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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

災害と治水と儲け

先日の西日本豪雨災害とラオスのダム決壊から見える問題と、治水の過去と現状を少し調べて考えてみた。

 

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(今週の一枚)思い描いた駄菓子屋(pixiv

 

 あづ~い夏、急速に上がる気温とその間に起こる大雨がダブルパンチになって我々を打ちのめす。日差しの合間に、どこかの駄菓子屋でアイスでも食べてのんびりしたいところだけれど、日々の生活でそれもままならない。いったい何が起こっているのだろうか?、何で起こったのか?。二つの災害や歴史的なものをベースに考えてみた。

 

※目次※

 

 

二つの災害

 頭に強く印象が残っているので、わざわざ書かなくてもいいかもしれないが、1年後くらいにふと見返すと困るので、一応災害の概要を書いておく。

 

西日本豪雨災害

  今、西日本を移動している台風を含めると、現在進行形で起こっている災害(2018年7月30日時点)と言っていい。

200人を超す死者、瀬戸内海全域での洪水被害など平成最大の水害と言える。各地に配備してあった防災ダムや堤防が軒並み決壊し、いくつかの自治体では避難のタイミングが遅れたことからも被害が拡大した。

www.asahi.com 亡くなった方の多くが高齢者で、経験のない水量の雨が一時に降ったため、個人、自治体を含めたすべてのステージで対応が後手後手になった。備えが不十分だったというよりも、想定してない事故にあってしまったといえる事象だろう。

 

 ある程度危険とされた地域よりも広範囲に被害が拡大しており、再検証の必要性は高いと思うが、一応ハザードマップも徐々に作られてきたので、一度ご自分の地域の安全性や避難方法を調べておくのも大切なことではないかと思った。

disaportal.gsi.go.jp

 

ラオスのダム決壊

  日本ではあまり報道されないが、ここ10年で三本の指に入るくらいひどい人災がラオス人民民主共和国のアッタプー県で起こった。ネトウヨがわいわいやっている以外ではあまり話題となっていないが、規模、被害から見ても周囲で起こっている災害の比ではない。最大1000人以上が死亡、一帯全てが水没するなど考えられない事態になっている。

www.bbc.com

 

 このダムはSK Engineering & Constructionという韓国財閥系企業が中国が支配的である発展途上国への大型公共事業へ乗り込んでいった工事の一つの結果と言える。

koreajoongangdaily.joins.com

 

 SK側が資料を隠してしまったので、ダムの詳細についてははっきりしたことは言えないが、注水・排水路と発電システムをかなり複雑に組み合わせたもので、その工程で山々にトンネルを掘ったり、副ダムを作ったりと管理も含めるとかなりの難工事が想定されていた。また、”予期せぬリスク”を完成前から想定していたようで、その予想通りぶっ壊れて、未曽有の大災害になったようである。

www.businesskorea.co.kr

 知っている人は知ってるが、韓国の工事のやり方はダンピング、賄賂、手抜き工事がワンセットになっていて、補償を求められると会社を計画倒産までが一つの様式となっている。しかし、今回は韓国政府が保証をして工事を行ったのでSKは逃げられない。補償や復興はラオス政府との協議になるのでとても厳しいものになると予想する。

 

中途半端な認識

 2点の災害は急激に変わる気象や被害の大きさに隠されているが、とても基本的な点で共通点がある。

 

 広島では新興住宅地において、たびたび豪雨災害が起こっており、その治水と住居可能性の是非がずっと警告されていた。広島県6月29日土砂災害/土木学会災害緊急調査の「今後の課題」に書かれているように夜中に災害が起こっていたらとんでもないことになると警告がされていたが、住民、自治体を含めてほとんどの人が無視をしていた。 このような警告は各地でなされており、実際に岡山、愛媛に関しても以前から被害もぽろぽろと起こっていた。今回、たまたま激しい気象変化により広範囲化したが、基本的な状況は平成26年8月の土砂災害と全く同じもので、土木学会の予言通りになったということだろう。

 

 ラオスにおいても水害が年中行事になっていたり(インドシナ半島における治水、J-Stage、PDF)、ハザードマップと作ろうとしなかったりと、あぁどうしようもない発展途上国なんだなぁと調べていて感じる。しかし、国際的な援助団からは繰り返される洪水被害やその被害対策について具体的な提案が多々あり、その一環として国際援助協力による今回のダム建設なのだが、ラオスのダム事情 – 日本大ダム会議を見る限り、治水というよりも大量にある水を利用して電気を確保しようという目先の利益を優先させているきらいがあり、その危険性についてはほとんど考えていないようである。

 

 二つの災害の共通点は、実際何度も被害が起こり、対策案が示されており、想定被害額と比べれば少しの金をかけたり、情報を周知するだけで被害を押さえることができたのに、それを全くしなかった点である。

