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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

著作権と2次創作はこれから折り合いを付けられるのか

 ヘッポコ絵描きなりに2次創作のこれからに興味がある。著作権を軸に、同人の歴史を振り返って、出版社の動きを見ることで未来を占ってみる。 

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(今週の一枚)決戦前(pixiv

 

 

同人の変化

 様々な面でグレーな線引きが同人関係ではされているが、それが許されてきた遠因は「金を儲けない趣味」と「貧乏漫画家の避難場所」といったファンの問題と業界の問題が共立しているからではないかと思う。ファンであり作者である。権利者であり実は違う。そういったあやふやな線が徐々に明確化してきたが、それを著作権と金儲けの点で簡単に追ってみようと思う。

 

著作権と裁判

 2次創作で物販をして金儲けをするスタイルは有名なコミックマーケットを中心に1970年代から徐々にその地位・知名度を上げてきたが、実際のキャラクターやストーリーなど著作物にかかわる権利としては依然としてかなりグレーで、それが度々問題になってきた。

 有志が作った同人誌で起こったドラえもんの最終回問題や原作者と漫画家または東映動画の間で起こったキャンディキャンディ事件などをみれば、儲からなかったものを利益化する際にあやふやだった権利・契約関係が常に問題化するようである。

 最近では特に漫画やアニメのキャラクターを2次創作のエロ同人に登場させて、キャラクターの知名度の利用が問題(薄い本を描く、同人ゴロ、イナゴ作家)になってきて、同人の志みたいな集いがいつの間にか脱法のビックビジネスになった時点で、出版社が警告を出したり、ガイドラインを作るようになり、悪質な場合、上記のドラえもんのように賠償を求めて民事裁判をちらつかせるようになってきた。

news.livedoor.com

 このエロに関しては、個人が出版する権利とキャラクターや作品の著作権の兼ね合いで、どこまでをアウトにするかと言った明確な線引きがなく、作品によっては2次創作全般を禁止したり、場合によっては宣伝のために是非作ってくださいと言った真逆の対応を示す権利者もいて、結構こんがらがった状況に来ていると思う。

  つまりはっきりとした業界全体のルールがなく、作品によって利益化の方法が違うため、エロを描くなら作品ごとに調べてからかいたほうがいいよ~と言った出版社もしくは作品ごとの独立した問題になっていると思う。

audiobooktimes.febe.jp

 

マチュアイズムとマネタイズの変化

 グレーな著作物の2次利用は日本では「金を儲けない限りよし」という風習(というかお目こぼし)があり、所謂アマチュアの趣味と言うものが許されて来たのではないかと思う。現状ではその風習が作品のファン層を形作り作品自体を支えるいくつもの小集団を作り出しているという一面がある。また、その中でも派生作品やキャラクターを二次利用した作品はその物語だけでも十分新規性のある新しい作品が生まれるようになり、また別のコミュニティが生まれてきた。 

www.pixivision.net

 画像と音楽を組み合わせたアニメMADFlashアニメは1時代を作ったし、2chのスレッドではアスキーアートを使った様々な遊びが生まれた。

 そんな中で、優秀で人目を引く作品は存在し、それをどうやって金儲けにしようか…させまいか…という綱引きがずっと続いてきており、2021年現在、徐々に金儲けの方向にシフトしている過程にいると思われる。

 例えば、のまネコは2chで生まれた著作権のないキャラであり、やる夫、ギゴ猫やモナーなどを含め誰もが使える状態で遊ばれていたが、それを使って音楽配信をして権利主張したavexは一時「オタクの敵」となり、フリーのものを安易に権利化しようとすると不特定多数のユーザーのバッシング対象となることもわかってきた。

 

 そういったコンテンツに目を付けたのはメディアワークスエンターブレイン(現カドカワグループ)と言った出版社だった。上記ののまネコ騒動のようにコンテンツを無料で遊んでいたギーグたちにとってみれば、みんなで作ったコンテンツが商売人に奪われようとしたという強い忌避反応を示すし、もう少し言えば、当時、遊びと仕事の境界があいまいなネット空間で、「2ch由来の多くのコンテンツは利益化すべきでない」という全体の意思があったように感じる。これをアマチュアイズムと言ってもいいし、2ch的には嫌儲主義と言えばいいと思う。

