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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

イケてるプロ、儲かるプロになろう

絵に関するオファーを月一くらいでいただくことがある。時間がない中でなかなかそれに応えられないが、絵のプロとはどういうものなのか調べてみた。

 

 

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(今週の一枚)大会は雨で順延(pixiv

 

 ポンコツなりにある程度の絵を作れるようになると、ありがたいことに個人や法人から「○○しませんか?」や「××作ってもらえませんか?」みたいなものが届くようになる。また、「プロになりたいんですぅ~」と言った悩みを相談されることもある。知らないことを無闇にどうこう言えないので、困惑することが多い。そこで素人の自分がプロの作り手や経営者、関係者と酒を飲みつつそれとなく話を聞き、その内容を誰かの参考になればいいなぁとまとめてみた。

 

※よもやま話のまとめなので、話半分で聞いてもらえれば嬉しいです。

 

プロって何だろう

 プロフェッショナルと言えばかっこいいけど、それは何かと聞かれるとはっきりとした定義でこの言葉を語ることはできない。大枠として何か行動の対価を得る人のことを指すなら、ほぼすべての人間がなにかのプロである。そのため、その幅を狭めて、自分の創作やサービスで「お金儲けをする人」のことをプロということにする。

 インターネットの発達によって、しかし、この「お金儲け」のスタイルは大きく変化しており、物を売るという行為がものすごく容易になってきている。絵に関して言えば、それこそ5分で作ったスタンプをLineで売ったり、サブスクリプション(毎月定額払い)としてpixivFANBOXfantiaPatreonなどのお布施型サイトで少額を広く浅く求める方法もあり、直接依頼型としてskebcoconalaなどで事務所を通すことなく依頼することもできる。そのため、特に高い技能がなくてもパソコンやスマフォがあれば簡単にその「お金儲け」をするプロが誕生する。

 また、販売する商品を見た場合、動画配信であれば投げ銭もあるし、中国の現代アートを見れば、落書きを1億以上の値で売買しているところもある。行動に対する対価や物の価値が定まらず、また、デジタルデータの場合は無限にコピー販売ができるため、ほぼ無価値だったものがブームに乗った瞬間に儲けが何千倍にもなる可能性もある。そのため、純粋にものづくりをする人をプロと言う定義に落とすことが難しくなってきている。

 …ということで、この記事では一応のプロの基準として、自分の作成したものを個人法人問わず販売し、それによる年収が20万円以上(税金の申告が必要…つまり、国に一定の収入と認められる)の人のことをプロフェッショナルということにする。

 

商業的プロの基準

 高い芸術性を発露し、何かのコンクールで賞をもらったり、素晴らしい作品を高い値段で売る芸術家もいるが、ほとんどの「プロ」は日銭を稼いで生活をしている。よくHowTo本やまとめサイトなんかでは○○くらいの上手さがプロの基準です…とか、××くらい上手ならおいくら稼げますよ~なんてものがあるらしいが、実際はそんな決まりはない。もちろん、一つの基準にはなるが、それは成功した人を基準に取っているだけで、作品の質で中央値を見れば作品の美しさや訴求性なんかは実はプロに絶対必要なものではないことが分かるだろう。

 これは作る側の理論ではなくて、経営や依頼側のプロジェクトとしてみればわかりやすい。

 例えば、ゲームを作りたいと思うと、それにまず必要になる絵は「コンセプトアート」、「キャラクターシート」、「バックグラウンドアート」や「パッケージアート」などで、作品の核になるものは一流で有名な作家さんにぜひ依頼したい。しかし、それ以外のモブキャラや一過的に使用する背景、シーン繋ぎの絵などははっきり言って使いまわしであったり、作品の世界観を壊さない程度の質であれば誰が作ってもいいし、金を出す側としてはできるだけケチりたい。

 また、ネットコンテンツを含めて漫画や雑誌の紙面を考えると、フロントを飾るのはかっこいい作画の絵やこだわったフォントの一枚絵、美男美女の写真が欲しいが、それで全部埋めるには時間的、資金的都合でできない。そのため、残った過半のスペースを適当な内容で埋めてくれるライターであったり、一筆書きな安価な漫画が必要となる。

 つまり、商業的依頼としては、最高品質の有名絵師はもちろん必要であるが、その他は無名でもいいし、あまり上手でなくてもいいし、極端な話、枠を埋めて金を払ったという事実さえあれば何でもいい。

 アマとプロを分けるものは色々あると思うが、はっきりそれを分ける壁は上の例のように、役割・自分のポジションをしっかり理解して、納期をある程度の品質で絵を描いてくれる人こそプロとしての「上手さ」となるらしい。

