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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

教育の理想と現実を外から見る

友達の話すと、親として教育の悩みを聞くことがある。ちょっと興味が出たので、義務教育の問題と展望をちょっと考えてみた。

 

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(今週の一枚)15のねこを探せ!(答えは記事最後、pixiv

 

 自分には子供がいないので父親や母親の気持ちは理解しても感じることはない。やれ教育が~とか言われてもなんとなく興味がわかなかった。でも、最近になって、同年代の親や教育側と喋ることもあったので実際どうなんだろうかと考えてみた。 

 

理屈と現場

親側から見ると何やらよくわからない教育制度であるけれど、施す側から見ると何か見えるのかもしれない。

教育の理想と齟齬

www.mext.go.jp

 日本の義務教育の賛否には不明な点が多い。これは施してから結果が出るまで何十年も成果が分からず、また、教育の成果かどうか明確に結果を定義しないためなんだろう。

 そういった意味でお役所の情報を見ると、「現状の方向性」を変えようとするのではなく、今あるシステムを如何に良くしようかといった試みをずっとしていることがうかがえる。

 テーマとしても多岐にわたっていて、大学進学の促進、いじめ撲滅、給食とアレルギー、道徳の再考、グローバル人材育成など、子供や親の視点に立っての教育の充実を図ることに重点を置いて、教育の質をあげようと試行錯誤をしていることがうかがえる。

 ただ、ここで大切な注目点がある。「現状の方向性」の維持と書いたが、この方向性が、実は、一回大きく変わっている。

www.mext.go.jp

 平成14年から実施されたいわゆる「ゆとり教育」である。文部科学省から中教審教育委員会、PTAとある組織構造としても大幅に意義が変わっており、これを前後して義務教育の内容も全く異なるといっていい。

 大切なことは方針は平成14年から一貫しているが、平成13年以前とは一貫していないということ、お役所的にすでに10年以上同じことをやっていても、親(平成13年以前教育を受けた)としては子供の「教育が変わった」(自分が受けた義務教育と違う)という認識の齟齬が生まれることである。

 いわゆる教育評論家や官僚の言う話は平成14年からの情報なのか、それより長いスパンの情報なのかで全く意味が違うので、親としては大きく混乱する元になるようである。

 

教育の実際

 では、実際に新たな「理想の教育」を提示された親や教師はそれに対応してうまく制度を理解したり利用できているかと言うと…なかなか理想通りにはいかないようである。

  理想に沿って、親はより多く学校に求めるようになり悩む。しかし、先生たちの愚痴をまとめると、理想ばっかりの上司(官僚)とわがままな客(親)の板挟みで、義務ばかり増えて権利がなくなっているそうである。所謂ブラック企業社畜のような状態で、次々と現場が崩壊している・もう耐えられないというのが本音のようだ。

www.kyodo-bukatsu.net

 特に問題になっているのが2点、英語教育とデジタル機器の導入である。

 英語教育に関しては、情緒が整う前の小学校教育に英語を入れて、果たして効果があるのかという教育の質以前の根本的な疑問もあり、現場はかなり否定的である。

www.fenet.or.jp

 デジタル機器導入に関して国を挙げてICTだっ!情報革命だっ!と叫んでいるけれど、先生たちと話した時にはやんわりと「たぶんうまくいかないだろうねぇ」なんてことを言っていた。

 理由は簡単で、教材の質が担保されないかららしい。壊れたらどうするかとかそういった現実的な問題を一切無視して進んでいるようである。財務側からみてもとても一括で揃えられないので、中途半端な配備でお茶を濁すようである。

shikyoiku.net(ある程度余裕のあるとされる私学でも厳しい)

 

 非常に驚いたのは子供の質は過去と比べむしろ向上しているのに、教育側が現状の変化やプレッシャーに耐えられるだけの余力がないため、絵に描いた餅であることを教員側が言っても、親や上部組織が理想に沿って現実を無視をしている点であった。

 

 

 

実際に聞いた小噺

 ちょっとした上と下の小噺を書いてみようと思う(聞いた話なので少し大げさに盛られている可能性がある点はご了承ください)。

 

金持ちの密林

  某有名幼稚舎、小学校に入っている親と話すことがある。非常に面白いのが、彼らの学校に対する認識は教育する場所ではないという点である。高い授業料を払ってさらに寄付金を納め、場合によっては送り迎えをするような場所に教育を求めていないのである。

 彼らがその学校で求めているものは所属(ステータス)と親の人脈のみでほぼすべての親は子供の教育を他の施設で行うことを前提としているらしい。だから、出席日数ギリギリだったり足し算引き算もできない子もいて、学校側も大きな問題を起こさない限り、最低限の指導のみであとは放置するみたいである。

