ふとニッペルフの絵を見返す。Pixivで投稿されているような作品と比較すると「濃い」。作り方が違うのだから当然である。よく言えば、描き込んでる。悪く言えば、くどくて見にくい。
ただ、この[描き込んでいる」にしても、実際はソフトの力を借りて厚みを出しているだけで、本体の実力がソフトに追いついていないため、物によっては振り回されているなぁとはっきりわかるものがいくつもある。
どうすればマシな絵になるのだろうか?見やすく、印象的なものになるのだろうか?悩みは尽きない。
また、絵が描けたとしても、動きのあるものや漫画とは表現がかなり違う。特にエロを描こうとすると、印象的な「絵」が作れるのかもしれないが、動きのあるシーンには微妙な出来になるのかもしれない。
そこで、今回はその疑問点について考えてみた。
【オリジナル】「そう、ウニが食べたかったんだ」イラスト/ニッペルフ [pixiv]
↑いくつか思いついた動きのイメージをくわえてみたが・・・
眼は物体そのものを見ていない。反射する光を取り込んでそれをものとして認識している。だから、立体的に描こうとすると、明るいところと暗いところを意識して描くことで、物と物の間を作り出すことができる。
もし全方位から光が当たっているとすると、暗いところがないので、物体本来の色のみが映る。
物を絵にとらえるときにはその外枠となる線とその線の内側を表す色でいるとか陰影で構成されているといってもいいかもしれない。物体が動き出すと(光源は動かないとする)、自らが作る影も他からの陰もその強さや大きさも変化していく。
もちろん、物体それ自体も形が変化する場合が多いので、その影も考えないといけない。だから、止まっているものと動いているものは同じ物体でも全く違うものとして考えてもいいと思う。
そういった光源からの影響をいちいち考えていないと綺麗なカラーができないのではないかと思うが、それを一コマ一コマ作っているといつまでたっても絵は完成しない。そこで、動きを表現する方法が出てきたんじゃないかなぁなんて思う。
1、絵を考える。
漫画を描くことを前提として、キャラクターと背景があるものに意識を向ける。
キャラクターは外枠となる線画とそれ以外の線で構成されているとして、漫画のキャラを見ると、境界部分はしっかりと線画の黒線部分を作って、丸み、凹凸の部分はこの境界線部分を厚くしたり、部分的にしわを描いたりやトーンなんかを入れて補助的に視覚に訴えて立体感を構成している。
凝ったものになるとさらにTextureを添付してこういった立体感を模様の細かさなんかでカバーする場合もある。
いずれにしろすべての場合に陰影を当てはめるのではなく、決めに行く大ゴマでこういった些細な部分にも力を使っているのだろう。
自分が見た印象的なものは全体構成も含めて、この外枠がしっかりと作られているものは多いので、光源と物の配置や画面の広がりを意識した遠近感の取り方をしなくてはならないのだろう。
漫画を含めた白黒をベースにした作品はデッサンの美しさやそれを補う様々な技法があり、作家さんそれぞれが個性を持って作品を作り出していて、売れている作品はやっぱり独特な味であるとか、自分では決してまねできない美しさがある。
色がない分、必要となる画面構成に力を割かないと表現できるものの幅が狭くなってしまうので、作家の力量そのものが試されているようにも見える。上手く表現方法やその考え方を取り込んで、自分のものにできればいいのだが、なかなか難しい。
さて、外枠と中身がしっかりできたキャラが作れたとして、それが動き出すことをイメージしようとするとまた描き方も変わってくると思う。そこで、動き方を部分的に動く場合と全身が動く場合に分けて考えてみた。
2、動く絵を考える。
部分が動く場合、当然その他の部位は動かない。そのため、動く箇所だけの描き方を変えてしまえばいいわけだが、どう描き分けようかと考える。
例えば、手にゴミをもってゴミ箱に投げるシーンを考えるとおそらく手首、もしくは腕が動くイメージがある。動いている部分を柔らかく描いたり(境界線をぼやかす)、移動している印象を持ってもらうために補助線や空気の動きなんかを描き加えて表現するんじゃないかと思う。
