Eテレ売却論がSNSで大きな批判を浴びた。どうしてこういった話が出るか放送と通信の基本を理解して、その利権から今回の内幕を素人なりに探ってみる。
(今週の一枚)晩夏の風に乗って音楽が聞こえる(pixiv)
放送と通信を理解する
先週、政治カテゴリーでEテレ売却が話題になったが、そもそもこの話の根っこは放送と通信の融合・見直しに端を発すると思う。そこでまずこれらの全体像を押さえてみる。
放送の現状
インターネット全盛になって、双方向で情報をやり取りするSNSが我々の生活の一部になった。これは電話からスマホへと情報の通信技術が発達したおかげであるが、それに伴って、テレビやラジオなどが一方的に情報を流す放送…オールドメディアの扱いが問題になってきた。
電波利権なんて言われているが、現実は変化し、地上波放送局は全国に500社以上あり、その数を毎年増やしている。放送局は国から安い値段で放送する権利を得てテレビやラジオ番組を作って我々に届けていたが、その使用料も徐々に値上がりしている。それでも、優遇措置の元、特定の放送局だけにこの電波帯を占有させていいのか、もっと多くの業者に自由に放送をやらせてもいいのではないか、通信事業者に割り当ててもいいのではないか(つまり放送を縮小する)という議論が起こった。電波オークションと言えば理解する人もいるかもしれない。
放送と通信の価値
ネット(通信)があればテレビ(放送)なんていらないという人は多いが、実際はそうでもない。ネットで100万人が同じ動画を見ようとすると、100万人それぞれにその情報を送るサーバーが必要になるし、途中無線化(Wi-Fiや携帯用電波)するなら基地局がいる。一方、テレビで100万人に同じ番組を見せようとすると、その地域に電波塔を1本たてればいい。維持やコストを考えると放送の方が断然お得なのである。
つまり、放送と通信は一長一短でうまく使い方を工夫しないと有効な情報を伝えることができない。
地上波デジタル放送の整備と共に重要な情報は放送で、細々したものや録画記録は通信が担い、電波帯を融通するようになった。通信側の技術革新で便利になったけど、一律に情報を伝えられる放送の強さ・価値は今も変わらない。
放送改革の問題
放送はでっかい電波塔から電波を送って情報を送るが、それでも送れる距離に限度がある。そのため、全国に電波塔を建てる必要がある。そこで、ある地域だけの電波帯の権利売買をしてしまうと、全国津々浦々に同一の情報を届けることができない。そのため、地域各社は関連会社になってできるだけ同じ情報を流すようにしている(NHKも支局に分かれているので厳密な意味では東京と大阪は別の放送局となり周波数も違う)。もし自由化したなら、当然権利をばら売りすることになり情報の一律性が損なわれることになる。そうなると災害が来た時に同じ情報が得られず我々の損になる。一方でまとめて購入するなら、今ある利権が別の会社に移り電波使用料が高くなるだけで本質的なものは何も変わらない。電波の利用は規則化による統制と自由化による儲けのバランスが難しいようだ。
そんな中、5Gも始まり、どの程度の放送局数(放送の情報量)が適切か、日本人全員が共有すべき情報・番組は何なのか、この権利で国がどの程度儲けるべきかなどがずっと話し合われてきた。
そして、携帯電話(通信)とテレビ(放送)の両面の改革に前向きな菅氏が総理大臣となり、この議論が一気に過熱しようとしているのが現状だと思う。
Eテレの存在価値
放送と通信が電波送受信と言うハードの話なら、それの載って放送される番組はソフトになる。その中でEテレは一つのチャンネルを占有する非常に大きなコンテンツとなる。純粋にEテレの視聴率を見ると高くて2%でほとんどのものは1%以下となっていて、経済的に考えると明らかな不採算部門だし、それこそ電波の無駄使いとなる。
当然、ほとんどの人がEテレを視聴していないということになれば不用ということになるし、そう思う人も多いだろう。
