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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

風の谷のナウシカ的作品を考える

自分の作品内容の質を上げたい。そこで一時期はやったポストアポカリプス的な漫画・アニメ作品群の内容を分解してどう面白くしているか考えてみる。

 

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(今週の一枚)寝坊助な弟子を待つ師匠(pixiv

 

 

ポストアポカリプス的な作品はそれこそ山のように存在するが、SF寄りで比較がやりやすいものをチョイスしてみた。敢えて古めのものを入れたので、ネタバレ多めになっているので読む方は注意してください

 

風の谷のナウシカ

 この作品は映画と漫画で作品内容や言いたいことが全く違う。映画では厳しい環境で強く生きる少女が様々な争いを経て成長し共生するという話だし、漫画ではさらに争いは続き、最終的には造物主から独立するという話になる。

 漫画版の作成が大幅に遅れてしまったため、途中の話をムリヤリ映画化したら大ヒットしたらしい。中途半端な物語であっても話が成り立つのはそのバックにある設定がしっかりしていたからではないかと思う。

 ネタバレになるが、この話の肝はナウシカ達が実は人間ではないという点である。毒の森の中でも生き、怪しげな環境でも普通に生活できる。これは彼らがその環境でも生存できるよう作られた模造品だからで、環境が改善するとともに処分される予定だった。ナウシカ達の死の定めは毒の森やオウム達蟲の脅威や模造品同士の争いにあるのではなく、それら脅威は眠りについた本物の人間たちのためにあるという絶望である。

 女王となったナウシカはこの事実に際して、「戦って生き残る」という選択をする。少女が女性として自立し、劇は閉じるが、ここからは色々なことが想起できる。人生とは…環境とは…などなど、物語を読むと自分の状態と照らし合わせて色々考えさせられる。

 では、なぜ考えることができるかというと、しっかりした舞台と、その舞台の秘密、キャラクターの設定とそのキャラクターが調和しており、その場面ごとにしっかりと自分の立場を理解して自分の言葉をキャラがしゃべっている点である。この立場ならこういうことを考えてこういう行動をするというものがしっかりと練られているので、場面ごとに感情移入できるし、「そこでこう言うかぁ」といった感動に繋がる。

 しっかりとした設定とキャラクターの整合性こそこの作品が名作と言われるゆえんなんだろう。

 

エヴァンゲリオン

 超ビックタイトルだけど、ではエヴァンゲリオンって何?と言われるとよくわからない人が多い。物語が進むとぱっと見意味不明な情報が波のように襲い、視聴者に大量の前知識を要求する迷作になっている。この作品後には所謂「セカイ系」なんて言われる作品群が量産されて一つのジャンルになったくらいの人気だ。↓で大体のあらすじを書いた。

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 あらすじをさらに簡単に書くと、ロボで悪いやつを倒したらロボと主人公シンジが神様になって、何度も世界を作り替えて、最終的に自分に都合のいい世界を作る話である。

 あらすじを見るとくだらないが、多くの人を虜にしたのはやはり理由がある。かっこいい戦闘シーンが充実しているが、おそらく一番のポイントは「どうとでも解釈ができる設定」ではないかと思う。風の谷のナウシカと比べると、この作品はものすごく設定がゆるゆるだ。がばがばといっていい。ぼんやりとした概念と意味不明なセンテンスやワードが並び、これをどう解釈しても論理的な答えに行きつかない。しかし、これがとても面白くて、答えを見つけようという探求心をくすぐり、聞いたこともない言葉が中二病を誘う。

 また、一見、ポストアポカリプス的ではないが、話の最初からすでに世界が作り替えられた可能性もあり、シンジが神になる前の世界がどこにあるのかわからないようになっている。

 また、非常に宗教的な側面を持っていて、各所に思春期の少年少女が苦しむシーンが埋め込まれ、ドンドンキャラクター達が削られて行く様が自分のことのように苦しくなり、続きが気になる。人は悩み苦しみながら人生を進むものだが、その悩みを人間関係に絞って表現しており、ウブなオタクをファンにして、カルト化させるには十分な攻撃力を持っている。

 つまり、瞬間的なカッコよさや表面的な絵・動画の印象的なシーンを使って、日ごろなんとなく感じている不安などの強感情を動物的に頭の中でフラッシュバックさせることで視聴者の記憶に作品を埋め込む作りになっている。非常に特殊で独特な作品構成となっているからハマる人はハマる。

 

銃夢

 最近ハリウッド映画になった作品である。漫画では銃夢(無印)、LastOrder、銃夢火星戦記と続く。無印でいったん完結しているが、描き直すということでLastOrder以降に続くことになった。無印の評価は非常に高いのに対して、それ以降の作品の評価は残念な感じなので、無印について考えてみる。

 この作品の特徴的な点は登場人物が全員「ギリギリ人間」である点だと思う。主人公のガリーに至っては記憶がなく、体がなく、知り合いもおらず、残った部品が脳みそしかない。ほぼ自我のない状態から物語がスタートするので、彼女と一緒にいったいどうなるかというドキドキでいっぱいになる。

