コメがない、コメが高い、コメの買い占めが…などなど米に関して話題だが、本当はどういうことなのか少し考えてみた。
(今週の一枚)まだ寒いけど春?(ヒヤシンス🌸)
米の価格の決まり方
米が高い。1年ちょっと前と比べて倍の値段になっている。いったい何が起こっているのか。塩のようにお国が値段を決めているのではなく、米の値段は自由化して市場の需要と供給で成り立っている。しかし、年々日本人の数は減り、米食への要求も減っており国内需要の減少は決定している。そのため、政府は減反を誘導して生産量を調整して価格を維持しようとしている。しかし、価格は去年から急激に上がった。単純に考えると米の供給が少なくなっていると考えるべきだろう。
2013~23の10年で主食用玄米60kgの価格12000~16000円を推移しており、2024年以降が異常に高騰していることがわかるが、同時に、2014年の米余りと2020年のコロナ禍によって一旦上昇した値段が一気に下落したこともわかる(農林水産庁過去に公表した米の相対取引価格・数量より)。
ここで面白い記事がある。
この記事によると2014年に米価が一気に下がったが、この年は平年並みの収穫量だ。その前年の豊作によって備蓄していた米が余ってしまったため、価格がかなり下がったということらしい。
つまり、米の量は一年単位で見るのではなく、バッファーとなる在庫米とその年の収穫量を見て価格が推移していることがわかる。
そのため、去年と今年の異常な米価の上昇は数年前から米不足が続き、各所の在庫米が不足していたために起こったことがわかってきた。
本当の米の収穫量と米価
農家の人と話をすると2024年も不作だと言うし、少なくとも豊作ではないと言う。しかし、お役所の発表だと豊作だという。いったいどういうことなんだろう。
この情報の齟齬は2点で作られているのではないかと思う。
まず1点は「平年並みで去年より良く取れた」という文章だ。この文章には肝心の箇所が抜けている。それは「毎年少しずつ米を作る田んぼを減らしているけど、米を作っている田んぼでは」という前文だ。
国は事実上の減反政策を維持しており、年ごとに生産量にがたつきはあるが米の生産量(作付面積)を減らしている。その減少傾向の中で米の良し悪しを論評しているのでおかしなことになっているのだ。
もう一点は「玄米の収穫量」について生産量を比較している点だ。我々は玄米を精米した白米を食べるが、その白米の生産量については一言も触れていない点である。
通常、玄米を精米する際、約1割減少して我々が食べる白米になる。これが古い米になると酸化してまずくなるので、その削る量を増やして米の価値を維持する。
ここ数年、この削る量が増えたり、我々が食べる所謂一等米の割合が気候変動(高温障害)によって減ってきている。つまり、いつも通り米が収穫できたとしても、可食(商品になる)の米の量はどんどん減ってきているのだ。特に2023年はその影響を強く受け、例年は8割が一等米になるはずだったものが6割弱まで減少したため、大規模なコメ不足に陥ったと考えられる。
つまり、単純に今年お米がたくさん収穫出来てよかったとはならず、米価を知るために必要な情報は「精米可能で品質が良い米の量」ということになる。
正確な米の流通量と政策
去年、スーパーから米がなくなった。これが大きなニュースになって消費者の買い焦りがニュースになった。それに伴って転売ヤーの買い占めが大きな問題となったのは記憶に新しいだろう。それによって小売価格はかなり上昇した。
しかし、今年はスーパーに米がある。少なくとも去年のような騒ぎになっていない。しかし、去年以上に価格が上昇している。これは去年とは異なる現象だ。少なくともエンドユーザーの我々の問題とは少し異なる。考えられるのは、小売りの価格が変化する前に卸値(農家→集荷業者→卸売業者→小売り→消費者の流れの中で卸売業者の買い付け価格)が競りで高値を付けた点だ。
上記から推察するに、卸売業者の在庫が去年の時点で枯渇しており、それを戻すために慌てて各所で買い付けが行われたようだ。米の価格は在庫量と今年の生産量のトータルで決まるので、在庫がほぼ0になった状態で一時的に需要が大きく上がり、価格が異常に上昇したのではないだろうか。
政府は「消えた21万トン」というフレーズを使って、どこかの誰かが買い占めをしているせいで米の価格が暴騰したと宣言した。