 もちろん、こういった依頼側の要求を満たしたうえで、さらに一つ上の作品性を出してくれる人は一流の階段に乗ることができる。しかし、一般的にライターであれ、イラストレーターであれ、構成作家であれ、編集者であれ、消費財を生産し続けるライン工の一人なんだという意識が大前提になる。

 そこから3年なり5年なりキャリアを積んで、どういった単価でどういう地位の作品を作りたいかと言うイメージを自分なりに持ち、技術を積むことが商業的ライン工から出るうえで重要となる。使う側はその技術を部品と見ており、どう組み合わせて商品にするかを考えているから、作り手は如何にそれを高く見せるかが一流のプロへの一歩なんだろう。

 

儲からないプロの愚痴と答え

 アマからプロになってみると、思った以上に儲からないという話をよく聞く。なんでやろうなぁと各種別で話を聞いてゆくと、作り手の多くが致命的に誤った認識をしている点に気づく。それは作品を作ることと作品を売ることを同じ技術と考えている点である。

 特にフリーでやるなら、作品を10時間で物を作るなら、10時間以上かけて宣伝しないといけない。時間がないなら、その10時間を時給2000円と考えて2万円以上かけて宣伝しないといけない。絵の技術と絵を見せる技術という別の能力をそれぞれ磨かないといけない。どちらかだけだとうまくいかない。

 いいもの、美しいもの、心を打つものを例え作れたとしても、それは自分の心の中の満足であって、他人の琴線に触れる芸術ではない。もうちょっと言えば、雑な絵であっても、見た人がいいと思えば値が付くし、どんなに技巧の限りを尽くしても、誰も知らなければそれはゴミである。成功をしている作家さんと話すと、技術を付けつつ多かれ少なかれ物をさばくルート(人脈、販売網、ファン)を持っているし、その販路を常に広げようとアンテナを高くしている。逆に言えば、それを持たない人はプロでやっていくのは厳しいのではないかと感じた。

 いずれかの技術に興味がないのなら、事務所に所属したり、個別に代理店に依頼したり、各メディアに金をかけて自作を宣伝したりしてそれを補えばいい。体力や時間的余裕があるなら、出版社などに持ち込みをするのも王道だし、関係者個別に突撃することもいいらしい。少なくとも名前は覚えてもらえるらしい。

 創作には「絵の上手さや流行」と同様に「営業の上手さや効率」と言う技能が存在するとも言えるが、人見知りで…兼業で…などなど、個人の能力には限界が存在するので、それを補う専用のパートナーと組んで売り込みをする有名なプロも結構いる。

 大切なことは作品が売れないのは絵がクソなのではなく、アピールがダメなことを知り、それを改善することである。作品がクソでも糞なりに使いどころがあるし、ビジネスに作品をどう使うかは考え方次第なんだろう。

 

無料と有料の境目

 営業をしている人たちに話を聞くと、その大変さはよくわかる。ネット隆盛でヒット作を作るのはとても難しい。集英社や日テレのように漫画やアニメ・映像とグッズを制作から販売を経て宣伝まで人と金をかけてがっちりと作り込むことができる体制があるならいいが、普通の出版社や制作会社にそんなノウハウや余力はない。増してや、個人ではそれをやり切ることはほぼ不可能だろう。

 そんな弱肉強食の話を聞くと、マーケットを考えるうえで個人で知っておいたほうがいい点はいくつか見つかる。その中で最も大切な点は「無料で見る人」と「有料で見る人」を選別することであると思う。

 ふるいにかけてどちらかを差別しろと言うのではなく、商売を考えると分けて対応しろということである。

 ハッキリわかっていることは無料で作品を見る人のほとんどはどんなに自分の好みに合っていても金を払わない。一方で、少額でも金を払う人は多少自分の好みから外れても金を払うということである。

 具体的な数字を言えば、無料で見る人1000人のうち、その商品を買う人は3人以下(0.3%)であり、有料で見る人100人のうち、さらに商品を買う人は5人(5%)程度である。当然、場合分けはいるが、単純に有料・無料層で見ても効率が10倍以上離れているので、プロとして商売を考えるとちょっとでも金を払う集団に営業したほうがいいのはわかるだろう(数値は概算、品目で変わる。気になるなら宣伝や広告の本を読むべき)。

 

 その点で考えると、例えば、同人作家として作品作りをするなら、もちろん無料で公開して寄付なりを募ればいいが、よっぽどの何かがないと普通は儲けにはならない。一方で、有料で公開するなら、ある程度の質や丁寧な対応を必要とするので、緊張を強いられるし、プレゼンの仕方も異なる。両者をうまくバランスするのはやっぱりセンスが必要だが、この境目が存在するということをしっかり覚えて使い分けることはプロとして重要なことになる。

