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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

けものフレンズ炎上からアニメ・出版を見る

一連の「けものフレンズ騒動」を見ていると、一方的に「悪」というものを作ってケンカしている人がいてげんなりする。でも、ただげんなりしていもつまらないので、自分なりにこの騒動を考えてみた。

 

 

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(今週の一枚)秋の落ち着いた気候が待ち遠しい(pixiv

 

 

またぞろけもフレ関係で炎上未遂があった。

togetter.com

好き!嫌い!と叫んでもいいかもしれないが、感情論はわきに置いて、なんでこんなに意見がこじれてまとまらないのだろうか?一つ一つ考えてみた。

 

 

※目次※

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アニメ作りと契約

 

 SNSを見ていると、脚本家が~、出版社が~などなど、主体と客体をぐちゃぐちゃにして意見を戦わせている人がたくさんいた。本来契約とはとてもシンプルな金と物のやり取りの約束のはずだが、物を作って利益を出すまでにはたくさんの人が集まって、たくさんの権利のやり取りやあるので、実際の契約は外野から見るとぼんやりとしてしまう。そこでまず、アニメ制作の契約関係を明確化してみた。

 

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(製作に関わる金と物と権利の流れ より詳しくはこちら→みずほ銀行レポートPDF

 

 本来、一対一関係であるはずの契約は複数の資本家と労働者と権利者がいることで、その契約関係は複雑になる。

 この図の場合、この一つ一つの矢印が契約となるとして、ある製品に対してお金のやり取り(矢印)が増えれば増えるほど複雑化する。いい加減な契約関係だと、この矢印があっちこっちと繋がってややこしくなり、利益をめぐってケンカになるので、アニメ制作の場合は出資側が製作委員会などの管理団体を作り、制作側が製作会社などによって権利のとりまとめを行う。

 例えば、けものフレンズの場合、KADOKAWAは出版社、NEXONがゲーム会社とお金を出す側となり、irodoriが制作会社、たつき氏が社員というくくりになると思う。

 

 直接的に交渉したり、契約関係にあるのは矢印の繋がったところとなり、カネとモノの大きなやり取りは製作委員会と制作会社、利益配分は投資家と製作委員会、支払われた賃金は社員と制作会社と言った感じのやり取りとなる。

 つまり、NEXONと素材屋はやり取りしないし、KADOKAWAたつき氏はやり取りしない。それをすると今回の様に権利をめぐってぐちゃぐちゃになるし、契約内容によるが、その越権はおそらく契約違反になるのだろう。

 

契約関係の炎上で出てくる発言のほとんどが、この契約関係を飛び越えた一方的な主張ばかりである。

 

 

アニメの質と資金

 

 美しい映像、ワクワクするお話を期待してアニメを見ると、あまりのクソ作画、アホ脚本を叩きつけられてガッカリとすることがある。しかも作り手はブラック労働を強いられて、なかなか商品の質も労働の対価も上がらない。どうしてこんな惨状なんだろうか?

www.nhk.or.jp

 

 これはご存知のようにアニメは当たり外れがとても大きいからである。アニメ単品で考えると1話作成に1500万~3000万円かかり、10話作るとすると低品質でも1億5000万かかる。しかし、これだけ投資しても、映像作品としての売り上げはとても小さく、アニメ単独で1次的に利益化できている作品はほとんどない

 ハイリスク・ミドルリターンと言ったところだろう。

 

tenshock.biz

 そのため、1次的な投資と利益から配分される支払いも小さくなり、アニメーターにわたる賃金も少なくなるのだろう。

 こうして完成した製品をただ持っていても損なので、アニメの場合「お金を出す側」はさらに出資して「物を売る」側と新たに契約して商品を売り、2次的に利益を出そうとする。

 例えば、ネットメディアにアニメを放映権を売ったり、アニメを宣伝に使ってそのグッズを売ったりする。

 この2次、3次利用を加速するために最近では中国市場をにらんでいる動きもあるが、かの国の政治があれなので、なかなかにリスクは大きいのかもしれない。

nipplelf.hatenablog.jp

 こうした1次的、2次的なコンテンツ利用によって収益化を頑張っているが、それこそ無数の経験を得たKADOKAWAにおいても、そのヒットの傾向はつかみかねているだろうし、パイの縮小する日本においての利益を出すのはとても難しいことはわかる。

 だから、簡単には「質アニメ」つまり「金をかけたアニメ」はなかなか作れないし、粗製乱造になるのだろう。

 

こうした収益化の難しさがSNSの炎上発言を誘発しているように見える

 

 

質の高くないけものフレンズと大ヒット

 

 投資としてはミドルリスク・ミドルリターンがベストなんじゃないかなぁと思うが、誰しもやっぱり金をかけずに大儲けしたい。

 そういった意味では「けものフレンズ」という作品は大成功だし、動物園の来園者の増加だったり、ペット関連への波及であっとりと、その他への経済効果も大きく素晴らしいコンテンツ「だった」と言える。

 では、アニメ単独で捉えるとどうかと言うと、はっきり言ってCG、脚本ともそんなに素晴らしいものではなかったと思う。

nipplelf.hatenablog.jp

 大ヒットする以前の自分の投稿を見ても、認識は同じようで、雰囲気はいいが金かかってないなぁと言った感じで見ている。

 

