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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

ニコニコ動画とその衰退を考える その2

長いので2つに分けました。こちらはその2です(→その1

こちらでは先日行われた発表会の失敗について問題点を述べて、自分が思うニコニコの価値について述べています。

 


・発表会の失敗
 ここでやっと本論になる。
 先日行われたクレシェンドの発表会において、代表取締役会長の川上量生氏とドワンゴ取締役の夏野剛氏が機能説明後に登壇した。
 川上氏に対しては、腹が出ているとか、顔がキモイとかひどい言われようであったが、起業家、企業家としては一流の人で、人脈と情報へのアンテナの広さから言えばなかなか稀有な存在だと思う。業績を見ればまさに成功者のそれではないだろうか?
 ただ、今回のプレゼンテーション単独で見ると、中立的に見てもよくなかったし、彼の苦悩が見えたような気がした。たくさんの意見や改善点はあると思うが、自分には大きい問題が3つがあげられると思う。


 一つ目はビリビリ動画に関係者が接触して、ある程度の資金を含めた関係を持っていた(る?)ことを公の発表に混ぜていってしまった事である。

 この中華サイトはニコニコのパクリサイトで機能もほとんど一緒である。あちらは表から裏からニコニコに接触しようとしていることは噂されているが、明確にそれを認めてしまったのはいけないと思った。あの場では接触はあったが、明確にその関係を断ったというべきだろう。
 これはドワンゴが一般企業化しようとしているのに、違法投稿を当たり前にやっているサイトを認めているように見え、kadokawa側への負担になるし、ユーザーを繋ぎ止めようとしている会なのに、他サイトを宣伝しているため、非常に悪手だと思う。


 二つ目は真摯に答えてしまった事である。
 他のインターネット関連企業よろしく、日本のこういった企業には技術力なんて元から存在しない。どこかの偉い人たちが作ったものを上手く利用したり、組み合わせて儲けているのであって、基本的なシステムを一から作っているわけではない。
 だから、しっかり整ったそれを買うには莫大な資金がいるし、それを扱える人は数えるくらいしかいない。もちろん、ドワンゴはそういう会社ではない。
 まともに現状のシステムのメンテナンスもできないのに、新しいものは作れない。
 そんなことは公然の秘密であるのに、川上氏はそれをやりたいけどできないと言ってしまったのである。困っているのでわかってほしいと言ったら、誰も納得しなかったというところだろう。


 三つ目は想定問答がなかったことである。
 これは2つ目の関連とも言っていい。質疑応答冒頭において「ニコニコはいつ潰れるんですか?」とパンチが利きすぎた質問が来たが、それ以外の質問はほぼすべて発表会前に想定されていた質問であると思う。
 つまり問題に対してあらかた予習ができ、あしらうことができるものであったし、答えられないのであれば、途中で夏野氏が打ち切ろうとしたように逃げるべきだったと思う。
 こういったプレゼンテーションでは見たことのないような川上氏の狼狽と繰り返される検討中…といった応答には不祥事の起こった企業の謝罪会見のような様相が見え、イメージをポジティブに押すはずが、逆に投資価値がないことを印象付けている。なぜ答えを持たずに質疑に応じたのか全く謎である。

 


・ニコニコの価値

 今回の発表会前後から、ニコニコに求められるものは高品質や使いやすさの「インフラ」であると至る所で言われている。発表会の大部分もクレシェンドについてではなく、この問題についてであった。

 しかし、その1でごちゃごちゃ書いたように、外身は立派でも、中身では当初からニコニコにはそんな能力はないし、まともな運営なんてできていない。でも、かつて同じようなサイトがたくさんあったし、Youtube以外のサイトはみんな押しなべてダメになったのに、ニコニコだけが生き残ってきた。
 もちろんエロを主体としたFC2やいくつかのアングラサイトもあるが、普通の動画サービス主体としてはどこも数年で閉鎖や規模縮小されているのに、ニコニコだけは少しづつ規模を拡大していった。
 これは様々なアプローチで新規のユーザーを獲得し続けたことが大きいし、彼らが少額であっても課金したことがネックになっている。ニコニコに対して、これまでけち臭い日本人200万人以上が一応なりともがサービスに対して納得して金を払っている。これはすごいことである。


なぜこんな微妙なサービスとよく展望の見えないサイトにみんな払い続けるのだろう?


