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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

A.I.お絵かきについての一考

ツイッターを見るとAI絵師というものが騒ぎになっている。よくわからない人がなんとなく騒いでいる感があるので少し整理して考えてみた。

(今週の一枚)春を満喫(pixiv

 

事件概要

 何が起こったかというと、A.I.で作った絵で金儲けした奴がいて、そいつがパクリ元の絵描きにわざわざ突撃・煽りを入れて、それが拡散された。そこに尾びれはびれがつき、こういった不法行為についてPIXIVが規制するどころか促進して絵描きの権利を奪った!!!と大騒ぎになったのだ。

 まぁ、実際は金儲けしたとされるアカウントは偽物で、PIXIV側にもそういった悪徳を許容するような意図はなく、全くのデマ拡散だった。

togetter.com

 数年前に運営の方針が変わり(多分、上層部の入れ替え)、カオスラウンジ事件のようなことはPIXIVではほぼなくなったのだが、こういった悪印象は中々ぬぐえず今回の騒ぎになったのだろう。

 PIXIVは比較的素早く対応し、ガイドライン改訂を行うようだ。

kai-you.net

 

A.I.の限界 

 以前にも同様の騒ぎが起こった。ツイッター内で発狂した人がたくさんいた。

nipplelf.hatenablog.jp

 今回、非常に注目する点は特定の絵描きの作品をA.I.によって作成でき、大量生産できるという点である。これはもちろんウソなんだけど、多くの人がこのウソに簡単に騙されてしまった。

 通常、「詳細に機械に学習させる」となると、情報量によるが、数万程度の個別データが必要となる。非常に条件が限定されても最低1000以上ないとまともに学習なんてできない。つまり、パクられた絵描きが同じような絵を1000枚以上描いていれば癖を盗まれる可能性もある。しかし、筆の早い絵描きでもそんな枚数描くのは難しいだろう。

 大量のデータをそろえ、それを選別した状態で何千枚かそろえて初めて学習になるのだから、特定個人になり替わることなんてほぼ無理だ。

 では、なんでこのような無理筋が通ってしまうかと考えると、機械学習とお絵かきが過剰に宣伝されているためである。ツイッター内において、無知なA.I.絵描き(笑)、情報商材屋、いたずら目的での嘘つきなどが常に「自分たちはすごいんだぞぉぉぉ」と騒ぎ、それに対して怒りをためた人たちがああだこうだと騒いでいるからと考えられる。

 実際には機械学習はそんな簡単なものではなく、かなり限界が見える計算なんだけど、これを過大に見せることで無知な人たちからお金を搾り取ったり、マウント合戦の道具になっていると考えると、A.I.絵描きは都市伝説になりつつある気がする。

www.gizmodo.jp

 

個性を持つ人と機械学習

 なんで自分の作品がパクられるなんて思うかというと、自分の作品もパクったものから生まれているからだ。アニメ・マンガの絵からインスピレーションを得たものの多くが見慣れていないとほとんどその差を見出すことができない。イメージというか、ちょっとした印象が違うから著作権がありますと言われても理解できない程度の差だ。

 つまり、同一作者ではなく同じ傾向の作品群から情報を抽出すればその可能性はぐっと上がる。萌え絵なんて狙い撃ちだろう。教科書的な描き方なんてものもあり、作画がほぼ一線になっている。

 また、ネットに溢れる作品の多くが2次創作だ。誰かが生んだデザイン、誰かが作った構造物の模写、表現イメージの模倣なんて誰しもやっている。

 

 では、個性とは何だろうか?

 

 それを生むためには、まず、何かの絵や物体の模写をしたり、教えられた通りに絵を描いたりするだろう。パクリであり真似であり偽物だ。その中で、何年も同じ筆を持ち描き続けて自分の癖を確立させて初めて個性が生まれる。

 しかし、今どき多くの人はそんなことはしない。「●●が簡単に描ける方法」に飛びついてそれっぽいものを描いて満足したり小銭を儲ける。おそらくニッペルフもそれにあたるのかもしれない。

 何年も何千時間もそれを続けられる人はそれが才能であり、努力の結晶であり、尊敬される「個性を持つ人」なんだろう。

 つまり、個性とはその人が費やした人生の結晶なのではないかと思う。

 一方、機械学習にはそれがない。人間より多くの試行、データ抽出をしても出てくるものは平均値でしかなく、もっともらしい物しか作ることができない。計算し、平均化すればするほど個性とかけ離れるのだ。

