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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

同人創作文化はどこに行くのか

ネットも窮屈になってきた昨今、2次創作のお絵かきや動画作成は岐路に立っていると思う。この文化はどうなってゆくのかつらつら考えてみた。

(今週の一枚)トンボも一休み(あちぃぃ🐞)

 

 エロCG作りを再開して、最近、サブカルの変化に徐々についていけなくなってきていることに気づいた。その中で変化がとても激しいのが同人文化だと思う。今回は、権利関係、新技術、個人の自由なんかを軸にこれからどうなるかを考えてみた。

著作者の権利と2次創作

 コミケの話を聞くと、その売り上げの多くが二次創作であり、その主要な部分がエロである。これは男女問わず強い傾向を示している。みんなドスケベだ。純粋に1次創作、その補完的作品やキャラクターや物語から発展した新しい世界観よりも、客はすでに目に焼き付いたキャラをどうにかしたいという動物的欲求が強い業界なんだと思う。

 これは生き物として見れば別に悪いことではないが、人間社会としてはちょっと問題がある。一つは1次創作者の権利侵害(自分の作品で勝手に物語を作られたり、求めないエロを作られると「不快」)であり、もう一つは金を儲けていいかという話(作品がヒットするために多大な資金を使って知名度を得ても、その利益が他人に入るのは「不愉快」)だ。

 以前は、創作者は何かを模写したり、物語の一部をうまく自分なりに解釈して世界観を作って、元の作者への尊敬と共に業界全体の広がりを作っていた…という建前があった。

 しかし、最近の傾向は多様化の貧乏と一人勝ちが際立つ。物を作っただけでは売れず、大規模な宣伝や大企業との協業などでヒットを作らないと失敗の烙印を押される。そのため、企業としては利益を確定するために、権利を囲って違反者には厳しくする傾向がとても強くなった。

 つまり、創作者の感情や個人の利益の保護を前提として緩いつながりのあった業界が、企業のマネタイズを前提とした一つの産業に変化した。これにより、権利関係が大きく是正されたと考えるべきだろう。コミケに企業ブースが大量に出展していることからもうかがえる。

 ちょっと古い話だが、大きな起点となったのが、ニコニコ動画(復帰できるのかな?)が角川グルーブと株の持ち合いをする際に、権利関係に問題のある動画を一斉に削除したときなんじゃないかと思う。

 アニメの一部を切り貼りして音楽をつけたAMVはアニメ文化の一つの支柱だったけど、これが抜けて多くのクリエーターやファンが逃げたし、ニコニコの客層がかなり変わったことを覚えている。これがBilibiliやyoutubeに流れてしまい、大きなビジネスチャンスを失った。

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(こういう感じのAMVが溢れていた)

 一方で、DMMが権利を持つ艦これでは、2次創作はフリー(エロはダメ)ということにして2次創作者に利益を与える代わりに宣伝をさせて、ゲームの人気(ゲームアクセス時間)を他のブラウザゲームよりかなり長期に維持することに成功した。

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(なぜか海外でバズった艦これAMV

 今から見ると、角川的スタンスを取った企業が多く、権利関係を持つ「大人」がその権利の価値を理解せず、それで遊んでいた「子供」を𠮟りつけることで全体がしぼんだんだろう。tiktokではミームの素材になっているものがあるけど、それが本作視聴に誘導できるかというと疑問だ。

 同人が企業化して小さな利益を得たが全体のルール作りの主導権は得られなかったし、創作文化でも多くの点で海外に追いつかれているので結構厳しいところに来ているんだと思う。

 

新しい技術と創作

 何かを作りたい!と思うのはどんな時だろうか。自分の場合は何か刺激を受けた時である。真新しいストーリー、個性的なキャラクター、見たことのないキラキラ、誰かの作品を見て感情を揺さぶられると自分も作りたいと感じる。

 また、別の人は自分の得意な技術を使って、自分流に創作しようとする人も多いだろう。今の創作の大半はPCを使ったものになる。絵もペンタブ、動画も編集ソフト、造形も3Dプリンターだ。もちろん、一品物を筆で作る絵描き、フィルム写真を撮る写真家、削り出しで彫る彫像家もいるが、多くがパソコンを使った創作だろう。

 そのパソコンもそれ自体の機能が上がり、ソフトの性能向上で個人でもとんでもないものが作れるような時代になった。また、所謂A.I.アートの登場で、入力データを集めることができれば自分に創作能力がなくてもかなり高度な作品つくりができるようになった。

 さて、ここで面白いなと思う点があって、創作が昔よりも窮屈になっているということである。SNSを開けば様々な情報があふれているし、Googleで検索すると求める情報に簡単にたどり着くし、Youtubeを見れば詳細な方法論に出会うことができる。しかし、それを見て我々が創作するものはとても幅が狭い。