 しかし、そういった中でも、ゴブリンスレイヤーまおゆう魔王勇者と言った制作者が商業誌に前向きで人気のあった作品が徐々にメディアに露出するようになったし、小説家になろうやpixivと言ったサイトを経由して独立した作品を作ってたくさんの人に気軽に発表する機会が大幅に拡大することで、プロへの道が開けたことも大きな変化だと思う。

www.youtube.com

 そういった作品作りがいつしか「みんなで遊ぶこと」が「誰かに認められること」に変容してゆき、認められて価値を見出すことが正しいことになったのはここ5年以内の大きな変化だと思う。主原因ははっきりしないが、大きな起点として、匿名の2chが廃れて個人IDを持つTwitterにシフトしたこと、ステマ騒動、vipの受け手であった脱法性の強かったニコニコ動画がAMVを排除してカドカワとくっついたこと、同じことをやってyoutubeでお金持ちになることができるようになったこと、制作者全体が高齢化したことなどが考えられる。

 また、国家間においての取り決めが近年著作権まで及び、著作権法が改正されるようになり、明確に権利を所有している権利者が明確に有利になる大きな取り決めがあったことも同人文化と商業利益の関係を大きく変えるきっかけになるのだろう。

www.itmedia.co.jp

 たった10年だけど、ものすごい変化が起こったように感じられる10年なんだと思う。

 

出版社の変化

 ここ20年、小規模な同人誌が商業的に利益を出すようになったが、大規模な商業誌は徐々に衰退をしてきた。所謂出版不況である。新聞社の押し紙問題と同じで、再販制度による大量販売・回収の自転車操業的出版方法が足を引っ張って、本の販売自体がリスク要因となってきた。しかし、それも最近になって2極化、勝ち組負け組に分かれるようになってきたと思う。

 これは利益に直結する著作権管理を見るとよくわかる。多くの漫画・小説作品はその作者に著作権に帰属(もしくは出版社と折半)するけど、映像化やグッツ化する際は新たにたくさんの権利者ができるので、国内の販売展開を見ると権利関係の管理法のシフトは判例もあり一進一退と言うのが実情だと思う。

www.itmedia.co.jp

 これはおそらく出版社や有名漫画家の問題ではなく、著作権に緩い日本の文化と同人業界が足かせになって、「描く自由」を優先するあまり、本来の作者の権利と利益がおざなりになった結果になっているためではないかと思う。

 この中途半端な状況が漫画村などの違法ダウンロード・リーチサイトに繋がっている。商売という点で見ると、作家も出版社も大損しているというのが現状であろう。

www.businessinsider.jp

 一方で、海外展開でこの権利を見ると結構しっかりしているのは小学館/集英社ではないかと思う。マルチメディア化した作品に関してはShoproを窓口にしてグループ全体(+委託キャラ)の管理を行って、貸し出しや仕様ルール規定などをしっかり一元管理している。また、実売の販売展開に関しては窓口にビズ・メディアを使って、少年ジャンプ英語版の無料公開や他社製品の委託販売など、かなり戦略的な販売展開をしており、日本のコンテンツビジネスの旗振り役になっていると言っていいのではないかと思う。

www.shopro.co.jp

 注目すべきはMANGA Plus by SHUEISHAなどを使った無料配信と有料化の思い切った線引きで、先ほど書いた日本国内の同人関係のぐずぐずを見ると全く違ったビジネススタイルを完成させつつある点であると思う。

 敢えて儲かっていない出版社は出さないが、過去に作られた作品や管理のイマイチな漫画は無料でばらまかれ、制作販売に無関係な第三者の利益になっているが、新規で作った作品に金をかけて権利を縛った作品は逆に大きな利益化に成功しつつあるというのが現実なんだろう。

 これが功を奏して、集英社は10年間で増収増益を続けたとみることができる。

www.shinbunka.co.jp

 

出版と同人の著作権における齟齬と問題

 (勝った作家)と(勝ちつつある作家と出版社)を見ると、意見には大きな溝があり、その溝はどうして大きくなっているかを考えると、漫画にしろ、小説にしろ、誰に読んでもらうか(見てもらうか)と言う作り手の視点の問題に行きつく。

www.nhk.or.jp

 特にネットが隆盛になる前の作家さんや同人界隈の多くの視点は漫画雑誌やアニメを実際に買う比較的目の届く範囲の日本人に向いている。一方で、現在進行形の作家やコンテンツ利益化を目指す出版社は海外展開や漫画を読まない層もターゲットにしている。