 物語はサイボーグ化したガリーを中心に回り、彼女と同じようにかつて何も持たなかった者たちが引き寄せられるように彼女と出会い、格闘バトルで敗れて消えてゆく話となっている。

 キャラクター達のドラマもすごいが、この作品の物語で最もすごい点は裏テーマ「どこまでが人間か」という点である。主人公からして元は脳みそだけである。生きるために体を改造する者、教育を受けず尊厳がない動物のような存在、栄達のため脳みそを改造する者、管理のため脳みそをチップに変えられた者、二重人格の一つの人格が自我を持つためロボットになった者。様々な者たちが登場するがいずれも「私は人間である」という強い意思でガリーとぶつかる。

 こういったキャラが生まれた原因が中途半端に管理されたザレムとくず鉄町であり、その矛盾に立ち向かうのが話の本筋となる。

 風の谷のナウシカと比べると世界観は小さいが、しっかりとした設定があり、その中でキャラクター達がのたうち回るが、ナウシカと大きく違う点はガリーを中心にして世界が回る点である。色々言うやつがいるけど、ガリーは「私は私だ」という強い思いの中で時には涙を流し、恋をして、敵を粉砕する。魅力的な設定を生かすのはあくまでそれ以上の自我を持つガリーであり、彼女の生き方こそこの物語を支える中心的価値なんだとわかる。

 

エルゴプラクシー

 この作品はヘタレの主人公とウィルスに感染した愛玩ロボ、イライラ系お嬢様の旅の物語である。世界はすでに崩壊しており、いくつかのコロニーの内側で人間は生活しているが、彼らはそこを出て様々なコロニーを旅することで自分探しをする。その中で、謎の怪人プラクシーについての秘密が明らかになってゆく物語だ。

 この作品で面白いのはポストアポカリプス的な設定をしていながら、自分探しがメインテーマになっている点である。捏造された記憶をもって旅をする主人公であるが、彼は実はプラクシーの一人である。その怪人が何故かお嬢様に引かれ、各コロニーにいる1人ずついるプラクシーと戦い、命を奪う。色々な場所を見聞きしながら、自分というものは何者かを言うことを徐々に記憶を思い出し、物語の核心へと到達する流れになっている。

 話の核心を言ってしまうと、この世界は風の谷のナウシカと同様に本物の人間によって作られた模造品とそれを支えるロボの世界ということだ。ナウシカと大きく異なるのはそのゆりかごにはそれぞれ管理者・プラクシーがおり、彼らの存在がコロニーの生命線で、彼らの死と共にコロニーが崩壊するように設計されている点である。また、模造品たちにはそれぞれの人生があり、ロボにはロボの悩みがあり、プラクシーにはプラクシーの苦痛が存在する。それらがついに来たはじまりの鼓動(地球環境の改善)によって露わになってゆく。

 主人公エルゴプラクシーは愛する別のプラクシーと会えないことに悩み職務を捨てて逃げた。その神を求めて模造品たちがあたふたして生まれたのが、お嬢様というプラクシーの偽物(主人公が愛したプラクシー)というわけだ。

 つまり、この作品の中心は「生きる悩み」なのではないかと思う。どんな権力や力を持っても、それは儚く、どんなに求めても得られるものはあまりない。そんな中で、どう生きることと向かい合えばいいのかを問う作品と言える。

 ちょっとした哲学的な話であるが、我々は銃夢ガリーのように強い自我を持たないし、エヴァのシンジのように絶対的な力もない。だから、どう生きるかを考えるうえでは心引かれる作品なのではないかと思う。

 思春期に感じる悩みを階層的に見せることで、悩みの種類や立場による違いを見せることができ、それを支えるのがポストアポカリプス的な世界ということになる。

 土台となる設定を上手く使うことで作者が表現したいことを表現できるのはうまい方法だなぁと思った。

 

まとめ

 各作品を掘り下げていくと、大切なことはその作品の世界観と設定をどこまで詰めるかという点とその中を生きるキャラクターがどう感じるがという点が重要な要素だと分かる。その中で、何を中心に話を作るか考える必要があるのだろう。

 また、見てくれる人を如何に引き付けるためには謎(話のフック)が重要であり、その多くは個人の感情や内面に起因するものを入れることで話としてまとまりを得ているのではないかと感じた。

 つまり、物語を流れるように進めることも重要だけど、その物語の中で読者に対して「あなたはどう思いますか」という問いかけができて初めて一流のストーリーになりえると分かる。そのさじ加減一つで名作になるか迷作になるかが分かれるのかもしれない。

 

終わりに

 ごちゃりと書いてまとめたけど、じゃあ小説なり脚本書いてみろよと言われてもなかなかできるものではない。

 やっぱり物語を作る人はすごいなぁと改めて思った(^ω^)

 

 

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