最近、ネットで日本がうまくいかないのは財務省が原因だという言説が目立つようになってきた。果たして、財務省が巨悪の中心なのか考えてみた。
(今週の一枚)龍脈調査(Pixiv)
まず、結論から言うと、巨悪の中心ではないが悪いと言えば悪いなと思う。
結論に至る過程をぶつくさ書いてみる。
悪玉論の歴史
財務省(旧大蔵省)が悪いという言説はずっとある。戦前の内務省財務課への軍費調達云々での恨み節なんてものまであるので、政府のお財布係はいつになっても嫌われるのだろう。
ネット言論では、自分が調べた限り一番古い財務省が悪いと論陣を大きく張った(注目を浴びた)ものはチャンネル桜と言う右翼系番組で、ニコニコ動画・Youtube経由のものになる。ここが中心となって、「政府の借金は国の借金ではない」というフレーズを世間に浸透させた三橋貴明氏(2chの固定ハンドルネーム三つ子の赤字神、DVで逮捕)や高橋洋一氏(元財務官、民主党政権の「政府の埋蔵金」という言葉の発生源、窃盗で逮捕)が一時テレビの経済番組に出た。彼らをご存知の方は意外と多いかもしれない。
さて、政治系言論は常に内ゲバを繰り返す。チャンネル桜もご多分に漏れず、選挙関連で金銭問題などいざこざを繰り返し、出演者同士の仲違いで四分五裂のバラバラになったようだ。
国債発行を含めた積極財政派の経済言論をリードする三橋氏とふわっとした妄想をしゃべる高橋氏は現在においても積極的に様々なネット番組での反財務省発言を繰り返しているが、その関係性は少し異なる。高橋氏は右翼系と関係を維持する一方で、三橋氏はMMT関連で揉めて右翼系と切れたようだ。その際、政党を含めていくつかのグループと接触したようだが、一番強い引きは政党れいわ新選組で、彼らの経済観の支柱的存在になったようである。これにより、右翼、左翼問わずネット全体に財務省悪玉論の素地ができたのではないかと思う。
最近では、この素地を元にYoutuberのヒカルやその関係者が一斉に財務省反対のキャンペーンを張って、デモ(動画削除済)をしたり圧力をかけられて税務署が入った…なんて真偽不明な動画「ネタ」を投稿して顰蹙をくらった。
つまり、老若男女・思想の違いに関わらず、様々な人たちの思考に「今の生活が苦しいのは財務省のケチや政府が何らかの悪いことをしているせいだ」という前提が根付きつつある。ネットで少しでも政治や経済に興味を持つと必ずこの点にぶつかるようになった。
財政と財務省の権威と国債
それでは実際に財務省がどんな感じなのか考えてみる。
財政と財務省の権能
日本は借金まみれで明日をも知れないというのが財務省の主張だ。一方で、減税やもっと借金しても大丈夫だというのがネットでよく聞く経済論の主張だ。確かにここ数年は予想を超える増収がある。一方で、現状の出費項目で最も高いものは社会保障費とその止まらない増加だ。地方交付税と国債関連を除くと、実際に使える金において、年金や医療保険の支払いが予算の過半を占め、その他項目を圧迫して年々身動きが取れなくなっている。ストック増減について議論があるが、フローは確実に硬直化しつつあるので危険な状態であることは間違いない。
ここから、少なくとも自分にわかることは、そこまで財務省が強い権限を持っていないということだ。もし、先ほどのYoutuberが言うように財務省が巨大で邪悪だったら、日本がこんなに借金まみれになっていない。
平成初期に国土交通省利権の多くを公明党に譲り、年金・保険の支払いで国庫負担を増やしたり、法的根拠のないアメリカへの思いやり予算(傭兵代)を支払っている。政府の財政はいつも放漫だ。財務省にとって、これらの支払いは無様な敗北である。
高橋是清が軍部にぶち殺されたりノーパンしゃぶしゃぶでハメられたように、お財布係は常に周囲から狙われているみたいだ。強いようで弱い存在なんだろう。
国債と利払い
財務省がそんなに強くないなら国債をバンバン刷れそうだが、彼らは頑なに拒否をしているので、なかなかうまくいかない。確かに財務省が批判するように、国債を刷って各種支払いに充てるという議論はかなり無理がある。今、日本は2%以上のインフレ状態だ。インフレで物の値段が上がれば税収も上がり支払う額が相対的に下がる点では借金してもよさそうだが、インフレによる利払い上昇をどうするのかという点が抜けている。個人だと利子を超える返済をしないとどこかで破産する。借金の利子は複利だから面倒だ。では、国家の場合はどうなのだろうか?
そこで、国債売買の注意点を書き出してみる。
・国債の利子は国際マーケットに依存して流動的
・日本はインフレに突入して簡単にはこの流れは止まらない
・NISAが軸となり莫大な金融資産が海外に流出中
・増発時には多くを海外の投資家に売ることになる
・国家は通貨発行権を持っているが為替は変動相場制
・為替変動が異常な状態にある
という感じだ。
つまり、今は日本国債(日本の権益)は日本国内に多くがあり、価値が変動してもある程度調整できる。しかし、これ以上の発行・売却はインフレと円安による価値の暴落の可能性を常に含んでおり、もし、大量の国債発行をした場合、海外勢にいいように遊ばれる可能性がある。最悪、アルゼンチンみたいになるかもしれない。
国債発行のタイミング
刷ると結構やばそうなのが今の国債だ。しかし、社会保障費の増加は止まらず、いずれ労働人口が減り、国内流動資産や政府予算が支払額を超えて借金が返せなくなる。だから、どこかで勝負に出る必要があり、何に金を使うか、何の支払いを止めるかを決めないといけない。だから、その繋ぎや投資のために国債は発行することになるだろう。では、いつがいいのか?
