終わらない大阪政治劇場。傍目で見ていると意味不明であるが、サンプルとしては面白いので少し真面目に考えてみる。この記事ではまずこれまでの状況・大阪の実情を見直す。
(今週の一枚)春と言えばツーリング?(pixiv)
本来の大阪都構想
大阪都構想と言うものは実はとても長い歴史を持ち、それに伴って内容の異なるものがたくさんある。
大阪歴史博物館でも巡れば、この辺の軋轢や歴史を見ることができるが、Wiki情報や各種サイトでもある程度の概要を見ることができ、節目節目に都構想、もしくはそれに近い運動・主張を確認することができる。
維新の会においても当初いくつかの案が存在し、名前は同じでも時期や発言する人によってその内容が実はバラバラだったりする。例えば、浅田均氏があげた道州制から見た維新八策と維新大阪市議からでるボトムアップ型の発想には権利分担で齟齬がある。また、地域政党として大阪が本丸で一番正しいとしても、その主張において堺市を加えるかや、市と府の行政の何を一本化するかではっきりとしない点が多い。
つまり、「大阪都構想」といっても実はその内容の具体性は敵見方問わず未だに煮詰まってないといっていい。
ただ、その構想における大まかにやりたいことははっきりしている。それはお金の流動性を上げることではないかと思う。
大阪維新の会の計画当初、大阪府は破産寸前(理屈上破産状態)で大阪の各市はかろうじて余裕がある状態であった。府がつぶれてしまえばその下に位置する市町村は丸ごとダメになる可能性があった。そこで、2元行政の解消、権限集中による行政のスピード化・・・、つまり金をひとところに集めて、資産売却と集中投資をしてその上がりで借金を返済しようとしていたのではないかと思う。
行政サービスや市民権の拡充などのきれいごとはあくまでも2次的もので、資産流動性をどう維持して生き残るかが本質と言い換えることができるのかもしれない。
大阪維新の会の価値と問題
我々は愚かで弱い人間であり、それが行うどんな物事にも功罪がある。当然、今回の主人公で大阪の運動体である彼らにもそれがあるので評価してみる。
価値
大阪の人に話をするとほぼ全員「維新の会はよくやっている」という。もちろん、どうしようもない議員への不満も多々あるが、他の政党の議員と比べると親分のグリップが効いていてあまりあほなことをせずに地域のために政治・行政をやっているという評価である。だから、議員の人気もそれに比例する。例えば、地域に足しげく通う丸山穂高議員の人気は高く、東京を中心に活動する足立康史議員の人気はかなり低い(前者は小選挙区当選、後者は比例ゾンビであることからも明らか)。これは支持基盤がないがために駆けずり回らないと落ちるという不安からきているかもしれないが、他の政党よりもいい話を聞く。
つまり、大阪維新に求められている・支持されているものは政治を「維新すること」ではなく、実は「今の生活の保守・改善」であり、彼らの強い言葉とは裏腹にその政治を立派にやっているため評価されていると言える。
かつて上の記事のようにゴシップで煽られても、選挙民へ立派に行政を行ったため、
しっかりと自らの成果を誇ることができている。
問題
しかし、彼らはポピュリスト政党(特定の支援団体を持たない個人の人気を集めて運動する団体)である。そのため、「敵」を作らなければならず、常に何らかの団体と対立することでメディアを使って衆目を集めることが使命となる。
大阪の自民党・共産党や諸派と常に対立し、選挙時期に合わせて公明党と接近と敵対を繰り返す。橋下氏はメディアと果てない討論会を繰り返し、話術の拙い松井氏は記者クラブを抑えつける。その際、たいして考えていない、よくわからない内容の話題を投げてその問題を混乱させて話題を炎上させる方法は「敵と戦っている」という点では最高のイメージ戦略かもしれないが、問題がこじれ、対応した人達は彼らを敵として憎むようになる。
38news.jp(地位の高い人間が他人を口汚くののしる文章は見ていて気持ちが悪いが、理由を問わずどうしてもこういう怨嗟を作ってしまう)
そして、その一番が大阪都構想の住民投票であり、それに敗北してなおそれを蒸し返して暴れまわる様は多くの人に不快であるとか、攻撃的な議員のありさまは大阪に関係ない人たちに奇異の感情を起こさせる。
大阪維新の会はかなり強引であってもその行政能力は他の政党より優れているのに、人気取りのため好き嫌いで評価が分かれ、対話や政治的折り合いができなくなっている。
