自由民主党の新しい総裁が石破茂氏に決まった。安倍政治からいろいろ変わった自民党を行く先を考えてみた記事
(今週の一枚)魔道キック(Pixiv)
安倍晋三元首相が暗殺されてから、自民党は大きく傾いた。内紛が続き、党のバランスが取れずにごたごたが不祥事として表に出て野党に選挙で負けるようになったが、これからどうなるかをぶつぶつ考えてみようと思う。
自民党総裁とネットについて
今回の総裁選挙は派閥崩壊によって9人も候補者が登場して各メディアを盛り上げた。非常に意外だったのは、小泉氏の具体的な政策説明が拙く、メディアアピールをさんざんやった茂木氏が全く票を取れなかったことだと思う。
ネットを使って東京都知事選でかなり注目を浴びた石丸伸二氏と同じような手法でアピールをしたかったのだろう。しかし、彼らのネット戦略はうまくかみ合わずに失敗した。ネットで人気を出す場合、かなり扇動的な発言や行動(現実を無視したレッテル張りなど)を伴わないと情報トレンドの上位にならず、マスに訴えることができない。そういう意味で明確な敵を作り馬鹿にでもわかる1分程度のキャッチーなショート動画を拡散する必要があるが、これをやると味方を得ると共にその同数以上の敵を作ることになり、政権を担う自民党の議員には難しいことだったのだろう。
従来の自民党の場合、ネット担当の宣伝屋は広告代理店経由なのだろう。しかし、安倍グループを除いたチームが今回もうまくいっていないことを考えると、従来の代理店経由のコンサルは能力が著しく不足しているのだとわかる。
一方で、安倍グループの後継である高市氏はかなり強い主張をする候補であり、派手に宣伝をすることに成功した。また、様々な政策を議員・政府の両面から経験した優秀な人だと思う。そのため、ネットやSNSとの親和性は高い。しかし、その主張の強さから敵が多く選挙に弱いし、調整をしないので身近な議員や官僚の支持が得られにくい。この欠点を亡くなった安倍氏が庇護することで補っていた。また、ネット戦略によって所謂ネット右翼の強い支持を得ているが、彼らは韓国で言う噴情系(怒りの感情を優先する)の人が多い。そのため、ネットでの強固な支援者が多いが一定の支持層以上に広がることが厳しい。これをネットやテレビの出演で一般層にまで強く訴える必要があったが、あと一声足りなかった。
こうしてみると、ほとんどネットに頼らない石破氏が勝利した要因は地方をどさ廻りし、元派閥長に頭を下げ、議員に根回しをした旧来の方法だったとわかる。XなどのSNSで彼の人気がほぼないのは公明党のように全くネット対策しないからであり、安倍氏の戦略によって人気が著しく棄損された人だともいえる。今回の彼の勝利を考えると、必要に応じた人的資源配分を考える場合、ネットの使い方はかなりはっきりしてきたのではないかと思う。具体的に言えば、継続的な情報発信とサクラになる妄信的な運動員の補充、それを支える強い主張と敵の指定ではないかと思う。
今回は9人がいずれもそれが十分には出来ていなかったので、安倍氏の遺産を使えた高市氏が一歩抜けたように見えたのだろう。
各候補の主張と現実
実のところ、今回の各候補の個別の強い主張はほぼない。小泉氏が言った夫婦別姓や高市氏の靖国参拝くらいで、その他の政策論はほぼ自民党内ですり合わせが終わっているためだ。今回の総裁選で、そのすり合わせの様子を討論を行う形で見せられたのだろう。石破氏が何を言ってもこの方向性は変わらない。
そのすり合わせた彼らと政府官僚の政策で今後の予定を簡単に書くと、消費税増税や金融所得課税などの政府の歳入を増やすこと、アメリカ軍の代わりに台湾を当て馬にして中国と対立すること、補助金をテック系や外国資本など特定分野に投資をすること、社会保障を3~5割削ることが主な目標になる。
これらは書き出すと庶民虐め・悪の権化に見えるのでなかなかうまくいかないが、20~30年かけて一つ一つ入れようとしてくる。
…とはいっても、現実的にこれができるかというと難しい。日本の経済を考えると、主要な衰退原因が予想を超えた人口減少と労働者比率の著しい変化(働く人より働かない人が多くなる)であり、金融にシフトしようとしても限界があることが最近分かってきた。例え100万外国人を入れたとしてもどうにもならないことが決定した。ボリュームゾーンの団塊世代700万人が労働者から要介護者に代わる。地方自治やインフラの崩壊と重なるので、ここ10年で一気に混乱が加速するが、その対策は結局誰もできなかった。そのため、増税が~とか、補助金が~と言っても妄想に終わる可能性が高い。
また、中国と対立!!!と力強く主張(アメリカに命令されて)しても机上の空論だろう。当の中国は不況(アメリカとの対立)と高齢化のダブルパンチで戦争どころではなくなる。また、中国政府は一見強く出ても戦争(局地戦でも)で負けられない。彼らには歴史的に共産党の正当性が失われるという強い恐怖がある。政治カード「戦争する」を持つが、かなり危険なカードなので普通は切らない。また、自衛隊、特に海上自衛隊は慢性的な人手不足と船を含めた機材の老朽化が限界を超え、一般哨戒にも穴が開きつつあるので、これ以上の任務増大は現実的に不可能である。現場を去った将官が強いことを言うが、ミサイルを積まないミサイル艦でボタンを押す兵隊がいないのにどう戦うのか不明である。