 

金儲けの可能性

 ツイッターを見ると、上で言う個性を持つ人でさえも怯えているのに驚く。もっと自信を持ってほしい。でも、おそらく、ちゃんとした情報を伝えてもその恐怖から逃れることはできないだろう。

 それは自分の培った個性をA.I.に簡単に超えられ、大量生産され、自分の食い扶持がなくなってしまうのではないかという恐怖があるからだろう。

 将来、その可能性は否定できない。

 

 では、実際に現在のA.I.による絵の作成によってそういった個性ある人たちの居場所は奪われるかというと、A.I.のみによる出力では難しい。

 理由は簡単で、入力データの著作権が確定しないからである。グーグル検索で大量のデータを集めて、それを計算して出力したデータにはその大量の元データの著作権が紐づけされているので、出力した作品は著作権的に黒に近い。

 こんな不安定なものに金を払って、後で購入者が大量の権利者に訴えられたら大損どころの話ではない。

 あくまでお遊び、非営利でやっているから許される物であり、それに金が絡むと身動きが取れなくなる。とても微妙なのだ。まともな企業や個人であればそんなものに手を出さないだろう。

 今騒がれているのは、多くがエロ目的や小規模の計算ソフト売買であり、これはなくなることがない。また、これが個性ある絵描きのしのぎを犯すことはできない。個性があり名の知れた人は絵のうまさもさることながら、読者が金を払う理由は信用と実績があるからだ。

 例として、古塔つみの件が挙げられる。とても上手で幅広いイメージを手掛ける絵描きだったが、実際はトレースパクリの常習犯でそれがばれて信用を失った。

 どんなに作品が美しくても、個人に信用がなくなればビジネスは成立しなくなる。「これはデザイン泥棒の作品です。持っていると失笑されますが買ってください。」と言われて買う人はいるのだろうか? 信用のないA.I.作画も同じだ。

 

 一方で、入力用データに著作権フリーのものが大量に集められれば儲けの可能性が生まれる。

 森林や街並みといったどこにでもありそうな背景・風景はまず対象に浮かぶ。個性の必要ない量産品での戦いでは時間、費用がネックで、人間が描いた方が早い場合もあるので競争となるかもしれない。

 また、抽象的なデザインやバラバラと表現物を集めたようなアート系は新しいジャンルとして成り立つかもしれない。しかし、アート系はバイヤーあっての芸術家なので、売買先が納得するような売り方ができるかどうか(市場ができるか)で変わる。全く新しいジャンルになるのかもしれない。

bijutsutecho.com

 

ツールとしてのA.I.

 さて、現状として仕事を奪われないとして、絵描きがこの技術を無視していいかというと、無視すべきではないと思う。

 今どきは多くの絵はデジタルアートだ。パソコンを使いペンタブを握って絵を描く。一昔前なら考えられない進歩であり、これによる時間短縮やツールとして様々なソフトやAPPを駆使して手書きにはできない作品作りをしている。かつての絵描きたちに言わせれば邪道な方法であり、禁忌なはずだが、使う人間の数が増えたため許されるようになったと言える。

www.clipstudio.net

 つまり、意識していないがすでに我々は広義のA.I.による補助を受けて作品を作っているのである。

 おそらく、機械学習によるA.I.は作品としてのメインストリームにはなりえないと思うが、その能力をうまく駆使することによるお絵かきの効率化が進むことは容易に想像できる。

 今のところ、絵描きがそういったソフトをうまく使えないため、ツールとしての浸透が徐々にしか進まないが、今使っているソフト(photoshopやclipstuidioなど)に拡張機能として実装されるようになると、一気に広がるものと考えられる。

 どこまでをこういった便利機能に頼るかは各個人のセンスや技能水準によって異なるだろうが、我々に新しい武器が与えられ、それを使って新しい作品制作の可能性を模索することは考えておいた方がいいと思う。

 

終わりに

 わからないものに怯えているだけでは恐怖に打ち勝つことはできない。ちょっと使ってみて、自分に利用できるか調べることが重要だと思う。利用できないなら、その程度の価値しかなく、怯える必要はない。利用できるなら、新しい可能性を得て自分を強化すればいい。怯えはなくなる。

 …ツイッターって嘘つき多すぎて困るけど、そういった煽りで出てくる情報や技術に興味を持つにはいいきっかけなのかもね(^ω^)

 

 

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