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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

絵は描きこむべきなのか削るべきなのか

絵をどの程度描きこめばいいのかやどう無駄をなくすのかよくわかっていない。だから、わからないなりに実践してみたことを記事にしてみる。

  

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(今週の一枚)瓦礫の塔で舞、それを見るカッパ(pixiv

 

 

情報の多寡と出し方

 いい絵と言うのは人によってその評価が千差万別なので、一つの答えはない。見せる媒体やその大きさでも描き方は違う。また、ほんの少し言葉の補助を入れるだけで、その評価は全く変わる。

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 (サムネイルだと細かい絵はわからないし、題名があいまいだと無視される)

 

 つまり、限られた時間とスペースの中で、見た人に絵の内容をどう想像させて、頭の中に情報をどうわかりやすくねじ込むかで評価が変わる。ポスターのデザインなんかはそのいい例なんだと思うが、今回は純粋に絵の中で情報を加減した場合どうなるかを考えた。

 

情報の削り込み

 以前の記事では見栄えについて考えた。これはSNSやホームページなどを液晶画面を通した視聴を前提として、本来の絵画鑑賞とはちょっと違うが、ほとんどの人はその機器を前提として作ったり見たりしているので、この前提を軸にまず考える。

nipplelf.hatenablog.jp

 自分なりの解釈として、見栄えのする絵と言うのは、画面の中で様々な情報がある中で、なるべくわかりやすい対立構造や対比を作り、見る人に訴えかけるものではないかと考えた。

 莫大な情報量が絵の中にあっても、表示サイトでは情報は省略されるし、その短縮情報でさえ、人の眼や脳では短時間では処理できない量であることが多いので、見せたいものをかなり意識的に強調しないと絵が理解されないと思うからである。

 だから、見せたいものを色、線画、陰影、光量など様々な視点で差を付けることで、絵を浮かび上がらせて見る人の眼を焼こうとすることが(バルス的な感じ)ネット全盛期に要求される見栄えなのだろう。

 その点に注目すると、一旦完成した絵でも情報をさらに加えて対比する部分を作ったり、情報を削ることで見せたい部分を強調すること、これらの追記はデジタル情報処理として考えたほうがいいのかもしれない。

 

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(一例として色を削る 鷹と夕日以外を白黒にしてわかりやすくした)

 

 例えば、左上のように絵全体が色が赤で支配されて、色の情報が限定されている絵は色をなるべく単純化赤と黒)することである程度分かりやすい対比を作り、そこに日の光を入れることで太陽とキャラを強調しているが、この作品ではキャラ境界のハイライトの入れ方が不十分なので、キャラを際立たせることに十分にはできていない。

 絵を描くということ考えれば、そのキャラ境界部に白い線画を描きこんだり、日が当たる部分にさらにハイライトを当ててやればいいが、少々面倒である。

 そこで、完成したものでも、その一部情報自体を捨てることで強引に対比を作ることを考える。雑だけど、上のように太陽とキャラ周りだけに色情報を残すことで、よりこれらを強調できる(右絵)。

 つまり、色で赤と黒(白)の対比を作っていたが、さらに色の有無(情報を削る)をいれることでも対比を容易に作れ、それを絵にできる。

 (一応方法を書くと、絵を丸ごとコピーして、それを白黒化する。下のレイヤーは元絵で上のレイヤーは白黒絵。白黒絵を部分的に削って重ねれば完成。白黒レイヤーの不透明度を変えればどの程度色情報を残すかを制御もできる。)

 

 情報の加算減算で、情報のON/OFF対比は割と楽に作れるので、純粋に絵をみて描き加えたり、ぼかすのもいいが、色やコントラストなどのデジタル情報を減算することで絵を一味違う物に作るのも一案ではないかと思う。

 

情報の乗算の限界を知る

 いままで減らそう、シンプルにわかりやすいものを作ろうぜっ!と力説してきたが、実はここ一か月ほどそれとは全く逆のことをやってきた。

 

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(先週の絵 色、遠近感、キャラ数、オブジェ数など最多 pixiv

 

 これは先ほどのカラムで「液晶画面の表示」を前提とした方法を提起をしていたので、情報量を減らしわかりやすい対比とサムネなど簡略化された際のデジタル対処法の施策を提案したためである。しかし、前提を上手な、売れている「単なる絵」として見ると、お金を取って作られたプロの作品は一味も二味も違う圧倒的な描き込み情報量がある。

 そこでは当然いらないものを抜いたり付け足したりして完成しているのだろうが、自分がどこまで詰め込んだものを作れるかストレステストをして上限を知らなければどの程度切ればいいのかわからない。

