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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

ブルトーザーとアベノミクス

アベノミクス”という単語は最近使われない。施策として挑戦的だが、うまくいっていないため、賛成側は黙り、反対側の多くは無理解のため忘れ去られようとしている。今回は素人なりにこれを見返してみようと思う。

 

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(今週の一枚)暑い。(pixiv

 

※目次※

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安倍政権の経済政策への見方

 手始めに、各官庁や研究所のデータもいいが、経済のプリズム:参議院の資料がなんだかんだで一番わかりやすく(無料で)政策と経済動向を見ることができるんじゃないかと思う。ここにある論文や時系列チャートを見ると相対的に2017年度から急速に経済が悪化し始めていることが分かる。

 従来の安倍政権の手法は「期待」つまり気分に訴えかけて、消費を喚起することに主眼を持っていたし、それで時間稼ぎをして様々な経済政策を行おうとしてきたが、その「期待」もついに限界を迎え、革新的な政策は間に合わなかったことを示している。

 頑張って欲しいなぁという立場であったが、「あぁダメだったのね(´・ω・`)」 というのが自分の現政権の経済政策への見方である。

 

アベノミクスってなんだろう

 民主党の悪政から第2次安倍政権が誕生して、彼らは様々なスローガンを立ててきたが、それに対する結果の評価はあまりされない。アベノミクス3本の矢、セキュリティダイアモンド構想、地方創生、働き方改革などなどパッケージで新政策を語る様は何をやりたいかわかりやすい。

 アベノミクスについてはそろそろ答えが出てきており、自分は概ね失敗だったと評価するが、これっていったい何だったんだろうかを思い出してみる。

 

アベノミクスの概略

 難しいことは専門の学者さんのコラムなり論文を見ればいいが、アベノミクスの視点を一言で言えば、「お金の流れ」であると思う。

 お金は物や信用の引換券であり、これがたくさんあることは物や信用がたくさんあると言える。だから、一般的な「お金持ち」とはその引換券をたくさん持っていることであるが、実際はその引換券をたくさん借りられる人がお金持ちである。

 1億円持っていても、持っているだけで価値がなく、10億円借金して事業・投資をしている人をお金持ちという。つまり手持ちのお金の量よりも、お金を動かしている人の方が価値があるという考え方である。

 従来の経済政策では物が動いて、それに伴ってどう金が動くかで方向性を決定していたが、その発想を逆転して、お金の動きを主に見ることで経済をよくしようとしたというのがアベノミクスだと思う。

 だから具体的施策もそれに乗り、1、お金をたくさん作る 2、それを広く配る 3、その流れにみんなが乗る がアベノミクスの概要と言える。

 

安倍政権の動きとアベノミクス

 安倍氏を中心としてスローガンを出したが、実際の行動はどうだったのだろうか。

 まず、アベノミクスと加計学園の本質 その1 でちょっと書いたが、お金をたくさん刷ったがそのほとんどを消費税増税国債買取で消化して、実際に新規発行分のほとんどが市中に回らなかったと見ている。つまり1本目の矢で終わっている。

 政府の補正を含めた決算を見ると分かりやすい。政権開始から強引に行ったとすると2013年度からの運用になると考えてみる。

www.mof.go.jp

 これを見ると安倍政権は2013年当初こそ社会資本整備事業として1.3兆円、東日本大震災復興として+0.5兆円特別会計に積んでいるが、それ以降の積み立てはない。つまり付け回し(特別会計→一般会計→未使用の特別会計送り)で少しずつ消費して、実際はほとんど配っていない。

 そのため、当然消費の呼び水とならず停滞したのだろう。

 

 スローガンでいった事と実際やったことが全く違ったので、当然結果も出なかったということになる。政府自体の資産運用(為替介入やGPIF)は上手くやっているが、あくまで政府内のシート改善であって、アベノミクスが志向する国全体の資本流動性の改善はできないかったと言える。

 

なぜ有言不実行だったのか

  安倍総理を見ていると一生懸命に努力をして世の中をよくしようと彼なりに頑張っているなぁと思う。でも、言った事をやらなかった。どうしてだろうか?

