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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

アニメの隆盛と凋落を考える

作品としてアニメを見る機会が減ったんだけど、その分、製作や経営側のなんたらかんたらを聞くことがあるので自分なりにアニメの状態についてまとめてみた記事

(今週の一枚)(🌸ω🌸)

 

アニメ製作の前提

 アニメ関連でよく聞く話としては、製作現場がとても厳しい環境でブラックだという話ではないかと思う。では、その環境を生んでしまう原因は何かを考えると、ひとえに儲からないからだ。

 製作にかかるコストで人件費にかかる割合が6割を超え(諸説あり)、しかも多くが請負型になっているので構造的に利益が出にくくなっている。これは「テレビの毎週20分の枠を一つ埋める」ことが前提のシステムだからだと思う(OP、ED、5CM枠を加えると30分枠となる)。元々テレビでCMの付きにくい時間帯の穴埋めや子供向け広告用の番組作成で、安く作って枠を埋める思惑があったのだろう。これにおもちゃ会社が販促用にアニメを利用する流れが今もある。

 これを軸にして様々なシステムが構築されてきたのは間違いないだろう。例えば、映画は90~120分でテレビ話数4~6話くらいの費用で作るなどである。金勘定で30分枠が一つの指標として考えてもいいのかもしれない。

 

大企業化という一つの流れ

 アニメを含め、サブカルが儲からないということへのアンチテーゼとして、KADOKAWAが種々のコンテンツ、中小出版やメディアを買収して大企業化して収益化に成功していることは有名だ。

 所謂メディアミックスという形で、製作から広告、販促、販売、版権管理、多メディア化という販売ラインを作ったのはすごいことで、こうやって一括化すればアニメでも金儲けできるのだと知らしめたのは偉大なことなんだと思う。ただ、このやり方は薄利多売方式になりがちで、どれが売れるのかわからないので比較的低い投資をして多めにコンテンツを吐き出すことでバランスを取っている。そのため、大当たりした作品に対して十分なケアができないという点が問題だと思う。

 この点において、旧徳間書店-日テレのマルチメディア部門(ジブリやVAP)の取り組みは一つ上を行く。一つのコンテンツに多大な資金を投じて作製をして宣伝を行うことで、美しい映像、整ったストーリーを使いマスに向けての集客ができることがわかってきた。

 また、小学館集英社は強く海外に目を向け、各地のバイヤーを使って既存の映像コンテンツやコミックを頒布することで、その後のビジネスにつなげてゆくことに成功した。例えば、英語版週刊少年ジャンプは毎週無料で読める。

 これらからわかることは、大企業化して多額の資金を投じればちゃんとリターンが帰ってくるというしごく当たり前のことなんだけど、ほんの10年くらい前までは、アニメや漫画にその可能性はないとほとんどの人(アニメを作る人を含め)がそっぽを向いていたことを考えると隔世の感があると思う。

 これら企業が行っているアニメを核とする商品戦略ははいくつかのアイテムをセットで販売することで利益化している点である。これは小さなオタク層や子供だけに向けたコンテンツから万人に理解できるイメージを作れば、それがビジネスとなりうるという強いメッセージなのだろう。

 

儲かるが儲からない

 では、これに乗って日本のアニメ業界全体が活況になるか?と問われると、むしろ逆で、どんどん苦境になっている。特にここ数年はひどい。

 もちろん、全体としての売り上げは増大しているんだけど、先ほど書いた請負構造から脱却できない企業はどんどん利益が減っているし、アニメーター自体の給料も減っている。

 これは販売点をどこに向けるかが定まっていないことが大きな原因で、中国人に受けるものとフランス人に受けるものは違うし、一般受けするものとオタク受けするものは違う。また、オリジナルで仮に質の高い作品を作っても広告が打てずに沈んでしまう。

 「寿司」と「SUSHI」が全く違う食べ物であるように、見る人、見る文化に応じて作品を変えないと人々の心を打つものを作れないのだろう。残念ながら、苦境にある企業は日本向けを無視して冒険は出来ず、確実に利益が取れるオタク層に目が行って徐々に傾いているというのが実態なんだろう。

 また、日本の30分枠で「客に合うアニメは儲かる」ではなく「どんなアニメも儲かる」という誤った認識が広がり、とりあえず作っておこうということで粗製乱造がされるようになった。出資で1~3億程度集めてどうにか製作をするビジネスはまだ動いているけど、ただでさえ少ないクリエイターが分散し、その肩代わりで中国や韓国の請負を使うことで益々質が低下して儲からないアニメを作るジレンマに陥っている。

 つまり、非常に質が低く数万人のニッチに向けた作品と、質の高い数千万人に向けたマスの映像作品に二極化しているのが現状で、ニッチ用アニメを作っている人たちはものすごい勢いで損(給料的、技術更新)をしているので前述のブラック企業が増えているのだろう。

 

3DCGの価値

 この流れの中で、限られた作画コストを下げたり、新しい映像イメージの構築をしようということでデジタル作画の先となる3DCGによる製作が一時期盛んにおこなわれるようになった。

 しかし、これがうまくいかない。初期投資も回収できない案件が大量に発生した。また、想像以上にコストがかさみ、お世辞にもいい出来の作品ができなかった。そのため、おもちゃ企業は手を引き、多くのアニメ製作系ベンチャーは赤字を出し続けて企業体がどんどん細っており、身食いで資金繰りをしているところがほとんどではないかと思う。

