿してみた。
 光源は下の太陽の光、背景は海の中、環境光は単色で水色、絵全体のイメージは海底に落ちるイメージで、空間に満ちているのは水なので、藍色を全体のカバー色にした。
 まずまずの出来かなぁとは思うが、光源がたくさんあった時には使いにくい(考えるのが面倒)方法なのかもしれない。

 

 ま、少しは窓の外の景色に近づけたのではないか?いや、近づいたはずだ。

 そうだ、私はスーパー画伯なのだ!と妄想して、またレタスを食む。

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