安倍氏の政策も行き詰まりを見せる中で、ネトウヨビジネスのしのぎにもそろそろ限界が見えてきた。金儲けの筋を考えるためにもこのビジネスのあらましをまとめてみる。
(今週の一枚)五月雨に 田舎で猫と 相合傘(pixiv)
ネトウヨの定義
「ネトウヨ」というネットスラングは特に厳密な定義や使い方に縛りがないため、相手を罵倒するのにとても使いやすい。
ただ、そのままでは誰に向かってどう評価しているのかわからないので、この記事では、この言葉をネット右翼・保守派を貶める意味での略語として捕え、その中でも一度信じてしまったものをそのまま事実と認識したり、相手の意見や感情を確たる理由もなく否定できる人達として話を進めたい。
善良で自分は清く正しくありたいと願う人達と見ることにする。
ネトウヨの根っこ
当初、ネトウヨは日本万歳と韓国劣等が基本エンジンで、その後、色々と拡大・変質した。彼らの中途半端な知識と強い正義感が混ざった妄想はどうやって生まれたかを考えると根っこはテキスト掲示板にあると思う。
インターネットを通じた海外交流が少しずつ手軽にできるようになってきた。その中で、当時、一部で高い人気を持っていたエンジョイコリアと言うサイトがあった。
テキスト型掲示板に簡易な翻訳機能を付けて、日本と韓国の若者が文化交流しようという趣旨のサイトであった。しかし、当初の思惑ははずれ、お互いの文化を居丈高に誇ったり、歴史的誤りを指摘しあうような殺伐とした空間に変わっていった。
手持ちのログをあさると、たまに日本側から本当の識者や資料をそろえた人が現れていたが、大概はほんわかした(悪く言うと無知な)コメントの韓国側と、ぎすぎすして隙を見せるとこん棒で襲ってきそうなコメントの日本側がくんずほぐれつやっている様を見ることができる(著作権がどこにあるかわからないのでログは出さない)。
さて、ここで着目したいのが、このサイトで話題に上がっていた物事の多くが、ウソ・大げさ・紛らわしい伝聞ばかりで、ただの差別を助長する毒壺になっていた点である。
例えば、「トンスルというウンコを発酵させた酒を韓国人はみんな飲んでいる。」
というコメントがある。
この文章自体強烈で、これを見た人に「韓国人はウンコ好き」とレッテルを付けることができる。実際、トンスルと言うウンコ酒はある地方で存在する「噂」はあるし、実在するのだろうけど、ほとんどの韓国人はこのウンコ酒については知らない。もちろん、飲んだこともない。
matome.naver.jp エンジョイコリア閉鎖により、この流れ(日本が見下し、韓国が怨嗟する型)は固定化し、日本側では2chの東アジアnews+やまとめサイトに引き継がれ、韓国側ではネイバー社やイルベが核を維持し、ネトウヨやイルベチュンと言う集団の基礎になったんじゃないかと思う。
思想書として賛否のある名著、小林よしのり氏の戦争論が現代右翼的思想のターニングポイントだという話はよく聞くけれど、強い劣等感や歪んだ愛国心の基礎はやはりこういった掲示板で殴りやすい異国人と接したことが原因ではないかと思う。
優しいビジネス化
21世紀初頭からインターネットが一般化していくにつれて、様々な情報が容易に手に入るようになった。専門論文が自宅で読めたり、株価情報や海外のトレンドを見知ったり、たくさんの人の意見が溢れるようになった。ただ、自分を含め、ほとんどの人は大量に情報があったとしてもその使い方・調べ方を知らず、情報ポータルやまとめサイト、キュレーションページに依存し、そこにあるもっともらしい言葉を信じるのが現在の流行だと思う。
これを最も先駆けて効率化したのが2chの西村氏であろうし、わかりやすくビジネス化に成功したのがネトウヨビジネスだと思う。
ネトウヨビジネスの基本は至極簡単で、「多くのウソがあるが、ここに正しい情報がある」というだけである。非常に興味深いのは、情報の出し手の重点はその情報が正しいかどうかにあるのではなく、気持ちいいかどうかという点に重きを置いている点である。わかりやすい「敵」(外国や左翼)を作ることで物語が作りやすいし、彼らから反撃されることが極めて少ないので、ビジネスとして非常にやりやすい。
国際的現実と見ると、日本に狙うほどの価値はもうないし、経済成長しつつある東南アジアはすでに中所得国である。また、日本人は嘘もつくし犯罪もするし、技術の多くは陳腐化しヨーロッパではすでに見向きもされていない。夢に浸れないほど苦しい。
本来はこの現実を受けとめ、どうすべきかを考えるべきなのだけれど、そういった苦痛や現実に耐えられるほど我々は強くない。だから、 外国が美しい日本を狙っている。アジアは劣等だ。日本は正義の国だ。我々は世界に尊敬されている技術大国だ。という願望情報に縋り付いてしまうのだろう。
こういったキモチイイ情報を使うことで、ビジネス側はアフィリエイトで稼ぎ、「秘密情報」を売り、情報収集のためにお布施を乞う。自分の信じたい情報を補完するために金を払う優しい人達の心理を上手く利用する方法であり、商売の手法としてはなかなかうまいと思う。
また、こういった情報ドラッグに酔った人たちが現実に活動を始め、ピークを迎えたのが2011年のフジテレビデモであろう。原因は現実の不安を最大限煽った無能民主党政権なので、彼らの罪悪の情報はネトウヨを通して永遠に消えることはない。
利用されるネトウヨビジネス
ネットが情報量の多くを握り、相対的に既存のメディアの重要度が減少した。その中で、情報と通信の融合が語られ、ついには放送法についての議論がされるようになってきた。