 なんでこんなことになっているかというと、企業用の画像エンジンやエフェクト関連(3Dを作るソフト)が高額で、アニメのようにある程度手抜きをして安く作るものには向いていない点と、そもそも漫画由来の顔を立体化する際にうまくできない(立体化すると表現がおかしくなる)点がネックになっているのではないかと思う。

 高付加価値高品質商品を作るのか、低コスト商品を作るのかプレゼンを聞いてもよくわからないし、安くあげてほどよい商品を作る現場がない状態らしい。

 つまり、30分枠アニメを3Dでやる意味がほとんどないのだ。

 もちろん、すべてがダメというわけではない。例えば、動きのあるワンシーンを数秒3CGを差し込んで質の向上を作れるなど、ワンポイントでの利用だ。また、成功した例もある。ディズニーがフルCG化に踏み切った際、多くの批判とファン離れを招いたが、それは一時的な停滞であり、絶えず投資することでディズニー単体で作品群を管理するチャンネルを作るまでになった。

 つまり、ここでも中途半端に利益を取ろうとする体質や日本国内のみで収益を上げる目線ではどうしてもうまくいかないことが分かった。

 

外市

 日本の中だけだと圧死する。これはどの業界でもわかりきったことだが、アニメ業界も思い切って帆を張って出港すべきなのだろうか…

 先ほど書いたように小学館集英社が先陣を切り敢闘している。先日はスラムダンクが中国で大ヒットしたそうだ。必要とされるところに必要なものを注ぐと大金を生む。その姿を見てその他の企業も…ということで始まったのが政府主導のクールジャパン戦略だ。国が宣伝や販管を手伝ってくれ、現地の人と橋渡しをしてくれるという触れ込みだった。

 しかし、これが大爆死した。本当にありとあらゆる意味で失敗した。理由は単純で、情報も金も物も人もクリエーターや企業にはほとんど渡らなかったからだ。

 日本企業によくある売りたいものを売ろうとして失敗をしたという甘いものではなく、売ろうとさえしなかったのだ。

 官僚の天下り団体に金が行くよりも、どうも仲介業者が孫請け的な仕事回しをして、いつの間にかお金が消えてしまったようだ。A41枚の企画書だけで数百万なんて話もあったから馬鹿にされたものである。

 つまり、日本のかつての護送船団方式はもうなく、やるなら自腹で大損覚悟で勝負に出なければならず、小学館集英社の動きを見ると、10年くらいかけて現地に骨をうずめる覚悟がないと成功が見えないみたいだ。

 

ストリーミング放送枠

 大企業ではないし、潤沢の資金もないし、社運を賭けるほど煮詰まっていない企業はどうすればいいのだろうか? その一つの道としてここ十数年徐々に脚光を浴びてきたのが月額定額制ネット配信へのコンテンツ提供である。

 契約によって利益は異なるけど、テレビ放送用の製作委員会方式よりも一歩踏み込んで勝負ができるということで結構なアニメスタジオがチャレンジした。

 Netflixは横やりが激しく、Amazonはちょっとケチなんて噂があるが、基本的には契約書を巻くと前払いで1~2クール作ることになり、放送開始1週間程度の視聴数で次クールの契約を揉むらしい。製作が自己資金を出さないで勝負をでき、著作権使用料が支払われる仕組みは製作会社にとって救いの雨になったようだ。

 中国系サイトになろう系のポンコツアニメを流したり、ヨーロッパのポルノ枠でちょいペドアニメがあると好きなひとはどこにでもいるのだなぁと思う。

 ただ問題もあって、今までのテレビ枠型だとコケても温情で数作品作らせてもらえるみたいなことはあったが、こういう欧米系の契約はとてもシビアで、数字が取れないとあっさり切られてしまうのだそうだ。

 そのため、製作側が必死に番組宣伝をやらないといけない。まさに死活問題となる。

 その際、大量のステマやウソ広告が撒かれて一時的にツイッターのトレンド欄に乗る作品もあるんだけど、ほとんどのものが放送開始から2週間は持たなかった。所謂「今、ネットで話題」はまとめサイト、紹介サイト、アニメ系インフルエンサー(業者)なんかに金を払うと生まれる広告形態なんだけど、トラフィックデータを見ると、結局、一部オタク層で情報が止まってしまう傾向があって、広くユーザーに伝えることができないようだ。

 そのため、かなり投資しても最大で1か月程度しかそれが維持できず、繰り返し視聴や新規視聴者拡大にはならず、多くのアニメが1クールで切られることになっているようだ。

 

まとめ

 ここ10年、アニメ産業は数字では隆盛のように見える。しかし、多くの人が知見を得た割にはその利益構造は脆く、多くの製作者は苦境に陥っている。大企業化・マルチメディアコンテンツ化することで一つの大きな潮流を作っているが、その流れによって、昔ながらの日本型アニメは数は増えたがニッチになり、技術も面白さも分散している。

 多様な文化として国内外に受け入れられる可能性はあるが、海外のアニメ文化層は未だ薄く、根付くには最低もう一世代(20年)の啓蒙が必要である。それまでにビジネスとして大企業型アニメ産業は大きくなるだろうが、それ以外の文化としてのアニメは凋落してしまうのではないかと思う。

 

終わりに

 子供の見るものから大人も見れる作品って意外とないから動画というより脚本が大切なのかなぁとも思うが、アニメオタクの多くはキャラを見て視聴を決めているので、みんなが見たいものを作るのってやっぱり大変なんだんぁなんて思った。

 まぁ試しに投資してみるのもいいかもしれない(^ω^)

 

 

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