 金を継続的にもらうこと、特にネットユーザーからいただくのはとても難しい。
 エロを売りにすれば、資金の流動性は生まれるが、運営は限りなく難しいし、アングラ化しやすい。他の新興のサイトや課金スマフォゲームのように大口の資本家や顧客に頼るとそれらの撤退と共に一気に死んでしまう。また、大規模に設備投資しても海外の巨大資本には絶対勝てない。
 こういったインターネット企業群の中で一定の位置を保ち続けてこれたのは東方やMMDなどの独自コンテンツとそれを支える集団であるという至極当然の議論もあるし、もっともだと思うが、それも少し足りないと思う。ニコニコでは別にこれらを優遇したかもしれないが、保護したわけでもなし、もちろん権利を持っているわけでもない。また、うまく発表の場になったり、商品化できてもいない。
 小さな同人活動が中規模になって知名度を得たといった効果はあったとしても、規模が大きくなると活躍や儲けを求めて常に外部にコンテンツが逃げている。

 

 だから、ニコニコの金を払う価値はインフラとしてや、サイトやコンテンツそのものではなく、次々に現れる現象への「煽り」なんじゃないかと思う。


 ニコニコの中にはダイアの原石はたくさんあるが、磨くとどこかに飛んで行ってしまう。残っているものは泥がついていたり、なんとなく変なものがたくさんある。それだけ単体では無価値なので、それを使って、ユーザーを馬鹿にしたり、ほめそやしたり、とにかくイライラさせたり、感情的にさせる。
 陽に陰にこういった煽り工作なようなことをして、コンテンツとして価値があるかどうかわからないものでも、囃し立てて扇動するのがニコニコの本質ではないだろうか?

 しかし、ここ2年くらいはその意図的な悪意のある煽りがなくなっている。

 今回の発表会を例にすれば、クソみたいなニコニコ(苦)のゴミプレゼンの後、イラついた「ニコニコはいつ潰れるの?」という質問の後、夏野氏がブチ切れたり、質問者が突撃すれば伝説になったし、インフラ質問はあやふやになり、なぁなぁで進んでいただろうが、そういった遊びはなく、普通の長い経営者反省会になった。
 川上氏は誠実にやろうとしたし、みんな真面目にこれからのことを話し合っていた。


 美しい。


 でも、そこには納得する結論は出ないし、感情の起伏を起こす煽りになっていなかった。むしろ現実的な問題への感情を鎮めようとしていた。ユーザーはそんな平たいものは誰も求めていないのではないだろうか?
 人は綺麗な物、楽しいものを見たいというが、実際は見るもの自体は宝石でもゴミでも何でもよく、自分の内の感情を変化させたいという欲求を満たしてくれるのがニコニコの価値なのではないかと思う。だから、このサイトを訪れるとなにか心がささくれ立つ情緒に価値を見出いして、みんな金を払っていたような気がする。

 

 

・迷走と衰退

 みんなでヘラヘラと笑い、イライラと書き込みをして、中途半端な動画を補完したり配信者をからかって遊んでいたのに、いつのまにかそんなものはどんどん見えなくなってしまった。
 調整された完成品が綺麗に並び、作る側も見る側も真面目に頑張る、お行儀のいい姿が見える。
 でも、それならしっかりと完成品を作ってテレビに売ったり、儲かるYoutubeにいくわな、というのが利用者全員の本音なのではないだろうか?

 

 これはほとんど私見であるし、たくさんの間違いを内包した意見だろうが、発表会から見えてくる彼らの行動からはどうしてもニコニコが迷走し、おかしな方向に舵を切っているようにしか見えない。

 いずれにしろ、終わりが見えてきたサービスにちょっと哀愁が湧くが、これも時の流れなんだろう。

 

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