日本は0%成長から弱い好況状態に移りつつあり、消費税収が一時的に上振れている。この使い道が決まらず政治問題となっているくらいだ。増収の内容は国内の売買量と物価が上昇した煽りで消費税収が増えている(物流インフレと物価インフレの二重負荷状態)面が高い。また、物自体の生産は減るか横ばいだ。そのため、少しでも売買の流れが滞ってしまうと、途端に税収が減る可能性が高い。つまり、現状はコストプッシュインフレの悪い状態(給料が上がるがそれ以上に物価が上がる)であり、景気の減速でスタグフレーション(給料が減って物が高くなる)の可能性がとても高い状態とわかる。
その物価・物流における日本の景気は国際貿易に依存している。最近は外国人観光客への小売が活性化しているが、中国など第3国を経由してアメリカにモノを売るか、アメリカでの会社経営や投資の利益が儲けの大半だ。意外とグローバルじゃない。そのため、アメリカ-中国間での貿易摩擦、中国バブルの崩壊と過剰生産と在庫の偏りを見ると、この弱い好況状態は一時的にでも必ず不況になる方向である。
つまり、国内・国際状況を見る限り、財務省が言う通り、今、国債発行をすべきではない。政府の収支を前提とした財政論的な調整をしつつ予算を維持するしかないのだ。でも、日本全体の経済を見るとこの傾向は続き、いずれ首が締まることが決定的だ。そのため、政治的に決断して年金の切り捨てや各種予算をぶった切った瞬間に国債を発行してその金を「未来」に投資する以外方法がないことがわかる。
財務省の問題
税金の使い道が狭まってきた状況において財務省の権力も限定的になってきた。しかも、彼らの言説にはうなずく点が多い。しかし、彼らの通りに進むと資金ショートする絶望的な未来しか待っていない。この問題は政府全体の問題ともいえる。税金高いし、役所の手続きは煩雑だし、税金の使い道はいい加減だ。財務省が許可した投資や経済政策はほぼ失敗している。エネルギー政策、保険年金、地方活性化、科学研究・博士や高度人材受け入れ、農業政策、半導体、自動車、移民政策などなど何をとっても尻切れトンボの後追いだ。ビビる。
そもそも一度として財政均衡できてないし、税と控除が複雑すぎて誰も理解できない。しかも、単年度予算主義のため、決算で予算執行と計画の成果がわからない。特別会計で複数年度計画を立てても、その失敗成功を誰も検証しない。インチキコンサルやクソNPOの飯のタネだ。だから、まったくPDCAサイクルが動かず、ひたすら浪費しているだけになっている。外圧が…とか、利権団体が~は言い訳だろう。
日本の成長は政府の政策のおかげではないとわかる。原因で一番説得力があるのは偏に人口ボーナスによる労働人口の上昇が続いていたからではないかと思う。政府はその増加にインフラを整備し企業が仕事を与えて利益を出せばよかった。必勝パターンだ。しかし、それを元手に大きくなった企業も今ではほとんど潰れたり業態変更で虫の息だ。これは人口減少時の政策・企業活動ができていないことが原因とわかる。
じゃあどうすればいいかというのは自明である。人口減少時の政策をして、人口増加誘導にリソースを割けばいいのだ。例えば、政府・財務省は予算主義を辞めて、成果主義に切り替えて、うまくいったもの・方法に投資をする。また、経済全体のパイを増やすために、移民促進による一時的な労働力解消と日本人化を推奨し、日本人の子供の数を増やしてアホでも働けるような教育に予算をぶっ込めばいいだろう。教育無償化ではなく、ちゃんとやるやつには無償にして、やらない奴にはそれに合った職や地位を与えればいい。その上で再教育の機会や金儲けの種があればどうにかなるだろう。
予算が足りないなら、年金をバッサリ切ればいいし、それこそ国債発行して「未来」を作ればいいと思う。
財務省悪玉論の問題の本質は国債発行などではなく、長年の政策において、ただ集めて配るだけ、ただ貰うだけでその過程や結果を誰も見ない点なのだと思う。人口増加時の金の集配は権力だが、減少時の成果を得ない配り方は愚かだと思う。
結論
財務省は悪だ。ただのお財布係で在ろうとする内向的な悪だ。政府の一員として投資したならその投資に責任を持つべきだし、成果は受け取るべきだろう。彼ら個人は優秀なのだろうが、組織の建付けがアホなので彼ら集団はアホになり、アホが権力を持つので悪になると言い換えられる。
終わりに
そうはいっても、現状持ち得る札で財務省は頑張っているんだろうなぁと思う。自分にはできない。でも、悪だ。税金安くしろ、控除増やせ!…と言うのが人情だ(^ω^)
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