ニコニコ動画/ドワンゴが苦しくなっている。もうダメだ!なんて話はだいぶ前からあったが、それが最近ついに現実のものになった。なんでこんなことになったのだろう?ちょっと考えてみた。
目次
ドワンゴって何
多くの人はニコニコ動画=運営会社ドワンゴと思ているが、ドワンゴという企業は別に動画配信をするために生まれた企業ではない。もちろんニコニコ生放送をするためだけの会社でもない。
ドワンゴは「インターネット関連企業」である。とても分かりやすそうで意味不明な企業カテゴリーだけど、もう少し踏み込んで言えば、新しいネットワークインフラを使ってビジネスをする企業のことである。
だから、動画サービスだけをするのではなく、音楽配信であったり、教育であったり、アイドル育成であったり、インターネットを利用して色々な事業をやっている企業と言える。その中で、音楽関連で大きな利益を上げ、動画配信で名を挙げた企業といっていい。
こういったインターネット関連企業は1990年代後半に政府主導で法律に穴をあけ、それにうまく乗った新しい企業群ともいえる(その後なんども優遇を受けた→政府官邸2003pdf)。「IT革命」なんてフレーズは有名ではないだろうか?
www.asahi.com↑の絵を見るとすごくわかりやすいんだけど、約20年前に先鞭をつけた企業がそのまま日本の中心企業になっていて面白い。
カドカワとドワンゴ
そんな成長産業の雄ドワンゴはついにサブカル界のビックボス、角川と悪魔合体して大量のコンテンツとネットノウハウを持つ超優良企業カドカワになった。しかし、その優秀なはずの企業は今期の決算で大赤字を出す。いったい何があったのか?
カドカワ発表から見る
直接、カドカワのIR・決算短信を見ると、出版、映像・ゲーム事業は以前の予想に増して徐々に業績を上げている。また、固定・流動資産も比較的硬くまとめていて、海外事業も規模としては小さいがしっかりとした展望をもってコンテンツ事業を展開しようという勢いを感じるし、一応、数字の裏付けを見ることができる。
ただ一点、Webサービス事業(ドワンゴ事業)がどうしようもなく、短信(pdf 3ページ目)では、有料会員数減少とテクテクテクテクが失敗だったこと、VTuberで頑張りたいなんて書いてあるが、内部で出された結論はかなり厳しく、同短信15ページ目で、利益の眼がないとして減損損失にして一旦清算されている。
ハッキリ言って、このままではドワンゴ事業は見捨てられるといっていい。カドカワ全体でドワンゴ側資産の約38億を損として被ったが、このまま後1年でも利益がでない、最低でも改善が見られないようであれば、ドワンゴ自体も消滅する可能性があるという内容になっている。
メディア報道から見る
カドカワのIRから厳しい情報が流れると、周辺人物からの取材と内部の人事情報などがメディアによって伝えられるようになった。
toyokeizai.net ドワンゴの甘い業績見通しに対する苦言と有料会員大量脱会騒ぎがあった例のニコニコ動画(苦)に対する事実を関連づけたり
this.kiji.is それに伴って川上量生氏の降格がセンセーショナルに発表された。また、新社長に夏野剛氏の就任などごたごたした人事異動が行われたようだ。
ほかにもいくつものメディアで発信がなされているが、非常に厳しいことにカドカワ側の発表同様にドワンゴ側に優しい情報は一切なく、むしろ、ドワンゴや川上氏への罵倒にも近い情報発信やネガティブな報道がほとんどを占めた。
良くも悪くもドワンゴをここまで大きくした川上氏に対する敬意がある程度あってもいいのにまるで彼だけに原因を押し付けたいように見える。
なんでぶっとんだか個別に見る
こりゃキツイ…という状態を一年以上前から改善しようとドワンゴ内部では悪戦苦闘しているようであるが、一向に良くならない。よくなりつつあると強弁するも利益が出ない。なんでこんなことになっているのだろうか。
ドワンゴを振り返る
運営側の経営改善動画が放送され、ドワンゴ側でニコニコ動画についてユーザーの事を聞いてもっと「美しいサービス」にします!なんて言葉を多く聞いたが、今だかつてこの会社が健全で美しかった時があるのだろうか?
例えば、音楽関連は初音ミク関連でもめたり、着うたなどの配信関連はずっとJASRACとごたごたがあった。
業態も携帯コンテンツ→音楽関連→動画→イベントといった感じで、事業自体に脈略がなく、新規事業に先行投資して、いかに自転車操業で生き残るかどうかの企業だったはずだ。
ニコニコ動画で言えば、youtubeに寄生して追い出され、生主配信では多数の警察沙汰を抱え、以前の記事でも書いたように中身もぐちゃぐちゃである。便所の落書き2chを映像化したようなサイトじゃなかっただろうか?
