その1では、中国発の問題と言われた炎上事件の実態は主に日本国内で起こった問題であることを書いた。では、現場と思われた中国でアニメ産業はどうなっているのかをさらに掘ってみる。
※目次※
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中国で儲けよう
日本海を超えて渤海湾から北京へ、沖縄を横に台湾から上海へと中国への道は多い。しかし、その市場への道は細く見えにくかった。特にメディア関連では厳しい規制が万里の長城のようにそびえたっていたが、近年その壁の高さが大分低くなったように感じる。
日産コンテンツを受け入れる中国のメディアはどういう思惑なのかと、輸出するコンテンツ産業としての日本アニメとその関係者はどう動くのだろうか?を調べてみた。
中国アニメビジネスの近況
中国マーケットは徐々に拡大し、たくさんの金が脈動している。これを担保するのが日本の10倍以上の14億という人口である。彼らが片手にスマートフォンを持ち、様々な映像作品を見、ゲームをすることで市場を回している。その中で、アニメはコンテンツの一つとして大きな役割を持ち、大きな利益を出している。
www.itmedia.co.jp↑ではアニメ関連産業の実体を上手く記事にしていて、コンテンツ産業で圧倒するテンセントの「騰訊視頻」に続いて、オタク系のbilibili動画の伸張について書かれている。
記事では、作品のトップ視聴数は「一人之下 the outcast」の4億7200万再生で、「小林さんちのメイドラゴン」や「エロマンガ先生」が7000万再生となっている。一人から10円いただいたとしても、エロ漫画先生単体で7億円の純利益がでる。うまうまな市場ということになる。
日本側の近況
さて、このチョコレートにハチミツをぶっかけたような甘い市場に対して、もちろん日本側も手を伸ばそうとあの手この手を使っていて、近年中国側もその誘いに応じて手を結ぼうとしている。
例えば、上で書かれたテンセントであるが
www.asahi.comのように担当がコンテンツの買い付けにきたり、日本側も
www.musicman-net.comエイベックスグループが足掛かりとして、子会社を中国に開いて音楽、アニメ、アイドル関連の事業に本格的に乗り出そうとしているなど、今年に入ってかなり本格的な動きが日中両国で活発化してきている。
さらに政府系においても、中国側から北京漫画アニメゲーム産業協会、日本側から映像産業振興機構(VIPO)が、かかしとなって音頭を取り、経済産業省からの補助金が付くようになった。
つまり、今年に入って急速に、アニメを含むコンテンツ産業輸出に日本側が本腰を入れてきた、もしくは表面化したのである。
なぜ今になって中国が間口を広げたか?
ビックなマネーが行きかう成長する市場において、金儲けに聡い中国人がなぜ日本に手を伸ばしたかというと、簡単に言えば中国国内のみではコンテンツの質も量も確保できなくなってきているからである。
絞られるアニメの量
日本貿易振興機構(ジェトロ)による調査(中国コンテンツ市場調査2017年度版)が非常に詳しくその実態を明らかにしており、それをかいつまんで出してみると、
中国におけるテレビアニメ生産量は2011年世界第一位になったが、ピークアウトして現在は量を半分程度にして、質の向上に傾斜しているとなっている(中国アニメ市場調査、項目2-10)。
また、中国国内産アニメに助成金支援や国外アニメ放映規制によって有利な土壌を作ろうとしているが、テレビの放映枠だけで考えるとギリギリの量を確保できるとしても、依然としてネットコンテンツとして見ると量は不足していることになり、増産が急務とされる。しかし、ネットの場合、PVがはっきりわかるため、評価と支払いがはっきりわかり、かなりリスキーな投資となるらしい。この辺は日本の現状と近いと言えるのかもしれない。
さらに、中国アニメ会社の95%が赤字!であり、産業がうまく投資対象として機能していないと見ていい。
上がらない質
先ほど全体として、アニメはコンテンツの一つとして大きな役割を持ち、大きな利益を出していると書き、一方で95%のアニメ会社は赤字と書いた。つまり、一極に利益が集中する構成になっていて、当たればデカいという状態であると分かる。
このことから、これからも中国のアニメの量は減ることが予想されるが、減った分資源が集中したアニメの質はどうであろうか?