また、より強い印象を与えるために腕以外の部分を強くぼやかして焦点が投げる部分に行くようにしたり、考え方を逆にして、動いていない部分に様々なノイズを加えることで見えにくくしてあたかも手が動いているように錯覚させる方法があると思う。
つまり、手とそれ以外とに「差」を作ることで変化を作り出してしまえばいいのだ。
では、これがキャラ全体の移動になるとどうすればいいのか・・・と思うと、変化の比較対象がいくつも現れる。
・ 背景とキャラ
・ 運動によって動く部分と動かない部分
・ 最も動く部分と少し動く部分
もっと多様に対象との比較で変化するものしないものを分けられるだろう。
風景画のように遠くから何かを見る場合はまとめてぼやかしてしまえばいいが、キャラがまじかにいて激しい動きをする場合はその動きの変化の強弱によっていくつかの描き方や補助表現の方法を変えなければならないのかもしれない。
例えば、野球のピッチャーが球を投げる瞬間は踏ん張っている足とグランドは動かないが、体をひねっているので周囲の背景は左右に移動するようにぼやける。そしてひねった腰や腕は激しく動き、ボールと指は最も変化する部分だろう。
考えただけでも描くのは難しいなと思った。しかも、デッサン力がないので、こういった部分はおそらく集中線を入れたり、ブラーやぼかしの強弱を調整してそれっぽさを出していくことになるだろうが、どこがどのように動いてどこが止まっているのかを明確に意識することで、こういった難しい動きについてもある程度対応できるのではないかと思う。
つまりいくつもある運動の始点をプロットしてその向きと強さをちょっとメモするような感じである。
3、漫画を考える。
アメコミなんかと違い、漫画は絵、字、コマの形や大きさなど言ってみれば好き勝手情報を詰め込んで物語を作っている。その表現の幅も広くて、一応のルールなんかも実はない。ワクワクできればいいのである。
見方に関しても、スマフォから紙まで読者のスタイルが様々なので、統一した法則もあまりないように思える。
そんな自由な空間で動きを表現しようとすると、やりようはいくらでもあるがいざやってみるとうまく書けない。
先ほどのピッチャーにしても一番動く部分の指とボールを切り出して大ゴマにしたり、ぴかっと光らせて強調したり、投球動作を連続したコマで書いたり、止まっている絵にナレーションを入れて、文字に訴えかけたりなどさまざまである。
だから、漫画での動きは、動きそのものに注目するかと、その動きと心や環境などの別のもの変化を併せて表現するかどうかがキモなのかもしれないと思う。
ピッチャーは投げる。その時バッターとの思い出を見るのか、バッターとの勝負に集中するのか、それとも過去がよみがえるのか。つまり、キャラの動きを使って何を表現するのかをまず決めなければいけないんだと思う。
もし、動き自体に集中するのなら、動きのどこに注目するのか、ピッチャー全身なのか、ボールなのか、顔と心なのか、その上でコマを作っていくのかもしれない。おそらくページごとに何が言いたいのかを決めないといけないんだろう。
このページは心情の「動き」、このページは体の「動き」、このページは会話の「動き」、そしてページごとの動静を併せて数ページごとの話の「動き」になって、それが合わさって漫画全体の「動き」になるようにも見える。
そこまで考えて作れればいいが、まだまだ難しい。
というわけで、絵としての止まったものの描き方と動いているもの描き方はぼんやりとであるが、少しずつイメージや方向性は出てきたと思うが、それを物語というか絵と話の動きに応用するまでには足りないものがたくさんあることが分かった。
起承転結なんかまではいかなくても、全体が止まったり動きだしたりする印象を読者に与えられれば「勝ち」というのが長い意味での目標の一つになるなと感じた。
考えてみると動き一つとってみても、問題点が山済みであるが片付けないとそのうちゴミ屋敷みたいになる可能性がある。
う~ん、論より証拠。過程より結果。
拙くても、早くエロ次作を完成させれば少しは前進があるのかな・・・
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