 また、本来の教育はさらに金を積んで勉強や運動や芸について専門的な指導者の下で非常に特殊な訓練をするためピンポイントで優れた子が多いそうである。逆に、そのような教育を親がしない出来ない場合、子供に極度のストレスがかかるようで、心身症になったり、犯罪集団を形成することも間々あるようである。

 つまり、一見有名学校に進学した子供は何不自由ないように見えるが、実際は入学時点で親の資金力による圧倒的な教育格差と子供同士の縄張り争いのあるジャングルが学校に生まれ、子供たちはそこで戦い続けているのである。親が中途半端に金やコネを持っている程度ならむしろ入れない方が子供にとって幸せなのではないかとさえ思った。

 

最後の教育の網

 問題行動を繰り返す子供の更生を支援する施設の人と話したことがある。彼らの視点もまた興味深くて、子供の色分けをしている点がはっきりしていた。幸か不幸か、貧乏であろうが金持ちであろうが、問題児は一定確率いて暴力や麻薬、性問題に傾倒するのだけれど、その原因は大きく分けて2種類あるらしく、「家庭の問題」と「先天的な異常」に大別できるらしい。

 「家庭の問題」で問題を起こす子供は粗暴であっても更生の余地が十分にあり、プログラム終了後、社会に戻すとむしろ一般児童よりしっかりと生きて行けるそうだ。だから一般に施設として優先する点は子供に安心や余裕を与えることであり、教育で多くの状態が改善するらしい。ただ、残念なことに問題の本質が親とその環境にある場合が多く、いかに親と距離を取り自立できるかを模索すると、資金的な制限もあり、おのずと手法に限界が見えるそうである。

 「先天的な異常」(疾患と言えるかは不明)な子供に関してはそういった理性や道理で扱っても制御することができず、他の子供にも悪影響を及ぼすため、恐怖やストレスを与えないと一般生活ができないらしい。また、どの時点かは専門家でも判断に困るが、ある線を超えた子供はこの「先天的異常」の層に組み込まれ、更生の余地がなくなる。この層の子供に対してはよりよく生きる方法の指導ではなく、他者へ害を及ぼさないようにする予防に焦点がいき、病原体の隔離のような対応となる。

 いかにこの線をコントロールするかが施設の味噌らしく、この2種の判別が最後のセーフティネットとなり、ここから漏れた子供は、まぁ…残念でしたとなる。

 

 多くの人がこの上層と下層の中間にいて教育を享受するが、上下どちらも厳しいなぁと言うのは意外と知らない事実じゃないかと思う。

 

必要とされるもの

 理想的な教育と言うものがあるか知らないが、少なくてもその理想をかなえるために必要なものははっきりしている。マンパワーである。現状の教職員定数は例を取ると児童550人に対して小学校教員28人(補助7人)、中学校教員34人(補助7人)だけれど、現状の学校では学級のコントロールが十分できていないと親から聞く。

 この状態で、さらに多様な内容の教育を施すことはどう見ても無理である。教育の多様性であるとか一人一人の個性を伸ばすとか言っても、上で書いた先生の愚痴のように、現状の教育現場にはそのリソースがもうない。

 外国への調査においても同様の結果が出ている。諸外国の教員数の算定方式に関する調査報告書(超長い,pdf)を要約する(雑だけどw)と、中央集権的な国や地方分権的な教育をする国があるけれど、大前提として、良い教育をしようと思えば今より教員数を増やして(クラス人数を小さくする)、教員の労働環境を整備しないといけないと書いてある。

 だから、理想への解決策はとても簡単で、教員数を増やし雑務のための補助をもっと雇って教員の負担を減らせということになる。

 

 まぁ、当たり前のことである。

 

 

親が見るべき点

 とても気になっているワードは「教育の無償化」である。高校も無料、大学も無料である。一見素敵な言葉に見えるけれど、実はこれはかなりヤバい

 上述したように、上から下まで現状の教育現場は崩壊の一端をすでに見せ、年々教員の就労環境が悪くなっている。そんな中にただ乗りする客を突っ込んだら( ^ω^)・・・

www.nikkei.com

 と言うわけで、子供のことを考えるなら、教育をする側の環境を良くして、客を絞る(もしくは上の施設のように正しく振り分ける)ことが重要なんだけれど、これから教育界はその全く逆をやろうとしている。

 

 だから、もし親にアドバイスをするとしたら、「質と数が確保されている(教師の給料がいい)ところを探せ」となる。無料とかゆとりとか思想とかは置いておいて、まず先生に余裕がないところは生徒も歪む。

  上で書いたように例え私立お金持ち学園だろうと、ヤンキービッチ学校だろうと、教員の数と質が確保できない所は本質的に同じで、教育が壊れているのが実情だと思う。

 

終わりに

 調べてみると、想像以上に荒廃している学校教育だけど、子供はそこを上手く生き抜いて欲しいなぁなんて無責任に思う。

 まぁおっさんはもう学校に通わないので他人事である|д゚) 

 

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(クイズの答え 赤丸が猫)

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