大坂の現状
大阪を悪く言う人が多い。ネットのネタで大阪民国なんてスラングもあるし、、犯罪率トップなんて汚名もある。なんでこんなことになってしまったかと考えると、交通・流通の拠点が大阪からずれてしまった事と中小の集団が多いこの地域で、十分にその調整ができなくなってしまったことがあげられる。しかし限界が見えた経済状況も改善の兆しと変わらない破滅の足音が聞こえる。
中国との関係
維新カイカク、松井・吉村体制のおかげでうまくいっている…と思いたいが、ここ数年の大阪の活況は維新とほとんど関係ない。もちろん、行政官達の表面上の態度がちょっと良くなったりしたかもしれないが、その程度である。では何がいいのかと言うと、観光客や不動産売買の増加、中国・華人の投資やインバウンドである。
しかし、中国本土では不動産を含むいくつかのバブルがついに終了したため、かじ取りにもよるが中国本土は今後経済停滞や高齢化問題に直面するステージに入る。そのため、この活況も持って5年と言うところになる。そのタイムリミットの間に効率化と新たな食い扶持を見つけなければならないが、その対策については一切触れられていない。
堺市の問題
大阪の問題が維新登場によって大阪府と大阪市の問題に集中させられているが、実際の問題はもう少し大きい。大阪市のすぐ南に堺市という政令指定都市が存在する。
大阪維新の当初案であれば、大阪府、大阪市、堺市3つの行政体を中心に統合してお金の集中運用をするはずであったが、選挙で負けてしまったため、お口にチャックしてしまった。
ただ、この堺市、もし俎上に上ったとしても吸い上げるだけの金があるかどうかは疑問がある。
一つは借金体質で規模の割には動かせる金がかなり小さいことであり、財政的に安定はしているけれど、逆に言えばそれ以上動かしたら壊れてしまう可能性がある。
もう一つはシャープの状況である。
2016年経営不振によって中国企業鴻海に買収され、大規模な経営改革が断行されたが、中国本土の段階的な不況により、どうも先行きが不透明になりつつあるようだ。
最悪の場合、グリーンフロント堺の大規模な生産見直しも考える必要が出てくるので、その場合、市税がぶっ飛ぶことも考えられる。
大阪にはこうしたかなり不安定な状況の市町村が他県よりも多く、果たして行政改革に耐えられるのか不透明な状況が続いている。
IRと万博
華人の動向を除いた彼らの功績として上げられるのが、IR(カジノを含む統合型リゾート)と万博(2025年日本国際博覧会)の誘致であろう。
東京から大規模な資金援助を元に港湾・沿海部の不動産開発を行い、現状でダブついて腐っている埋立地利用もできて一石二鳥である。使いどころのない資産を金をかけて整備することで、資産価値を一気に上げようとするのはかなりチャレンジであるが、施策としては「あり」であると思うが、大きな問題がある。
同じような小案件の手持ち不動産ワールドトレードセンタビルの運用が全くうまくできていないのである。このように行政が所有する物件でうまく資産運用できないものが大阪には多数あり、結局格安で売却というのが流れとなっている。
維新がいい悪いというわけではなく、それを担当する行政官に全く不向きな事業であり、建設、即売却ならいいかもしれないが、東京都の豊島再開発を見ても、かなり慎重にディベロッパーと計画を練らないとうまくいかず、その10倍以上、兆円単位の資産価値を持つ不動産都市開発をどうにかできる企業は国内に存在しないため、例え海外の投資家を引き込んでも計画が回る可能性はとても低い。
つまり、作っても運用する能力が行政になく、巨大な不良債権となる可能性が極めて高い。実はかなりヤバい計画なのである。松井氏のお父さんから続く湾岸利権を大きくしたいのはわかるが、それを仕切れる人も管理できる組織もないのは痛い、ヤバい。
現状として大阪は華人の投資によってかろうじて息を吹き返しているだけで、じつのところ10年前の破綻寸前の業態と全く変わっていないのである。
現状まとめ
大阪維新の会は他党よりまじめに地方政治に関わる政党であるが、各所に対立を抱えている。彼らが主張する「大阪都構想」と言う案には幅があり、必ずしも具体性のある改革手法ではない。また、それを受け取る大阪の経済は表面的に活況でもその基盤は不安定で、システム自体は維新登場前とほとんど変わっていない。
(その2に続く)
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