 とても雰囲気作りが上手な人はファンを集め、少額(10円でもいい)をいただき、そのメンバーに対して千円なり万円なりの商品を売って利益化するが、そこまでの集団を作るには何年もかかるし、安定的に利益化(必ず問題が起こる)するには何人かで管理チームを作らないと結局破綻するらしい。

 少なくとも言えることは無料で自分の作品を見る人はお金を払ってくれないということを知るべきなんだろう。

 

どんなプロが好かれるか

 商業的な絵に関して話を聞くと、売る側買う側両方で結構えぐい話がたくさんある。ただ、そんな津々交々の業界を見ていると、波を乗り切っている人に必要なもの・好かれるポイントが見えてくる。

 

具体的には

1、作業を効率化できている

2、少なくとも3ジャンルの絵が描ける

3、契約後にごねない

ではないかと思う。

 

 1に関して、プロとしてある程度儲けている人は一品物を作る能力があると同時に、量産化ができるということが儲けのネックになる。例え似たような作品であっても大量に作ることができれば一定の評価につながる。

 一番いいのが依頼側が5の品質が欲しいと言って、作家が6くらいのものが出してくれれば、喜ばれて契約は続くパターンらしい(品質10段階として)。質の低いものを出すと揉めるが、8や10の品質のものを出してもお互いうまくいかないことが多いらしい。こういったビジネスは一回こっきりでなく、次にも繋がるものなので、依頼側は6なら6の品質を連続して作って欲しいし、3だと困惑するし、同じ値段で8を作れるなら当然そっちのほうがいい。しかし、継続的にビジネスを続けると、8を作ると時間がかかって作家がつぶれてしまうし、依頼側は納品が遅れてしまう。結局、どちらにとっても損となることが多い。

 そのため、大量の6の品質のものと一品物の10の品質のものを作れる能力があるとプロとして長く安定する。もちろん、大量の10を作れればいいが、そんな人はあまりいない。

 

 2に関して、「美少女描けます」という作家さんが多いらしい。萌え絵は確かに需要があるし、可愛い女の子を描くのは楽しいからだろう。ただ残念ながら、いくら需要があっても供給側が過剰なので、食い合いになり、それ単独だとどうしても単価が下げられる傾向にあるようだ。また、「美少女」の基準が各セクションや年度ごとに変わるため、ある時期に超人気のデザインでも、次の瞬間一気に価値がなくなることがあるようだ。そのため、綺麗な女の子がかけてもプロとして商売を維持するのはよっぽど特異的で美しくないと厳しい。これは他のジャンルにも同じことが言える。

 その上で、少なくとも3パターンのジャンルを描けることが重要となる。キャラは美少女やおっさんや動物など、機械や武器や背景に沿った各種オブジェクト、背景美術や抽象イメージなどのバックアートなど何でもいいから、絵の彩りとしての幅が欲しい。依頼側も美少女ばっかりではなく、その他キャラパターンやオブジェなどの依頼をまとめて出したい場合もあるので、注文しやすくなる傾向がある。

 一度、自分の絵のポートフォリオ(依頼側にこんなん出来ますよと言うサンプル集)を作って自分の絵の幅を見て、パターンを増やすことがプロっぽいらしい。

 

 3に関して、契約前にごねるのはいい。…と言うか、しっかり詰めないといけない。納期や単価、やり取りの回数や権利の帰属などしっかり決めて仕事ができればイケてるプロになれるそうだ。ただ、一旦契約書に判を押して、その後にどうたらこうたらされるのはとてもまずいらしい。感情的なものもあるが、権利関係の取り扱いや利益配分などでもめると、法人としてリソースを次に使えない点が問題になり、売り物の商品に傷が付くことがとても嫌なんだそうだ。

 もちろん、作り手がこれ以上その会社や依頼主と関係を続けないならどんどんやればいいし、支払いを含め不当な扱いなら戦えばいい。しかし、狭い業界でそういった噂や廻状が広まると仕事は取りにくくなる場合がある。それを回避する基準として、その会社の社会的評価と照らし合わせて揉めるかどうかを選んだほうがいいようだ。その際、担当者がクソなのか、その会社がクズなのかを見定めて戦う相手を決めないとしっぺ返しがあるそうだ。

 泣き寝入りは奴隷の証だし、不当なクレーマーは業界の敵になる。状況を見て動くことがイケてるプロなんだろう。

 

終わりに

 自分も色々やりたいんだけど時間が…ということで興味はあるが受けずじまいが多い。そんな中で、のんびり半年ほどかけて、酒を飲みつつ10人ほどに聞いた程度の内容なので、不正確な点や誤りもあると思う。だからその気があるならご自分で一回調べることをお勧めする。

 まぁ、色々やりようはあるので、興味のある人は一つ依頼を受けてたり、申し込んでチャレンジするのもいいし、たとえ失敗してもいい経験になるかなぁなんて思った(^ω^)

 

 

 

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