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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

なぜ消費税を上げるのか(敵側視点)

消費税を上げる上げないという話をよく聞く。イマイチな景気で増税は間違えなく悪手であるが、なぜ強硬にそれを主張するのだろうか?素人なりに考えてみた。

 

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(今週の一枚)羽ばたくには生まれる必要がある(pixiv

 

 

敵を敵としてみる

 ネットをうろうろしていると消費税は悪税であり、それをする政治家・官僚は巨悪である!なんて言説をよく見る。感情的にはそうだそうだヽ(`Д´)ノプンプン となる。しかし、その施行者をまるで人間の屑のように扱う人達に出くわすとゾッとする。これはおそらくネトウヨビジネスの一環で、ぼんやりとした不安を特定の組織や人物に擦り付けることで思想誘導・資金化する、よくあるネットのビジネススタイルだと思う。

nipplelf.hatenablog.jp

 以前の記事↑でも書いたが、このスタイルは斜陽でダサいので、その線に乗らず、為政者達の失敗と現状を見たうえで、彼らが何を考えているか予想してみる。

 この記事ではネトウヨショーの「役者」ではなく、我々の明確な「敵」を見つめ、消費税を考える。

 

「計画」と言う敵

 日本の為政者を大雑把に見ても多様なグループに分かれる。利権・信仰・学閥など分け方は人それぞれだが、この記事では現内閣の内閣府(A)と保守的官僚(B)で分ける。

 

 Aは安倍内閣が革新的に(左翼としては独裁的に)考案し、苦心の末ついに開花した新しいグループに見えるが、実際は結構なお年である。時代をさかのぼると鳩山由紀夫氏、小泉純一郎氏、小沢一郎氏などなど…主をコロコロと変えて、命脈を保っていた集団だと思う。だから、この流派の意図を見るには「日本改造計画」をご覧になるのが一番わかりやすいと思う。書いた人、関わった学者、感銘を受けた官僚、実行しようとした政治家など中の人は変わっても、その考えが一つの流れになって今現実のものになっているのは歴史を感じる。

 新自由主義、貿易自由化、首相官邸機能の強化、国際貢献、二大政党制と言った国のシステムを変える計画とその人員である。

 

 一方、Bは旧帝国の内務省系列の文官が核となって計画策定した戦略群と言え、「地方計画論 Regional planning」のような第一次世界大戦後のヨーロッパの荒廃とアメリカの勃興に端を発した新しい国家形成の在り方を模索したものが大元となると思う。概念自体イギリス発祥なのだが、これは当時膨張する人口と未開発な土地の有効利用、戦期における国家戦略として応用・実行され、第二次世界大戦後、我々の生活の基盤を担ったと考えることもできる。100年の歴史を持つ由緒正しい国家主義である。

 東京都策定、戦後復興計画、整備新幹線、北京・天津振興開発、日朝平壌宣言、地方創生といった国家・地域基盤を整える計画とその人員である。

 

 とても面白いのが、こういった「カイカク」はアメリカという巨大国家への敗北(A:プラザ合意による政治・経済的、B:第二次世界大戦の地域覇権的)によって動き出すもので、裏を返せば、日本と言う国が100年以上にわたって常に「アメリカとどう付き合うか」を国家の軸としていることが分かる点ではないかと思う。

www.jcer.or.jp

 日本的官僚制自体江戸時代から脈々と続き、それを基盤として国民国家が運営されるようになった。発展の軸をアメリカに向けることで近代化・工業化に成功した。だから、我々が見なくてはいけない「敵」は財務省とか安倍政権であるといった実行者や相手のアメリカではなく、アメリカとどう付き合うかといういくつか「計画」自体とその「方向性」なのだと仮設定する。

 以前の記事の政権の立場で景気と消費税を見るではそれを1940年体制と紹介したし、猪瀬直樹氏の昭和16年夏の敗戦では空気感として日本の官僚制を揶揄しているが、これらは強い衝撃とアメリカの存在が生み出す一種のトラウマの影なのかもしれない。

 

 

なぜ消費税か

 さて、この「空気」とも呼べる国家計画A、B同士で、大きな対立点となっているのが消費税となる。なぜかたくなにAはそれを忌避しようとし、Bは強く押すのだろうか。現実問題を見ながら考えてみる。

 

システムとして

 平成に入ってアメリカとの関係が大きく変わり、企業は中国を迂回してアメリカへ商品を売ったり、ネットの発達で個人が海外から資金を借りて起業するようになった。これによって一番大きな影響を受けたものが徴税であると思う。個人・法人を問わず所得の把握が非常に困難になった。

www.newsweekjapan.jp

 かつて(日本)の銀行が金を貸し、(日本)で部品を集め、(日本)で加工し、(日本)の業者がアメリカに売っていたが、現在は各セクションごとに(日本)→(日本、韓国、中国、東南アジア、北米、アメリカ…)とバラバラになってしまい、まったくどこに利益があるかわからなくなった。所謂グローバル化したため国家間にまたがる利ザヤが隠れた。

 

logmi.jp

 パナマ文書発覚により大騒ぎになったが、現象として見ると、Aに内包された国境を超えた地域化が進行するとともに、国家を基本とするBのシステムが破壊されたとも言える。Bはそのほつれを補うために、所得税法人税と異なり、所得を把握しなくても税を取れる消費税に大きく傾斜したものと考えることができる。

 建前では色々屁理屈を言っているが、今までの方法ではうまく税金が取れないので、取れる方法に切り替えただけなのかもしれない。

 