しかし、その視聴カテゴリーを「子供」と「その親」に絞るとその考え方は大きく変わる。例えば、高視聴帯の時間は朝の7~8時、17~18時と非常に限られた時間帯に集中しており、その視聴層も12歳以下の子供、30代、60代以上の女性となり、ほとんどが子育てする母子とその母のみに集中している(放送研究と調査93ページ)。
つまり、明確にこの時間はEテレ!と言う層が多く存在し、そういった人達にはとても大切な番組であることが分かる。
今回議論に上がったEテレ売却はこういった子供を持つ親を全く意識しない暴論だということがわかるし、非常に特殊な立ち位置を持っているので単純にネット配信に切り替えることも難しいことが分かる。
しかし、子供のいない人にとっては無価値で、子供のいる人にとっても朝と夕方以外は別になくてもいいというのも事実だ。公共を考えるなら、このイマイチ使われていない部分の有効利用やなぜEテレが必要なのかをもっと周知する必要がある。
子供のいない爺さんに対しては「これから日本を担う子供を育てるために協力してください」と保守っぽく言えば、廃止や移設論は消し飛ぶだろう。いずれにしろ今回の売却云々は明らかに無知であり、情報があれば収まる現象だと思う。
利権
放送と通信のお題目は限られた電波の有効利用なんだけど、それを使うユーザーは1億人以上いて超儲かる。だから、それに伴う利権も大きい。Eテレ売却論に関わる利権を拾ってみる。
NHK利権
近年はNHK受信料徴収の制度化が強化され、ついにテレビを持ってなくても受信料を取ろうとする意味不明な状況になってきた。また、公共放送なのに多額の余剰資金をプールしたり、一方の思想に偏った報道をする所謂偏向報道が問題になってきた。
しかし、偏向とか放送の占有とかは表面的なもので、実はこれらの問題はNHKのグループ企業の存在が本質である。公共放送なのに株式会社のように子会社を持つ謎の組織がNHKなのである。
協力・関連子会社企業を含めると100社を超えるため、しっかり国からの監査を受けられておらず、規模拡大と共に問題が雪だるま式に大きくなっている。
例えば、受信料徴収をする人は歩合制の協力員でNHK職員ではない。そのため、犯罪を犯してもNHKは責任を取らない。また、受信料で作ったNHKの番組をネットやDVDで再販しているが、これも関連会社が販売しその利益の多くは我々に還流されていない。…などなど、NHKの抱える問題はファミリー企業の存在と言える。違法でも責任を子会社に押し付けることで本体が知らん顔して好き勝手出来るため、年を追うごとにドンドン悪質になってゆくのである。これを利用して変な人が出入りしたり、脱法的に金儲けをしているのがNHK利権である。
営利化を認められた1982年当初はNHKは万年赤字で、作ったコンテンツでの利益化を特例的に許したんだけど、今となってはぼろ儲けして、超天下り団体の山になった。
日本放送協会の子会社等の事業運営の在り方に関するガイドライン(案)を見ても、「~を求める」みたいな記述ばかり(つまり法的拘束力がない)で国の関連企業への制御は全く効いていない。特に金に関して相当暗い面だあるようで、脱法的に子会社が増えている状況での利益化は非常に危険な利権だと思う。
通信利権
たくさんの人が高い携帯電話料金払うことで利権が巨大化している。その高額な通信費をNTT、KDDI、ソフトバンクで占有しているので、まるで談合の様な状態になっており、度々問題になってきた。
菅総理は安倍政権時代に、これについて明確に「問題である」と言い、楽天を強引に参入させた。NTTも圧力に折れる形で値引きをしたが、5Gの導入によってスマホ本体の値段とデータ通信料金と光ファイバー網との絡みがあるので、実態として今使っている4Gの帯域の通信量が余る可能性を踏まえての行動なのかもしれない。
すごく簡単に書くと、中古の電話が出回って、新しい電話線が高性能になり、今使っているシステムが陳腐化するので、思い切って値引きしましたと言うところだろう。
つまり、通信の利権と言うものは通信料だけでなく、10年おきに代わる規格変更(1G→2G…→5G)での様々な機材変更で起こる需要とそれに伴う中古市場の活性化が本質ではないかと思う。
文部科学省利権