 

ブルトーザーの呪い

 国の公共事業費などのお金の使い方の話で、最近の流行りは財務省(旧大蔵省)叩きで、極端な論者の場合、財務省がおかしな理論の元に日本の未来より自分たちの省益だけを見ている!なんてのもある。・・・まぁ一理ある。

 しかし、実際に彼らが財布のひもをきつく締める大きな理由の1つは、莫大な社会保障費、つまり若者から老人への搾取が止められない構造的な欠陥の元、なんとか国家運営をしているためだと言える。

 もう一つは、過去にあった「政治主導」によって国家が歪んだという前例があるためともいえる。今では考えられないが、1970年当時公共事業を中心にした政官業の汚職・癒着が異常な状態になっていて、例えば、東京で5億の道を作る入札があるとすると、それを取るために、政治家に3千万4千万献金するのは当たり前で、そのおこぼれを公務員にばらまかなくてはいけない世界があった。

www.asahi.com この「政治主導」を扇動した田中角栄はこういったかつて一部の都市だけで行われていた癒着システムを日本全体に広げて、支配の体制を確立したが、それによって国家が機能不全寸前までいった経緯がある。「日本列島改造論」なんてかっこいい見出しであるが、中央から金をとってみんなで汚職しようというのが本論だったのは笑えない。

 www.mlit.go.jp(↑名簿から色々掘れるがここでは書かない。)

 こういった資金分配システムを管理する政治家は今ではほとんどいなくなり、公共事業は公明党創価学会が管理するようになったが、依然として財務側としては怖くてたまらないから、引き続きお財布のがま口を締めているのだろう。過去の経験、ブルトーザー総理の呪縛で官僚は動かなかったともいえる。

 

ブルトーザーが足りない

 官僚が委縮しているのは事実だろうが、一時的にしろ安倍政権では公共事業費をばっと増やした。震災関連も含めると相当の額だが、その金に手を付けないままノロノロして、時間切れになった感がある。

 これはいくつも入札を出したが、多くの入札が不調に終わったからである。各所に仕事を依頼しても、なかなか受けてくれないのである。

例えば、 業界紙でもいいが、↓ではかなり扇動的に書いている。

相次ぐ公共工事の入札不調がなぜ起こるのか、元建設会社社員がシンプルに解説

 こういった愚痴のような記事群を総合すると、「割に合わない」と言うのが答えがでる。付き合いではやるがわざわざ取りに行くほど公共事業に価値がないと業者側が経営的に判断していると言える。

 また、実際に仕事をする人の数が極端に減っていること(建設経済研究所)、ブルトーザーなどの重機の数を減らし、リース化することで効率化したため、イレギュラーがあった際に必要なブルトーザーの数がそろわない(土木学会論文集F4, Vol. 71, No. 4, I_85-I_95, 2015. )ため、やりたいと思ってもできないという現実がある。

 

 直近の分かりやすい例とすれば、西日本豪雨災害で、大量の産廃やゴミが出たが、みんなでえっちら人力作業である。ブルトーザーやショベルカーで集めて、ダンプカーで運べばいいのに、自衛隊の特殊車両以外こういった重機はほとんどテレビに出てこない。これは実際にこういった特殊案件に回す重機の数がないからである。

 

 同じような効率化が様々な業種で占めていて、土木の公共事業にかかわらず、従来型の金のまき方をしても全く効果がないということが補助金関係でも目立っている。利益が出ないので、金をもらってくれないという段階まで来ているのである。

 

理想と現実

 過去のブルトーザーの幻影と現在のブルトーザーが不在が日本の現状だと思う。

 アベノミクスがうまくいかない原因は、他にも金融(銀行)の硬直化・機能不全、人口減による経済の縮小、資金獲得方法の多様化など様々だが、アベノミクスの結果をまとめると、実態に合わない理論を掲げ実際にやってみたが、一時的に成功したが、それ以降袋小路に入ったというのが正しい答えだと思う。

 

 アベノミクスの「お金の流れ」を見る理論はとても優秀だと思うが、「ものが十分にある」という前提があって初めて機能するのではないだろうか?

 ものと人がそろわず金だけがダブつく現状を見ると、強くそれを感じる。

 

 ここ数年、安倍氏の周辺の評論家が訳知り顔でこの理論を展開したが、5年間維持できなかった。お金の流れを見ることは重要な因子の一つであることは間違いないが、因子の一つであってすべてではない。

 民主党は「埋蔵金がある」ということで、彼らに騙されたが、安倍氏もいまのままでは同じような道をたどるような気がする。

 

終わりに

 自分は人口分布の歪みと異常な効率化が原因で、日本の経済不況からなかなか脱出できないと思っている。これを解消するのはとても難しいとも思っている。だから、アベノミクスは失敗・停滞したが、少なくとも、安倍氏民主党の悪政と経済不況に果敢に立ち向かった姿は我々に「まだいける」という勇気を与えてくれたのは間違いない。

 

 ブルトーザーのように既得権益をまとめて処理しようとする彼の姿勢は見習わないといけないなぁと思うが、彼とその周辺は一端止まって現状の問題の洗い出しが必要な時期に来たと強く感じた。

 

 

 

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