人口統計的な答え

 Bの戦略は大前提として増加する国民をどう配置して国を作るかと言える。だから、移民を入れて国民(地域住人)を増やすことにはAと親和性があるが、日本の人口減少において、いくら組み替えや効率化を行ったところでうまくいかないとBが考えている節がある。その点、Aとは全く反目している。Aでは国境ではなく地域としての収益化を考え、他国の給料の安い他国民を利用して利益を上げることに重点を置いているので、利権者である日本国民がむしろ少ないほどいいと考える。

 

日本は2010年をピークに減少をはじめ、

www.stat.go.jp

アフリカを除くと、世界全体で数パーセントの緩やかな増加が続く。

www.stat.go.jp

 地球全体の人口動態でAの方策が正しいように見えるが、我々の経済植民地である中国・韓国の労働力に注目すると、急速な高齢化・人口減少が始まり、Aとしても収益化の確保が厳しくなることが明らかになっている。

 そのため、Aの地域的に見ても、Bの日本的に見ても長期的展望として消費税を上げたいと考えるのは至極妥当となるはずである。

 

団塊の世代の狙い撃ち

 AにしろBにしろ注目している国民のコア層は団塊の世代である。計画の良し悪しに依らず、人口分布がいびつなほど多く、求められる求人に最もマッチした世代だからである。メインエンジンであるこの世代に徴税を集中することは効率的であるし、そこにフォーカスしすぎたため、ロスジェネ問題(つまり団塊世代の子供)が発生したともいえる。

data.wingarc.com

 彼らが幼少のときは雑な教育を施して兵隊とし、様々な新しい嗜好品と税をセットで徴税し、終身雇用制により所得を把握し、年を取ると介護年金で絞り、働けなくなると消費税でひねり出すのである。彼らの生活に合わせて税制を変化させ、結構えげつない。

www.tokyo-np.co.jp

 問題は彼らがいなくなるまでの20年間なんだけど、それまでに彼らをターゲットにしたBによる消費税増税は続けるだろう。しかし、Aにとって見ると流動性のない無産階級になるこれからの彼らには価値がなく、税は取りたくないし分配もしたくないというのが本音であると思う。

 

税収と権力

 日本は中央集権型の社会民主主義国である。口先では資本主義国を自称しているが、これは○○になりたいという願望を言っているに等しい。

 日本の半共産主義がうまく機能しうるのは1億人から政府がお金を集めて、もう一度配りなおすという権力が源泉にあり、その強力な縛りがあることで国家の効率的な運用とアメリカとの一定の距離感を取れていると考えられる。

 つまり、集めるだけ、配るだけでもダメで、集めて配れなければ今の権力機構は破綻するのである。これは結構な問題で、権力維持・強化のために常に色々な科目を作って様々な分野・職種から薄く細かく税金を取る(支配する)ことに繋がり、当然複雑化する。大昔のシャウプ勧告pdf)から見ても悪化している。

 しかし、平成に入ると不景気と共に圧倒的な予算不足が起こり、国債の乱発とバランスシート上の負債化が大きく進んだ。

www.mof.go.jp 

 平成年間では税収は下がり続け、民主党政権時には平成元年の7割以下になる。つまり、頑張って集めた権力の30%がなくなったのである。慌てて「取りやすい」税金で補填し、政府の収入を落ち着かせたと考えることができる。

 ほとんどの歳入がアメリカの景気と為替政策に依存しており、外交・政治案件となっているため、財務当局は安定のために消費税に逃げたと言える。

 この権力を増すという点において、AB意見は一致する。しかし、その増やし方では反目する。Aは外交関係の改善と資金流動性を担保することで自然と税収増をしようとしている(アベノミクス)、つまり収入アップで税収アップを狙っているので、Bのまず税金の確保する考えとは齟齬が生まれる。

 内向きか外向きかという視点の違いなのかもしれない。

 

消費税という目くらまし

 結局2度の敗戦によって生まれた2つの国家方針が対立することで、消費税が政治的訴状に上がっているのだが、現状として経済とその問題が広域化しており、AでいこうがBでいこうが何らかの打開策を消費税だけで解消しようとするには無理がある。

 為替を1ドル360円に是正したり、新しいプランCを作るくらいの方向性の大転換が必要だが、日本にそれだけの体力はすでにない。

  国土計画においても、人口が減るという前提があるので、単に公共事業をやれ(仕事を作れ)というのは10年後に大量の負債とコンクリートのオブジェを作るだけで意味がない。それは1980年代の公共事業と成果からも明らかである。

 また、アメリカのような勝手に仕事が増え人口増加する国と違い、経済のマネタリズム(お金を増やしたり期待を煽る)では、日本の環境には適合しないことが安倍政権の経済政策失敗で明らかになった。

 つまり、現状において2つのプランは失敗し、暗にそれを押し付けあっているのである。そのツケが消費税と言う形で現出したのだろう。

 

本当の敵

 大切なことは失敗した部分を認め、検証し、我々に合った方向性の再設定をすることだと思う。大転換が不可能であっても、徐々に方向性を変えたり、付加的にプランを作り替えることは我々にとって得意分野であるはずである。

 この記事で「敵」をプランABとその対立としたが、本当の敵は目指したこととその結果を見てその修正を個人・組織がしないことだと思う。確かに民主党は悪政であったが、大きな流れには変化がないし、そんな能力は彼らにはなかった。結果を見なかったり原因を個人に求める「先入観」こそ宿敵ではないかと思った。

 だから、間違っても財務省を「Z」なんて見下している人は信じない方がいいし、その先に答えはない。

 

 誰かに罪を着せたい。ショッカーがいれば楽なんだろうけどね(^ω^)

 


(続編↓)

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