 なんでだろうなぁと考えると、「自分が考えて作るよりもすでに答えがある」のが今の状態なんじゃないかと思う。絵を描いても自分の100倍上手な人がたくさんおり、自分なりのイメージを作る前にそれらしい作品がある。また、何年もかけて自分なりの作り方を見つける前に「正しい作り方」が陳列され、それが正しいと多くの人が称賛を上げているのだ。もちろん、創作に正しい答えなんかないが、多数決はある。

 これに触れると初心者は惨めになるし、自分の思い描く作品に到達しにくくなるのではないだろうか。そのため、ハンコで押したような絵柄の作品が並び、同じ世界観のストーリーが乱立し、それを前提に情報を効率化したA.I.作品に同人が駆逐されて行っているのではないかと思う。

 創作に一番必要な自由度が便利になることでなくなり、遊びであった物がいつしか作業になっているのが今の創作活動の傾向なんじゃないかと思った。

 非常にややこしいのは、創作を作る・発表する人はとても増えて、たくさんの作品があり、多様化している。しかし、全体の傾向は一方向に収束している点である。例えば、同じソフトで作るから同じような塗りになる。でも、チョットした塗り方や色彩の差で個性を出そうとしているから、小さい視点ではカラフルだけど、引きの視点では大体同じに見えるというものだ。

 高い技術や情報が汎用化すると上等な作品が作れるが、それに乗ることでしか物を作れないので、同じようなものになってしまう点がすごく目立ってきたと思う。

 

個人の自由と創作

 自分はエロを描く。リアルの友達や仲間には絶対に教えない。しかし、これは趣味でずっと続けている。一種の異常者だ。見つかると逮捕されるのかもしれないw

 こういった匿名性で活動している人はたくさんいるし、プロでも本人の顔や素性を一切出さないで活動している方も増えてきた。

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(紅白歌合戦に顔出ししないで出場したのはすごい)

 こういう流れは臆病な人にはとてもありがたい。自分の属性を問われず、内面にある自分の気持ちを世に出せるシステムはある意味で心の開放だ。

 しかし、コロナ禍以降の自由は大きく変化した。誹謗中傷関係で法整備が進み匿名であることにほとんど意味がなくなった。SNSで自由にものをいうリスクは格段に高くなったし、何が争いの種になるかわからない。多くの人が匿名を使って他人を否定することに慣れてしまった。自由な発言が自分の破滅を呼ぶというのは恐ろしい。

 また、大きな傾向の変化として、創作は表現ではなく金儲けが前提になった。遊びではなく仕事になったと言える。そして、有名になった匿名者は企業のプロモーションありきのキャラの一部になってしまった。高い質の作品を作るためにたくさんの人が関わり、個人ができるレベルを超えてしまった。もちろん、所謂バズる方法というのはいくつもあるが、それは作品の評価ではなく一瞬の興奮を多くの他人に与えるだけで創作をする意味とは大きくずれる。

 これが良いのか悪いのかは判断が分かれるけど、純粋に面白い物や素晴らしいものが評価されるのではなく、たくさん宣伝されていたり、ステマされたものが評価の中心になっていることは注意が必要だ。一時期、ネットは自由(カオス)の空間になっていたが、テレビを中心とした広告代理店がネットに乗り出してきて宣伝の方法論が確立されると、それに一気に流されてテレビのように大衆化したということだろう。

 政治を見てもNHK党、参政党や石丸伸二氏のやり口、商品販促もインフルエンサーを使ったステマなんかを見ればずいぶんと的確にターゲットを絞って打ちに行っていることがわかる。

 創作の自由はまだあるが、以前ほど価値を感じる自由ではないのだろう。

 

まとめて

 何事にも流れがある。それに乗って何かを有利に進めるのは大切なことだ。同人文化・創作に関しても一人でやるのは時代遅れで、仲間を募り、技術力を高め、企業化して、金を集め、宣伝を打ち、虚像を作らないといけない時代になってきた。

 まぁ、あくまで他人に自分を評価してもらうにはそういうことを意識しないといけないと言うだけだ。流れに乗らず、淡々と自分の作りたいものを作るというのも一つの道かもしれないが、以前のようにたくさんの人に見てもらえなくなることは覚悟しないといけないのだろう。

 

終わりに

 好きなことをやって金儲けをするというのは、ちょっと昔のネットの標語だけど、それはもう終わりなんだろう。

 内面に向かって自分の好きなことをするか、外を向いて金儲けの流れに乗るかが選択肢なんだろう。

 ま、当然、好きなことをやる筆は止まらないけどね(^ω^)

 

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