 日本人がここ20年で急減して高齢化することを考えると、儲けの面では、小さい友達範囲で楽しく共有できるコンテンツとしての漫画・アニメはこれからさらに儲からなくなる。一方で、ルールを決めてギスギスするがグローバルにマスなビジネスを意識したコンテンツは大きく儲けることができるのだろう。

news.yahoo.co.jp

 つまり、今後は「みんなの書く権利」を第一に考える人は、商業であっても、同人であっても自らの利益すら確保することが難しく、余裕のない人から退場することになると考えられる。

 現状争われている(いた?)表面的な問題は著作権管理と個人が自由に創作する・閲覧する自由の対立に見えるが、実態は本来稼げるはずであった利益が全く違う人に盗まれており、それを渡すかどうかという問題なので、それに気づいた人は生き残れるが、それ以外は利益が出ず死ぬという結構シビアな壁にぶつかるのだと思う。

 本来はポンコツ法案だろうとさっさと施行して徐々に改正すればよかったし、作家(組合)がしっかりと契約書を読み、出版社契約前に管理条項を整理すればいいのだが、左翼的思想や政治的アジテーションに煽られて大損しているという面が著作権と法律改正問題の本質ではないかと思う。

www.bunka.go.jp

 繰り返すけど、これで食っていこうと思うなら国内でどうこうするかと言う視点より、今後は海外を含めてどう利益化するかと言う視点やニッチなターゲットがビジネスの中心となり、それを理解して作品作りや利益化をする必要があるんだろう。

 

 

集権化の成功と問題

 「みんなのもの」から「作者が与えるもの」になりつつあるメディアは大きく利益化する金の卵になっている。いくつも事例があるが進撃の巨人鬼滅の刃と聞けばわかりやすい。一時期に大量のコマーシャルをして何でもかんでも進撃、しんげき、シンゲキとなり、寝ても覚めても鬼滅、きめつ、キメツと言うのは、権利者がしっかり出資して、大量の資金を市場に一気に流す古典的なブームの作り方だし、海外での仕掛け方はSEOを駆使して中国圏ならマスコミ攻勢だし、東南アジアなら権威付けになるし、北米圏ならサクラ攻勢でバッと盛り上げる。

www.bbc.com

 これがある程度うまくいくのは、当然大量の資金運用と集権化によるフットワークの軽さが理由であり、それができた作品は大きな投資が大きな利益になって帰ってくるとてもいい例なんだろう。

 しかし、そこで割を食らうのは零細やイナゴを含む同人業界となる。宣伝の資金を持たない出版社は現状のままだと簡単につぶれるだろうし、2次創作は常に裁判の可能性を持つ。当然、今まであったそういった小粒な商売は業態を変えざるを得ない。また、ヒットしているものは必ずしも日本人向けのものではなく、作品が海外を意識しているので、身近な漫画ユーザーにとって果たして面白い作画になるかどうかは疑問が残る。戦略としては、抱きつきを辞めてニッチを攻めるか新規開拓になる。

 そのため、一から作品を作った人が正当に評価される一方で、同人誌や2次創作は一定のルールの元で表現の幅が少し小さくなった作品になってゆくのではないかと考えられる。その小ささがどの程度になるか、いいのか悪いのかわからないけど、利益の流れが変わることは止められないのではないだろうか。

 

結論

 誰に売るかをしっかり意識した人はより大きな利益を得るようになり、1次創作は大きく発展するだろうし、その中で趣味の2次創作は広がり続けるだろうが、現状幅を利かせている準商業としての2次創作はドンドン厳しくなる。

 頑張って自己コンテンツの創作をした方が長期的には良さそう。

 

終わりに

 調べてみると、作者が誰を見て商売をするかで意見が大分違っていたことは驚きだった。逆に言えば、ターゲットを決めて作品作りをすれば、利益を度外視している限り、下手くそでも評価してもらえる隙間はまだまだあるかなぁと思った。

 …まぁ、ボチボチ作っていこう(^ω^)

 

 

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