本稿で話題のEテレと通信関連を見ると、放送とは全く別に、文部科学省関連の話が出てくる。本来、インフラをどう使うかが中心なのに、それを使って流す番組の話が「放送改革」の議題に上がるのは奇妙だが、それを追うとまた別の利権がある。
教育(教育テレビ故に)に関連する項目としてデジタル教科書や電子黒板の導入など学校現場のデジタル化があり、それに伴って通信の有効利用と言うものがささやかれている。
これらデジタル化の総体としてGIGAスクール構想と言うものがあり、これが利権化している。国定タブレットの販売、教科書のデジタル化、教育用デジタルコンテンツ導入、代用教員選定などであり、それぞれに族議員が付く。ただ、これ自体は絵に描いた餅で、資金不足と人材難、教育現場の混乱が起こっており空回りしている。
コロナ禍でリモート授業が勧められているにもかかわらず、この構想自体がぐずぐずで役に立っておらず、相対的に補助金ビジネスや天下り団体設立が悪い意味で目立っている。
コンサルと言う毒
NHKの利権をめぐって色々とすったもんだがこれからありそうなことが分かったが、やはりEテレがその議論に出てくるのは明らかに論点が違う。明らかにおかしな話が急に出たのは↓の記事からだと思う。だから、ここをもう少し考える。
この記事を書いたのは高橋洋一と言う経済学者(査読論文無し)なんだけど、この人の言論は非常に狡猾で、事実と仮説を混ぜて周囲を煽りたて、最後に依頼者の利益を混ぜ込む傾向がある。確かにこの煽り記事はぱっと読む分には国家や大企業の秘密に触れた気がしてとても面白い。ただ残念ながら、少し調べて知識を持つと誤りが多いし(周波数帯について誤認があるし地方間の電波状況を無視している)、放送と通信のハードにかかわる話にソフトのEテレを混ぜて文科省関係の利権を作ろうとしている(アメリカに国営放送は元からないのでNHK議論が一致しない)。雑なアジテーションになっており、放送と通信の真面目に議論をしている菅総理としてもいい迷惑だろう。
そして、一番問題なのがバッシングを受けると言論に責任を持たず、後からそれは誤った認識だと言って別記事でウソを上塗りした点である。これら記事を要約すると、要は菅総理の放送と通信の改革をしようとする意思を利用して、脱法的に得たNHK利権を盗もうとしている人達のお先棒を担いでいるだけなのだが、それが「わかりやすい正義」に見えるようにうまく取り繕っている。
この手法に騙される人はSNSを見るとたくさんいるし、かつてもたくさんの人が騙された。小泉改革の「郵政民営化」、民主党の「埋蔵金」、維新の会の「大阪都構想」、安倍政権の「リフレ政策」キャッチーで強いインパクトを持つが、すべてうまくいかない。
理由は簡単で、彼は今回のようにデータで意図的に都合の悪いものを隠したり、明らかな利益誘導をするので、その場ではよく見えても実際に運用すると全く動かないのである。埋蔵金だろうがEテレ売却であろうが、本来、真摯に問題に向き合えばいい議論になるのに、初めに毒を混ぜるので、結局それをやった人はみんなに憎まれたり嘘つき呼ばわりされてしまうのである。
右翼も左翼も自民党も民主党もその支援者も一回騙されてたくさんの人が怒っているが、彼は謝らないし、信者は彼を擁護する。タコ壺化してある意味地獄である。
今回の本質
…と言うわけで、今回の件をまとめると、菅総理が放送と通信の改革に乗り気だから、それを利用してNHKの利権を奪い取ろうとしたが、コンサルが勉強不足で失敗したというのが本質なんだろう。
身もふたもない話だが、無辜の民をだまして金儲けしようするスタイルもそろそろ限界にきていると思う。
終わりに
こうやって問題の本質からずらして、金儲けしようとするのは政府系コンサルの悪い癖だと思うし、こういったヤカラに切れたら負けだと思う。
淡々と「NO」と言うべきだし、誰が誰のために嘘をついているのか知っておけば防衛もできる。
…まぁ嘘をついてもらえるくらい金持ちになれれば成功者なのかもな(^ω^)
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