しかし、いったいどこの誰が買い占めをしたかについて、政府ははっきりとしたことを言わない。卸売りとしては安定的に売買をするために多少高くても買い付けるし、小売りとしても去年のような騒ぎは困るので少し多めに保管しておきたいだろう。そうやって少しずつ在庫量を各所で増やしたため各売買において価格が上昇して今のような状態になったのではないかと考えられる。
確かに悪い輩はいるだろうが今回の主原因ではないと思う。巷で言われるような転売ヤーが買い占めたとか、新規業者がうんぬんというのも確かにあり得そうだが、何十万トンもの買い付けを新人や素人にできるものではない。また、彼らが一体どこにその米を保存するのかという根本的な問題がある。食品は冷蔵保存できなければ劣化し、その価値は徐々に棄損する。米の場合はその価値下落は強く虫が湧いて最悪売り物にならないこともある。短期売買でどうにかできなければかなりリスク資産になる。そういったリスクを負って果たして何十万トンも在庫を抱えるような業者がいるのかは疑わしい。
また、政府が正確に米の生産量・流通量を把握しているのかも疑問だ。以前であれば、流通量のほぼすべてを集荷業者のJAが管理していたが、近年はその割合が半分を割る勢いだ。そのため、実質的に市場に流通・在庫している玄米の量や小売りで販売される白米の量について正確に把握できていない可能性がとても高い。
政府は備蓄米を放出してどうにか価格を安定化させるという策に出たが、どういった目途でどのくらいをターゲットにした政策なのかはっきりとしたことを言わない。これは「誰かが買い占め・・・」と大臣が言ったように、多分こんな感じなんじゃないかという暗中模索の中で行った行動に見える。
しかし、この備蓄米はブレンド米であり、価格安定後に買い戻すなんてリリースもあるので、どこまで効果があるのか非常に疑問だ。
見えてきたこと
どうも政府の農政はポンコツだ。おかしい。そこで、これを書くにあたって農政についていくつか資料を見た。押しなべていえることは就農人口は減り高齢化で土地を捨てるケースがここ数年急増し、急速に大規模化している点だ。
農林水産省はこれについてかなり問題意識を持っており(農業経営をめぐる情勢についてpdf)、役所から勧める形で地域全体を法人化・大規模化して少人数でも効率的に生産量を維持することを企図しているようだ。
(農業経営をめぐる情勢についてより抜粋、絵に描いた餅)
米に関しても、需要減を輸出やインバウンドにより補い、適切な生産量管理をすることで減少する農業従事者の収入増(作る量は同じでも作る人が減るので儲かる)を目指している。
しかし、先ほど書いたようにJAが管理していた時のようにはならない。法人農家は政府の言うことを聞かないようで、自由に作付けを増減させて独自に利益化を目指す向きが強くなっていることもわかってきた。力を持った農家が国を信用しない問題を多分に含んでいるようだ。
お国がなぁなぁでやってきたばら撒き(減反政策・個別保障や場当たり的な農業指導)はちゃんと農業をやる人にとっては邪魔で、管理されるとむしろ損をすることを感じて独歩で市場と向き合いだしているようだ。そして、大規模化するとともにその独自路線が増え、政府が見聞きできない生産物の流通が増し、今回のようなちぐはぐな政策をせざるを得ない状態に政府が追い込まれてしまったことが伺える。
今回の米価の急騰もコロナ禍前後からその兆し(就農者の激減、白米量の減少、米価の著しい変化)があり、何ら有効な対応を打たなかったのは政府農政の怠慢なんだろう。
まとめ
備蓄米放出と関係なくお米の値段はこれから徐々に落ち着くだろうだ。しかし、農家は大規模化することで生き残りを図り、利益を出すために彼らが生産量を独自で調整するようになるため、価格の安定化は難しいと思う。
ちょうどいい価格というものはわからないけど、ドラッグストアにあったような激安無洗米みたいなのはもうなくなるのかなぁと思う。
終わりに
色々調べてみると単純に米が足りないというのではなく、制度そのものが破綻しかかっていることが分かった。何とも困った話だ。
もし、お米が食べられなくなるなら……おうどんでも食べようかな(^ω^)
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