 

水とビジネス

 結構ヤバい土地にバンバン宅地造成したり、堤防を作らなかったり、適当な見積もりでガンガン電気を作れるダムを作れば、同然一時的に儲かる。

 しかし、それは短いスパンの利益を考えた際に上がるもので、10年くらいを考えてそろばんをはじくと、いずれも損になることはわかり切っている。宅地を売った業者であれ、ダムを作ったSKであれ、結局その保証で大損をこいている。

 こういった近視眼的な儲けに対する執着は人間だから、動物だからしょうがないのかもしれないが、生活の安全、この場合は治水に関しての雑な扱い、安全を無視した商売を始めたのはここ最近なような気がする。

 残念ながら、生活に必要不可欠なものを切り売りする姿勢はどうも止まらない。同じ水であれば、水道民営化なんてものを平気でペラペラしゃべる経済芸人さんがたくさんいてちょっと怖い。

diamond.jp また、今までこういった水事業は大きく儲からないのが定番で、小さく長く儲けようという姿勢が、いつの間にか大金を手に入れようと変わった。韓国はラオスでしくじったが、こういった利水などのインフラ工事のグローバル化は国家的利益の分捕りあいになってきており、日本も後先を考えずに何でもかんでも大規模化して利益を上げようとしている。

www.kantei.go.jp

 

今も形を残す工事跡

 利益を得ること、前に進むことは大切なことであるが、リスクヘッジがぜんぜんできておらず、はっきり言ってヤバいなぁと思う。こういった小規模治水の軽視と国家をまたぐ非常に巨大な治水事業のセールスはここ20年で盛んになったもので、本来の儲からない治水事業それ自体は大小問わず営々と行われ、日本においては大仏建立時に大陸から技術者を連れてきたあたりから大規模化が活発になってきたらしいので、少なくとも1500年以上の歴史があるらしい。

www.kkr.mlit.go.jp

 活発になるのは決まって気象変化がきつくなってきた時期らしく、資料が良く残っているところで言えば、小氷河期の戦国から江戸時代になる。

 例えば、武田信玄はどうだろう。信玄と言えば、超強力な武装集団を組織して戦国の世に覇を唱えた戦国大名なんて呼ばれるが、実態はだいぶ違う。彼が父親の信虎を追放し、甲府周辺の統治を始めたころから日本全体の気候は寒冷化と地域特有の水害によって何年にもわたって凶作を繰り返し、食糧配給の不足とそれに伴う経済の停滞によって、そのまま飢えて死ぬか?それとも他人を襲って奪い生き残るかを迫られていた時代の領主と見ていい。

gekkan.bunshun.jp

 ヒャッハーと他国を侵略し現地民を奴隷化する一方で、本貫地に法律の制定と難工事となる釜無川と御勅使川の治水工事を行っている(信玄堤 | 甲斐市役所)。

 これらは漫画やドラマのように「民のために」なんて優しい世界の思想ではなく、目前に迫る「やらないとみんな死ぬ」という恐怖に駆られて行動の結果と言える。この信玄堤と言われる堤防は今も残り、生活を支えている。

 

 律令国家成立以降、いずれの時代においても、こういった日本の治水は生活するためには絶対の条件と言えるのではないかと調べていて強く感じた。

 

まとめると

どの時点かはわからないが、

認識が治水から利水に変化した

②現状の災害に対するリスク算定がとても軽い

ということが分かった。

 

 今回の災害と治水を掘っていくと、問題の底にあるのは「きっと大丈夫だよ」という確信のない雰囲気で起こった事故だったんじゃないかなぁと感じる。

 いつの間にか、災害に対する認識がいい加減なものになっていて、治水に関しては、他にも中途半端な砂防計画や都市機能の見直しをしなかったことがあったし、googleアースで被災地を見ると、なんでこんなところに家建てたの?みたいなものもたくさんあった。

 かっこよく言うと、大きな気象変動のうねりと大きな利益の追求がぶつかった結果、我々の想定しえない結果によって被害を被った・・・なんて言えるが、なんとなく問題なさそうだから金儲けしようぜ!っといきった結果、とんでもない被害になったのではないかなぁと強く感じた。

 

 もちろん、想定を超える豪雨被害であったことは間違いないし、できうる限りの備えをしていてもこの被害は防げなかったかもしれないが、儲けを優先した国土計画、予算配分で前進した場合、さらに気候が変動すると、さらに被害の大きい被害が続くのではないか?と恐ろしくなった(>_<)

 

 ドンドン公共事業しようぜとは言わないが、絶対必要な施設建設と危険度の情報の周知はしっかりしてほしい。

 

 

 

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