 しかし、自分の感じた評価とは異なり、大ヒットを遂げて、大炎上したこの作品はアニメ単体の価値というより、ニコニコでコメントをしながら見たり、SNSで実況をしながら見る、ポプテピピックのような「遊び場」としてのアニメだったのだろう思う。

nipplelf.hatenablog.jp

  これはネットを利用した新しい形のアニメーションの在り方だと思うが、そこにはアニメの質は関係なく、いかにうまく「煽るか」が大部分を占める。

 

 つまり、こういった「遊び場アニメ」をどう作ろうとアニメーターの利益にはならない

 

 

「遊び場」の利用

 

 さて、この楽しい子どもの遊び場は大人達のケンカで踏み荒らされてしまった。さらに悪いことに、ちょっとでもぺんぺん草が生えようとすると、除草剤がまかれるような状態である。

 なんでこんなことになったかと言えば、1つは安い金で作ったほんわかアニメが思いのほか大当たりしたけど、思ったように作った側が儲かっていないからだろう。

 もう一つは品質ではなく「煽り」を使って遊び場を作ったため、遊び場がなくなった瞬間、力(感情)の行き場を上手く探せなかったからだと思う。

 

 こういった遊び場作りはコインの裏表である。現象として5ch(2ch)であれば「祭り」という呼び方であるし、ニコニコ動画であれば爆発的なコメントと宣伝の嵐になってコアメンバー以外を巻き込む渦となる。

 上手く扇動すれば電車男のように収益化できるし、Badappleのように歴史に残る作品をコンテンツとして作り上げることができる。

 一方で悪意を持って扇動すれば、「例の弁護士」のようにもなるし、フジテレビの様に「つまらない放送局」というレッテルを貼られ、それが一般化してしまう。

www.excite.co.jp

 

 多くの炎上には利益を目的にした「煽り手」がいる

 

 意図をもった煽りは見つけやすく、「楽しい」「つまらない」といった感情的なレッテルやあやふや情報と、明確な「敵」や信仰すべき「神」などの対象を定義することで簡単に無垢な人たちは「煽り手」の兵隊になる。

 一般的な方法は、ある情報に対して、テキスト掲示板、まとめ、キュレーションサイトを1次情報源として情報を誇張し、2次的にSNSで拡散し、個人の感情に訴えかける方法を取っている。専従を10人ほど置けば企業テロができるある意味恐ろしい「商売」なんだろう。

 

 ただ、こうした扇動は匿名において価値を持ち、正しい情報や新しい対象が見つかるとたちまち解消されるので、けものフレンズにおける、実名を使ったたつき氏のやり方は悪手であり、失敗だった。おそらく、自社の新製品の宣伝と敵対者への報復が主目的かなぁと思うが、どちらも失敗だったように見える。

 

 

KADOKAWAは正義か

 

 では、「敵」となったアニメ業界のビックボスは正義の味方だろうか?というと・・・

 

  もちろん、KADOKAWAという会社は黒い

 

 トップの角川春樹氏のコカイン密輸・逮捕から言ってもさもありなんだし、組織自体もM&Aを繰り返したため、指揮権がぐちゃぐちゃで責任がどこにあるかよくわからない闇鍋のような会社である。

 KADOKAWA - Wikipedia の沿革部分を見て、組織図をしっかり頭に描ける人がいるだろうか? おそらく内部の人でも理解している人はいないと思う。

 

ir.kadokawa.co.jp(↑「主な」グループ企業だけでもたくさん)

 

 また、その会社の業務の評価について、「角川 トラブル」とでも検索をかけると、山のように編集と作者の問題や真偽不明な悪評が出てくる。

 良く言えば、会社が大きく、関わる人間が多いことも原因であり、この業態が人の感性を使ったいわば答えのない芸術を作っているため、そういった感情的な折り合いがうまくつけられないことが一端にある。

 逆に悪く言うと、出版業界全体が斜陽であり、かなりブラックな体質のまま、反社会的な人間が出入りしているからである。

www.nippan.co.jp

 角川に限って言えば、様々な関係会社を持っているため、「私は角川の人間です」といっても、果たして角川本体の社員か、関連子会社の人間かもわからず、本社と言っても部署がたくさんあって、角川という固有名詞だけでは何を指しているのかわからなくなっている。「KADOKAWA」というあいまいな言葉が独り歩きしているなぁと感じる。

 問題があるのはカドカワ株式会社なのか、角川書店なのか、KADOKAWAなのか、部署は出版物の編集か製作か販売か広告事業か劇場映画の製作なのかどこを指しているのかわからない。

 

 つまり、「角川は悪いやつだ」というのは事実だが、それは「出版、アニメ業界は悪いやつだ」という意味に近く、実際SNSで発言している人たち(関係者も含め)も何を指しているのか実はよくわかっていない場合が多い。

 

 いずれにしろ、情報の正誤を判断する場合、出版社関連はちょっと特別な文化を持っていると差し引いてみたほうがいい

 

 

 まとめ

 

契約・金銭関係での炎上は意図したものが多い。

 

今のシステムでは作る側は儲からない。

 

一方だけの情報で良し悪しを判断すると、やけどをする。

 

 

 一歩引いて、自分が契約する立場になった場合のモデルケースと考えて、知識として蓄えておくのが一番いいのではないのではないか?

 

 

 

 

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