しかし、掃き溜めに鶴と言うように、そんなカオスな状態の中で笑えるもの、ためになるもの、考えさせるものなどが混じり、ここに行けば何かあるかもしれないと思わせてくれたのがニコニコだったような気がする。
www.nicovideo.jp(↑自分のイメージするニコニコ動画の謎の面白さがある動画)
こういった玉石混交、利益不明の状態から徐々に投稿コンテンツが整備され、適法化され、政治的にも立場を整えて今の状態になった。しかし、依然として汚い面と綺麗な面がまだらな状態であるといっていい。
つまり、今の運営の「清く正しいサイト」という立脚点がおかしい可能性がある。
ニコニコ運営の魅力
ない。
長い間ニコニコ動画を実質支配していたニワンゴや未来検索ブラジルの連中はいったい何者かわからないヤバさがあるし、角川との業務提携後から追い出されていった。運営状況は彼らがいる間は依怙贔屓であり、彼らがいないと大混乱し、それがもろにユーザー側に降りかかって、クソみたいな状態になったと考えることもできる。
しかし、そんな状況下であってもある程度彼らがいた状態の方が利益は出ていた。
また、様々な新規事業をしてもほぼ失敗しており、運営主導での行動は政治化は成功しても利益にはなっていない。
つまり、運営をどうにかすることで利益はでない。ユーザーに運営の魅力は関係ない。
収益で見る
インターネット企業全般に言えるが、極めて妖しい方法で儲けていた。ルールができる前に色々やっていたのである。しかし、法律ができるとそういった危うさを除くため、いくつかの企業は為替・金融に手を出して大きく儲けているが、それ以外ではマスで広く浅く徴収するしかない。
その意味でドワンゴは多くの有料会員を得た稀有な企業であるが、収益化には200万人から年間6000円(月500円)集める必要があるようだ。
収益分岐点がはっきりして、それを超えると爆発的な利益が得られるので、IRにみるような甘い予想を立ててしまったのだろう。
また、プレミア減少とPV増加により、利益率が変わり、配信者に金が流れてドワンゴ本体に流れなくなったのも大きい。視聴総数は横ばいであり、入る総額は同じなのに、中途半端に内部を弄ったために、収益が大きく毀損したのである。
つまり、問題はサービス向上よりいかに人を集めるかである点に気が付いていない。
人事を見る
角川と合併と前後して、多くの人員がドワンゴを離れた。
まぁ、栄枯激しいインターネット業界ならではと言ってもいいが、最低でも基幹にかかわる技術者の存在は絶対条件であると思うが、どうもそういった投資を怠っていたように思える。
例えば、Flash(動画を再生するのに必要だった技術)の終了が分かっていたのに、ニコニコは間に合わなくなるギリギリまで対応しなかったり、スマフォ対応が異常に遅かった。
一方で、NTT系の夏野氏(現社長)や栗田氏(前社長)を登用している辺り、非常に政治的、営業的側面の人事が目立つ。もちろん、銀行OBや政府系大手企業を関連役員に入れることで安定化するのはよくわかるけど、そういった多くの「真面目」な人たちを入れることで利益が出せるかと言うと疑問だといえる。
つまり、本来リストラすべき人物が多すぎるような気がする。
なんでぶっ飛んだかまとめてみる
企業利益を得ること、お金儲けすることはすごく難しい。例えば、某有名自動車会社はテロリストにピックアップトラックを売って莫大な利益を出しているし、大手銀行は町金をやって焦げた債権を半グレに売っている。
お口にチャックして脱法するのが優良企業の基本だが、何故かドワンゴは今までのグレーな事業を止めようと必死にもがいているような気がする。 ピカピカし自分を良く見せようとしているように見える。
悪業で正しく儲けた悪党どもを追い出したのだから、正業で汚く儲ける抜け道を見つける必要があるんじゃないだろうかと思う。
テクテクテクテクに見る綺麗なお役所仕事に誰も興味を持たない。ユーザー本位というのなら、動画投稿・配信者を煽ったり、ゲームの仕様に穴をあけたり、気づかないふりをするくらいの狡さが必要なんじゃないかと思う。そうすれば視聴者は喜んで広告や投げ銭に金を突っ込み、勝手に脱法行為をするだろう。儲けてバレたらユーザーをぶん殴ればいいのである。
バランスを見て投資したり法を踏み越えるのが経営者なんだから、それができない今のキラキラドワンゴは「無能」なんて陰口が付くのだろうと個々の問題をまとめていて思った。
終わりに
きつい言い方かと思うけど、彼らはコネと誰かが作ったコンテンツを利用して金儲けして、自分でリスクを取らず無意味なコンテンツ作りで失敗し、おかしな思い込みで自己崩壊しており、がっかりしたので書いてしまった。まぁ気づいていたとしても、そのまま前進したくてしょうがない病なのかもしれない。
・・・ふと振り返ると、自分も少し汚く稼ぐことも考えないといけないのかもなぁ(-_-;)
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