 そういうわけで、一週間でできる限界量が上の先週描いた絵(前記事エロ広告のためブログでは未発表)辺りになる。この絵で注意したことは各キャラクターに何らかの動きを付けることと、すべてのオブジェクトに異なる色を振ってどの点からも対比を作り出そうとしたことである。これによってジッと絵を見ると絵全体でこれから何が起こるかある程度連想できるし、秋の華やぐ色を順繰りに見ることで季節を感じることができるのではないかと思う。

 かなり時間をかけて作ったが、その際の経験値としてわかったことは各バランスが崩れると一気にぐちゃぐちゃになってしまうことである。これを強引に収めるために、いつもは行っている陰影の差を作ることができなかった。

 つまり、情報量を限界まで上げる(ここでは色彩と各オブジェの領域)と、その差を理解するためには別の情報群(この場合、光と陰)を減らさないと絵として成立しないことがわかった。

 情報量の多さは絵を成立させるためには重要だが、「単なる絵」として作ったとしても、対比数には限界があるということであると思う。

 おそらく、この対比数の限界は各人がいつも見ているものに依存していて、もっと細かい作品を見ている人にとっては少し物足りない対比だったのかもしれない。ただ、マスで考えると、多くの人はSNSでぱっと見て次に移っているので、はっきりと目立つ対比は2つくらいに収めて、描きこむ場合はあくまでその対比を盛り立てるものにした方が絵として落ち着くのではないかと強く感じた。

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(絵の一部 このくらいが量がちょうどいいのかもしれない)

 

人の知識と異なるイメージ

 人間だれしも知らない知識はあるし、知らないものにはあまり興味がわかない。だから、ある程度知っているものに何らかの新しい情報を加えて新規性を出すのが正当な絵の描き方なのかもしれない。

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(魔法使いと猫の秘密のアジトは何となく誰しも理解できると思う)

 

 そういった意味で、ファンタジーは日本人のかなり多くに浸透しているし、その幅も広いので描きやすいし、何を描き込めばいいかなんとなく理解できるいいテーマだと思う。だから、そこに自分なりのスパイスや技法を込めればまずまずの絵になる。

 上の絵では魔法使いを中心に日差しを使って陰影差を作ったので、その他オブジェが見えにくくてもイメージを収束することができたと思う。

 では、多くの人が理解できないテーマだったらどうであろうか。SF作家アーサー・C・クラークがいう3法則の一節に「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない。」と言うものがあるが、言い換えれば同じものを見ても、知識があると無しでは見え方が違うと言える。

 これは結構な示唆で、描く側も見てくれる人がどの程度そのテーマを知っているかどうかを考えないで描いてしまうと、まったく異なる印象を与えて、場合によっては相手を不愉快にしてしまうこともあるということである。

 2次創作の場合はそういったものはほとんど考慮することなく、その世界の前提知識を持っている視聴者に向けて描けばいいのでほぼ外れなく正解を作れると思うが、オリジナルの場合はその前提をどこまで広げるかは作者のセンスが問われる。

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(重力の歪みを利用した廃墟都市のイメージ SF知らない人には意味不明)

 

 絵だけで何かを伝えようとすると、やはり身近にあるものや理解できるものがないと何かすごいものがあってもそれはただの「塊」になってしまうと思う。処理できないカス情報に意味はないので、やはり理解できるものを添える必要があると思う。これは現代美術的視点では明らかな誤りだけれど、見てもらう人にはやっぱり描いた意図を伝えたいと思う。

nichigopress.jp

 そこで情報としての対比はやはり身近なものをそこに載せてみればいいが、それではつまらないので、科学なら魔法などのテーマとしてあまり交わらないものを載せてみた。

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(かつての科学を今の魔女が見つめる図)

 

 見る人は魔法、科学どちらにも所属していないけれど、知識としてどちらかのファンタジー要素は知っているはずである(知らなかったらごめんなさい)。どちらかを知っているという点から対比ができるので、どちらか単独を見るより比較的容易に絵を見ることができるのではないかと思う。

 また、この絵では2枚の絵を重ねて多くの部分を削っている。その削った部分に対比対象を重ねているので、イメージを描きこむ→削る→描きこむ→削ると言う作業になった。

 こういったSF知識前提の描き込みでも、理解できる対比を差し込むことで絵としての価値が上がるのではないだろうかと思う。

 

終わりに

 グワーと描きこんで、ゴゴゴッっと削ったりしたけど、やっぱり中心がないといけないなぁと感じた。それがしっかりしていれば描きこむとグレードが上がるし、対比があるとすごく栄える。情報量的にも言いたいことが伝われば多寡はあんまり関係ないのかもしれない。重要なのは見る人に「一言」をどう見せるかなんだろうと思った。

 

 …ま、当たり前のことなんだけどね(;´Д`)

 

 

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