言い換えれば、既存メディアが人の誘導ができなくなり儲からなくなったからである。また、特に人心誘導はネットの不確定情報に左右されることになった。
だから、ネットのいい加減な情報を利用できればテレビが持っていた儲けの筋を使えるともいえる。そんな新規事業の中で、分かりやすかったのがネトウヨ情報であり、それに群がる信者たちである。
分かりやすい利用例は、テレビであれば日本賞賛番組であり、書籍で言えば韓国中国破滅本であろう。
実際マーケッティングとして捕えても、各年代層に一定数の顧客が男女ともいるし、番組としても作りやすいのだから、優良コンテンツと言える。ただ、非常に皮肉なのが、民主政権擁立に血道を上げ、右派的志向の強い中川昭一元財務大臣を落選と死に追いやったテレビ新聞が、今ではネトウヨビジネスに縋り付いている点ではないだろうか。
また、この層を政治に大きく取り入れたのは自由民主党であろう。
NSC設立初期にはネット工作を失敗したり(例、活動員がいたずら電話を各党にかけニコニコ動画に上げ炎上、プロに動画を何十も作らせて民主党批判するも微妙)、上手くいかず微笑ましかったが、安倍政権によって組織化され、情報を上手くコントロールされるようになって転機を迎える。
高橋洋一氏や飯島勲氏など特定の人物のみに見せたい情報を与え、今まで新聞記者を通して発信されていた情報が、直接、政権の意図によって情報の出入りがコントロールできるようになった点は、ネトウヨビジネスの資金化に大きく付与したと言える。
政権が直接広報し、情報を流出させることで、我々は「国家秘密情報」を得ることができるのである。そりゃ面白い。
陰るネトウヨビジネス
ここ10年、海千山千の連中でも儲かってきたこのビジネスもついにピークアウトしてきた。その原因を上げる。
飽きられる
テレビにしろ、ネットにしろ一つのコンテンツとしてはいまだに破壊力があるが、そればっかりはキツイ。上記の日本賞賛番組であれ、安倍政権擁護や民主党否定記事であれ、もう10年である。いくら純真無垢なネトウヨだっていい加減飽きる。
手を変え品を変えどうにかコンテンツの延命を図っているが、政府の焦点が東京オリンピックに向いているので、2020年以降は出資が減ることからも、テレビのビジネススタイルとして一気にしぼむ可能性がある。
内輪もめ
コンテンツは儲かると色々な資本がついて一時的に隆盛を迎える。しかし、資本が増えるほど、口を出してくる人が出て、利害関係や情報の出し方で対立が生まれて大概分裂する。これは左翼の内ゲバでもそうだし、出版社でもよくある。
ネトウヨビジネスも例外ではなくそういった憂き目にあっている。
例えば、ch桜とDHCとの関係と元空将の田母神氏と選挙応援団はわかりやすく、最近で言えばKAZUYA氏と青山繁晴氏などがある。
彼らは別に目的があってくっついているわけではなく、儲かるから手を繋いでいるだけだし、しのぎが滞ればさようならであるが、それを見たネトウヨは夢から覚めてしまうのである。
現実との齟齬
ネトウヨビジネスの中心の一つとして、安倍政権の情報利用があるが、ここ数年、彼らはどうもネトウヨを切り離しにかかっているきらいがある。
リークを受けていた高橋洋一氏の経済予想は全く当たらなくなってきたし(例えば失業率と給料の関係や官邸の動き)、飯島勲はめっきりメディアに出なくなった。これは彼らに情報が渡らず、こちらに出せるキモチイイ、政権にとって有利な事実がなくなってきたことを示し、 ネトウヨに餌を与えないに等しい。
本来ならもっとショーを続ければいいのに、幕を閉じようとしている。おそらく、彼らの流す情報が数値としても体感としても齟齬が大きくなりすぎて一般受けしなくなり、一方で、利用すべきネトウヨが経年で左翼と同じように制御しきれなくなり、足切りされたのだと思う。
ネトウヨビジネスのこれから
現実が変化しても、見たいものを見、信じたいものを信じるのは人間のサガであり、何十万と言うネトウヨ顧客はマーケットとしてこれから数十年とあり続ける。
ある意味、アメリカ的なキリスト教右派に近いし、信心深い彼らへのビジネスは続く。「多くのウソがあるが、ここに正しい情報がある」という基本の立ち位置が変わることがないのだろうから、後は強敵を作ってショーをまたすればいい。
ただ、その嗜好は顧客の知識増加と共に多様化するので、わかりやすい悪を作ることは難しくなるのだろう。そのため、各グループで小さい敵を見つけてそれに対して正義を囁くような落ち着いたスタイルを作り、平均1万人規模の中グループに分裂していくのではないかと思う(過激化は事件として排除)。
これは同じような心情的傾向を持つ、宗教、新宗教の傾向から考えた。
第二次世界大戦後などの心身的騒乱を経験すると、一時的に宗教が多数生まれるが、ネトウヨもそういった信仰の表れに近いと思う。
どこの国でも一定割合の人は何らかのよりどころを必要とし、誰かに命令されたり、何かに縛られていないと生きていけない。おそらく弱さを補う方法としてそれを選択しているのだろうし、それがよく生きることの助けになれば素晴らしいことだと思う。
それがネトウヨとそのビジネスの落としどころだろう。
終わりに
人に迷惑をかけない限り、何をやっても自由ではないかと思うし、その責任は自分で取れればいいんじゃないかと思う。そういう意味で、ネトウヨビジネスはいい娯楽・信仰だと思うが、ビジネスマンは取り込んだなら最後まで面倒を見てやれよ~と思う。
ビジネスにはやっぱりアフターサービスは重要じゃないかな(^ω^)
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