つまり、自民党の上位議員と政府官僚が目指す計画は現実離れしたものが多くなり、統治能力に疑問が出つつある。
安倍政治の終わり
前総裁の岸田氏は我々に語り掛けない人だった。表面上ペラペラしゃべるが、何を言っているかわからないし、やったことを説明もしなかった。実際にやったことを並べると、安倍氏の作った強い内閣府の破壊、安倍氏が企図したアメリカとの対等な防衛関係から従属型への回帰、たくさんいた安倍派閥議員の無力化、安倍グループが否定したコロナ禍以降のばら撒き政策やアベノミクスで行ったリフレ政策の巻き戻しなど、簡単に言えば10年かけて行った安倍氏周辺の政治主導政策を官僚主導政策に戻すことだったのではないかと思う。これにより安倍政権の失敗や行き過ぎを調整することである程度の安定を確保した点は素晴らしい実績だと思う。
しかし、本質的な問題は残ったままだ。アベノミクス3本の矢、トリクルダウンなどの経済政策は途中で破綻し、外国人労働者を大量に受け入れることで建前上維持しているだけだ。年金ファンド関係やNISAで利益を出すが、その多くがアメリカ株を中心とした運用で、日本国内に金が還流せず、数字上金儲けできても実際は貧乏のままになっている。日銀金融緩和はアメリカと動きを同じにすることで景気を上向かせたが、アメリカが逆に利上げをした際、それに合わせる動きができず、円安を止めることができなくなった。
安倍氏の目指したアメリカからの独立や他国との対等な国としての外交は未来があったし、経済政策の失敗を貴重なノウハウとして次の政策に繋げることができるはずだったのに、その人員を引き継がず終わらせてしまった点も問題だろう。
安倍政治がもたらしたものは賛否両論だが、成長時代に機能した官僚体制ではすでに下り坂の日本での国家運営は難しい。人・金に余裕がない状態で官僚個人や省庁ごとの独歩政策では徐々に身動きが取れなくなっているが、果たして石破氏以降の総理大臣が統一した自民党の政策を実行できるかには大きな不安を感じる。
石破氏のこれから
石破氏個人にはあまり強い政治理念はない。彼は地方創生だと言うが、どんな創生なのか青写真を見せろと言うと、それはみなさんが考えることですと言う。金を配る利権は増大しそうだ。外交防衛が大切だと言うが、アメリカ地位協定改定(憲法改正が前提)や東アジア版NATO(中国を過剰に刺激)は現実感がない。アメリカと独自の交渉ルートもないので、どうやってこれからワシントンやウェストポイントと連絡を取るのだろうか謎である。
彼は基本的に党内野党であり、実際に頑張っている人に文句を言うお客さんの役割だった。だから、党の要職を得るとまとめられないし、政府に入っても具体的な政策を取りまとめたりしない。責任を実行者に任せて自分は傷を負わない非常にうまい政治戦略であるが、政治主張も相手に預けているので議員同士でもまとまらず、政治グループを作っても機能させることができなかった。数・票は集められるが、それをどうこうできないのだ。
つまり、新進党に移ったり、党内野党を演じたが、彼は根っからの田中角栄以降の自民党そのものなのだと思う。そういう意味では岸田氏が戻した政治体制の官僚とはとても親和性が高いのではないかと思う。もし、彼が成長時代の日本で「ふむふむ良きに計らえ」と言っていればいい首相になったのだろうが、今の官僚に責任を負わせたら彼らが耐えられないと感じる。
また、彼の支持母体はプロテスタントである。麻生氏や谷垣氏のようなカソリックでも、安倍氏のように統一教会を含む新宗教でもない。信者数が少ない中小団体で仏教グループをどう抑えるのかは未知数だし、明確に対立軸のあるキリスト教系との協調をどうするのかは興味深い。
また、村上氏(亡くなった安倍氏を国賊と揶揄した)を総務大臣したり、林氏を官房長官に再任したことからも、安倍グループを排除した岸田政権の続きになるのだろう。
これらから、ざっくり予想すると、組閣後、総選挙で2割くらい議席を減らして挙党一致体制を取るために今回総裁選に出た残り8人を全員入閣・党要職につけるようなバランス人事をしようとしつつ、対立した長老議員の利益誘導をすると思う。また、アメリカからの要求はほぼ全飲みで外交の安定を図り、経済政策はばら撒き優先で金融政策で弱い円高誘導で物価の安定を図るチグハグ政策になるのだろう。また、不満が高まると、与野党問わず小出しで政治関連問題がマスコミにリークされ、怒りの矛先を常にかわすようなスタイルで、選挙をやるたびに少しずつ議席を減らす形になる。自民党議員の我慢の度合いにも依るが、大きなショック(戦争や天災や経済不況)がない限り、2年程度政権を続けて最後に国民が私を選んだから的な責任逃れをして去っていくような気がする。
終わりに
良くも悪くも安倍氏あっての自民党だったんだろうなぁと思った。しかし、もう彼はいない。昔には戻れないし、進むための資源も限られた状態でどうするのかは結構難しい。野党も崩壊しているし、政治が冬の時代に突入したのかもしれない。
まぁ、我々は3食昼寝付きに幸せを感じる程度の生活を心掛ければいいのかもね(^ω^)
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