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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

本当に中国が世界を食べつくすのか

飲み屋で飲んでいると、中国人がたくさん魚を取ったり食べたりしてそのうち魚が高くなって食べられなくなるという噂を聞いた。ホントかなぁとちょっと調べてみた。

 

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(今週の一枚)焚火には不思議な魅力がある(pixiv

 

報道で各論を見る

 飲み屋のおっさんや酔っぱらってする時事ネタの多くは基本的に新聞や週刊誌、それを元にしたネットの謎ゴシップが多いんだけれど、たまに専門家がコッソリ混ざっていて侮れない時がある。

 実際、消費税増税の成果もあって、○○水産の飲み屋で一杯ひっかけて財布を見ると以前より寂しくなることが多いから、このうわさが嘘かどうかわからない。

 そこでつらつらとまず報道ベースで記事を調べてみると日本が海に行って取る魚の量が減っていることは間違いないようだ。例えば、サンマである。

www.nikkei.com

 特に去年から著しくとれなくなったらしい。同じようなことはイカサケサバなどでも言われていて、相場は高騰しており、お魚定食の値段も一段と高くなってしまっている。

 この原因としてはいくつかの説が混在しており、一つは各国の漁師が考え無しに取りすぎた結果という説や日本近海の海流が変化したため今までの方法では魚が取れなくなったという考察北朝鮮・中国が違法操業で我々の水産資源を盗んでいるという言説などがあり、記事だけを読む分にはそれぞれがそれなりに説得力を持つ。

 一方で、消費傾向を見ると、日本人は依然として消費量は多いが徐々に魚を食べなくなっているので、需要としては減少している。また、中国人が以前よりもたくさん魚を食べるようになったというのは事実であるが、中国の魚料理・海鮮料理と言えば基本的に淡水魚であるので、わざわざ海にまで行って彼らの好む味でない海水魚(文化的にあまり食べない)を珍重するかと言われれば、ちょっとと疑問が残る。

funnyasia.net

 

漁獲と養殖の行く先

 記事ではあれこれ言っているが、もう少し深く一次情報に触れてみる。

 第二次世界大戦後、日本人が徐々に食性が変化していったように、改革開放後、中国人の食性も穀物を中心としたものから変化しているらしい。お金持ちになったのだから、コメもいいけどやっぱ肉だよね!ということで、彼らもいいものを食べるようになった。中華料理と言えば豚肉であるが、生産・消費量が1990年ころから目に見えて増加している。

www.alic.go.jp

 また、ここ数年海外からの豚肉輸入量も激増しているが、これはおそらく中国国内で生産が追い付かないというより、豚コレラの影響で各地の畜産業が壊滅的打撃を受けたため、緊急的に輸入量を増やしたことが原因ではないかと考える。

www3.nhk.or.jp

 こういった急速な食生活の変化は当然魚にも及び、一人当たりの水産物消費量は増加の一途をたどっているようだ。ただ、この傾向はアジア全域で同様のことが起こっており、一概に中国のみの現象と言うわけではない。

 また、この水産品需要で重要な点は中国国内の消費は養殖魚がその中心になっている点だと思う。

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水産庁・世界の漁業・養殖業生産より抜粋

 調べてみると、淡水魚やノリなどは中国国内養殖の大部分を占めている。また、世界の漁獲量は国際海洋法条約によって漁獲可能量と漁獲努力可能量が制定されている。中国単体の漁獲高自体は大きく年間1800万トン近くあるため、周辺海域での影響は大きいと考えられるが、地球全体で人間が海からとる魚の量は1980年後半以降横ばい傾向となっているため、よく言われる「魚の取りすぎで魚がいなくなる」という現象は地球全体では考えられず、局地的な現象と見たほうがいいのかもしれない。

 トン数が少ない海水魚もビジネス化できれば大規模に養殖を行い、いくつかの魚種ではすでに世界最大の規模になっている。

innoplex.org

 中国漁船が乱獲を行っているという主張はその通りだが、日本もかつて沿海・近海問わず水産資源を取れるだけ取って、巻き網でマイワシなどが激減して採算が取れなくなるほど漁獲量が減少したので、中国も同じように燃料コストなどを含め採算性から遠くへ魚を取りに行くのは減りそうだと思う。

 これは中国政府も当然分かっているようで、第13次5か年計画(pdf7章7.4辺り)を読んでも農林水産業を量から質へ転換する方向性へ舵を切っているので、これ以上の漁獲高変化は起こらないのではないかと思う。

 

 つまり、ビジネスとして中国漁業を捕えると、採算性の良い食材、例えば、マグロやサメ(フカヒレ)などは取るが、収益性の低い雑魚は無視をして金儲けするのだろう。

 また、高級魚の行く先を追ってみると冷凍・加工品となるが、輸出先の多くは日本かアメリカとなり(ジェトロ 世界貿易投資報告 2019 pdf)、国民の食を満たすというより外貨獲得戦略の一環と考えるべきなんじゃないかと思った。一見、中国が乱獲しているように見えるが、北西太平洋全体の漁獲高もここ30年変わらない(国際漁業資源の現況pdf)。つまり、海の魚を取る人は変わっても食べる人はあまり変わっていないのである。

 中国漁業・加工品の消費先は日本であるという事実はあまり報道されないし、色々都合の悪い人がいるのだろう。

 

 

中国の人口推移から消費を予測する

 条約で巻き網や地引網ができなくなってきて、中国人に代わりにやらせて日本人が食べるという実態が見えてきたが、中国人自体、日本人の10倍近くいるので、海水魚の消費量もそれなりにある。このまま食性が変わったり、中国人がどんどん増えれば、当然海水魚を食べる量も増えて、我々が食べることのできる魚も減ってしまうだろう。

 

 大変だ。

 

 では、これからどのくらい中国人が増加して、たくさんのお魚を食べるんだろうと考えて、中国人の人口増加推移を見てみると…そんなことは起こらないようである。

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(国連 Department of Economic and Social Affairs Population Dynamics より抜粋
 

 2025年以降予想の中央線では急激に中国人の数が減り、少子高齢化が著しく起こる。また、一般的に食性と言うものは子供のころに味覚の多くが決定してしまうため、好む味と言うものはめったに変わらない(例えばマクドナルドの戦略)。今後、それほど海水魚を食べなかった中高年の割合が増加するとともに新しい食性を得る可能性のある子供の絶対数が減少するので、今以上に総体として中国人にとって変わった食品(この場合海水魚)を食べる量が増えるとは考えにくい。

 もちろん、中国国内で食べるものがなくなって緊急的に輸入することや中国政府が強権的に行動する可能性もあるが、そういった場合、まず真っ先に起こることは今あるものを維持しようとする。例えば、上で書いたように豚肉が国内で調達できなければ輸入し、豚が輸入できなければ、それと似たような肉を探し、それでも見つからなければ牛肉を渋々買い付けるだろう。

 つまり、中国人が食いしん坊だからと言って、我々の食卓から魚がなくなることはない。

 

終わりに

 調べてみると中国の食べ物の維持管理をしようとする姿勢はかなりしっかりしていて、それでも苦戦していることに驚いた。一方で、日本が想像以上に適当にやっていてイメージとのギャップに驚いた。

 もし、食卓にお魚が登らなくなるようなことがあれば、それは遠くの中国人が原因ではなく、近くの日本人が間抜けなんだろう(;´Д`)

 

 

 

 

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