先ほどの中国アニメ市場調査(項目2-12)よると
2016年中国国産アニメ(子供向け)は「熊出没」が独り勝ち
2016年中国国産アニメ(子供向けでない)は「中国惊奇先生」と「尸兄」が人気を分ける形になっている。
あちらのサイトに直接見に行ってもいいし、youtubeに大量の転がっている(違法が合法かよくわからないのURLは貼りません)ものでも、確認する方法は多い。いずれにせよ、日本にいながら、こういった作品群を視聴することができるので、見てみよう( ^ω^)・・・
いろいろ言いたいが、実際見てみた感想は控えめに言って「糞」の一言に尽きる。
金儲けしようしている奴らはこんな記事を書いているが、実体のレベルは悲惨といっていい。この意見を疑問に思うのなら、これら中国産アニメを5分でも視聴していただければはっきりわかる。パクリ、適当、大げさ、差別てんこ盛りである。
海外ものを取り込まざるを得ない現実
アニメと同じように実写のドラマや映画でも同じような現象が起こっているようで、下手に質を上げようとすると赤字だし、かといって粗製乱造しても誰も見てくれず、やっぱり赤字という泥沼に陥ろうとしているのが、現状の中国コンテンツ産業と言える。
建前として、選択と集中ということで、数から質へ転換していると言っているが、本質はアニメを作る人たちの質は向上せず、儲からないので他の産業に人材が流出してしまっているといえるだろう。
このことから、徐々に舌の肥えつつあるお客を満足させるためには、赤字覚悟で作品を作るか、既成の海外ものに手を出すしかない。
上の記事では、表面的には日本のアニメーターが引き抜かれて大変だ~となっているが、すでに中国内で赤字覚悟で事業を走らせている場合、賃金の未払いもあるだろうし、一人二人抜いたところで制作として身動きは取れず、チームごと引抜かなくては作品にならないので、方向としてはアニメ制作は日本のスタジオに外注や共同制作(ほとんど日本で作成)する形になるだろう。
この点からも、中国においてちゃんとアニメを作れる人員が十分おらず、誰でもいいから、高い金を払ってでも(空手形を切って)作り手を確保しないとやっていけないほど厳しい現実が透けて見えてくる。
儲けるために中国人の投資家も必死なのだと思った。
どうやって中国内で放映するか
では、利益を上げるために、日本のアニメを放映しようとするとどういった手続きが必要であろうか?
日本であれば、制作会社に頼んで、お金を払って1年後には完成、それを各メディアで集金すればいいが、中国ではそうはいかない。国産アニメ優遇策もあるし、どうしても越えなければならない問題がある。
政府検閲である。
流石共産国家である。政府のお墨付きを得て初めて放送することができる。
テレビアニメの場合、まず業者に対して、中央の承認、各地の人民政府の文化行政部門に申請し、書類の提出、審査、許可書発行となり、もう一回中央の承認を得て、その上で、各作品の審査と許可が下りることになる(国家新聞出版広電総局)。
さらに、数年おきに政府の気分で発禁が行われ、突然放映許可が取り下げられる。
例えば言えば、ソードアートオンラインは発禁、名探偵コナンは有害アニメになるらしい(ほんとだよ)。
調べてみてわかったことは中国の市場は皆さんご存知のようにとても広大で、様々な可能性を秘めていて、とても魅力的であるが、その一方で、ものすごい競争がひしめいていて、その中で利益を出すことは非常に難しい。
さらに常に政府の日和見的な見解があるため、安心して作品の制作に携われない状況があり、常態化した独り勝ち、利益の総取りが業界の風通しをとても悪くしていることが分かる。
だから日本アニメなのである
現在の中国コンテンツ産業はとんでもなく賭博性の高い市場になっていて、利益を安定して生むのは難しいように見える。しかし、これを逆の視点で見てみると、何らかの方法で質の高い映像作品を安く商品を仕入れて、放映することさえできれば、莫大な利益を得ることができる。
ここまで読めば、もうわかっている人もいるだろうが、そこで日本のアニメの登場なのである。ある程度の品質の確保、しっかりした納期(中国産と比べて)、数十年の厚みのある作品量、多くの高度な作り手、すべて今の中国市場に突っ込めば、莫大な利益を中国の資本家と日本のアニメ業界にもたらすだろう。
・・・そこで今回の「二度目の人生を異世界で」問題に戻ることができる。
(その3に続く)
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