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1週間に1記事を目標にして、考えたことや描いた絵について書いてます。

中国コンテンツビジネスで見る「二度目の人生を異世界で」問題 その1

ヘイト問題でちょっと話題になっている「二度目の人生を異世界で」であるが、自分としてはこの問題はビジネスとその規制の合間で起こった事故だと思う。

楽な感情問題に帰着せず、なぜこの問題が表出したのかを考えてみた。

 

 その1では炎上周辺を見直し、その2では中国アニメビジネスについて書き、その3で「2度目~」と同テーマのアニメとの比較と考察を行います。

 

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(今週の一枚)偶然の出会いと新たな戦いの予感・・・(pixiv

 

まず、その1では噂を真に受けず起こったことを確かめてみることにした。

 

※目次※

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表面的事実

まず一つひとつ現状を追ってみることにした。「二度目の人生を異世界で」問題がどうなっているのかを調べてみた。

簡単なあらまし

 ライトノベルが同人サイトから人気を得て商業化することが普通となった今、ある作品がアニメ化目前に「この作品は内容も作者もヘイトスピーチである(#^ω^)」ということで騒ぎになった。著作の翻訳版が中国サイトにおいてキャラ裏設定に歴史問題があるということで掲載取りやめとなり、作者が個人IDのSNSを使った作品宣伝を行っていたことから、これが一気に問題化してアニメ化中止になったということだ。

 

 情報の流れとしては

 中国で作品の裏設定の発見→中国サイトの翻訳版掲載中止→中国人の突撃→作者SNSの過去の問題発言発覚→声優の降板→アニメ化中止→書籍販売休止→アニメ化の可否を日本で騒ぐ

 という感じだそうだ。

 

 ご存知のように、いつものこういったヘイト系の話題では、だいたい同じ人たちが様々な話題で右左に分かれてワイワイケンカして楽しんでいる。そこには外国人の姿はほとんど見えず、どちらかというと傍観者としての立場が目立っていた。

 しかし、この「公園の砂場」に今回は中国本土発の歴史問題を元に怒った向こうのネトウヨが攻撃を仕掛けてきた。結果、「二度目の人生を異世界で」は販売中止に近い扱いを受け、作者はしょぼん(´・ω・`)としてしまった…ということになっている。

 

nlab.itmedia.co.jp

 

この作品はヘイトものか?

 ここでまず問題になってくるのは、作品を世に出す場合、言論の自由であったり、外国人の人権などといった、個人と他人の権利をどう折り合いをつけるかである。この点、「日本で表現する」ぶんにはほとんどフリーパスである。

 これはアニメだけでなく、神戸連続児童殺傷事件の犯人が被害者家族の人権を無視して手記を出版したり(いまだ販売を続けるクソ)、民主主義国なのに共産党がいる(いまだ革命しないクソ)といったように、社会に大きな実害がない限り、多少の不愉快には目をつぶることで、我々日本人はかなり好き勝手に行動ができる。

 こういった表現や各種活動の自由を謳歌しているなかで、この作品を見ると全くといっていいほど人種差別であったり、政治的~なんていうものは見えない。しいて言うなら、殴殺されるたくさんの敵やハーレム女たちの印象が各種団体に引っかかるかもしれないが、それさえもほんの些細な表現、自由の範疇である。確かに作者の過去のツイートでう~んと思うものが散見されたのも事実であるが、これをもって「ひどい差別者である」といって他人の権利を尊重しすぎてしまったら、ラジオでひどい政府批判している芸能人は出入り禁止になるし、過去の商業作品のほとんどは発禁処分になるだろう。

 はっきり言って、よくある「この程度の表現」で、なぜ「日本での商売」が暗礁に乗り上げるのかよくわからないと思った人も多いだろう。

 

つまり、この作品は日本ではヘイトものではないとはっきり言える。

 

 批判に至っても、後付け的に、設定が~とか作者が~と言っている印象が強く、漢字圏において、この作品がこういった問題となった理由は別にあると考えたほうがいいのではないだろうか?

 

問題の発端となったサイトを見てみる

 中国サイトにおいても、問題となるキャラ設定の箇所は当初から除かれて発表されたということであるが、その公開サイトはどういったものか見てみよう。

www.iqing.com

 ↑こちらが問題の発端となった中国本土で「二度目の人生を異世界で」の翻訳版を掲載していたといわれるサイトで、「轻文」といい、主にライトノベル系の同人作品を掲載している。日本で言う小説になろうカクヨムをもうちょっと小さくした感じの作りとみていいと思う。

 

 どういうサイトであろうか?

 

 ランキング(信仰榜单)に乗っている作品やフロントのイメージ画像を見てわかるように、暴力や闘争といったテーマはあまり強くない。どちらかといえば、日本の日常系の萌え作品を中国流にアレンジしたものが並び、ちょっとした漫画を添えてラノベをエンジョイしようという中国の同人活動がそこに見える作りをしている。

 また、各作品の特徴付けとして戦いや人外、ロリや女装なんかもあり、断片的な日本の流行りを取り入れている様は、切り取られた情報しか得られない中国の若い作家の実体を示していることもわかる。

 サイト自体の規模で言えば、作品数や作品の文字数、その質を覗いてみると、日本のラノベ百花繚乱的な状態と比べると、そこまで強い印象は持たなかった。

 良くも悪くもその程度のサイトである。

 

 この中に「二度目の人生を異世界で」を入れて他作品と比較すると(すでに本作は削除されたので閲覧数などの実態は不明)、作品の質、量としてはしっかりとした印象があり、挿絵としてもレベルが違うものなので、明らかに一段上の印象がある。騒動前は「日本」というテーマがあったそうだ。しかし、テーマとして戦闘系の俺TUEEEE系がヒットするかというと、少し場違い感があるような気がする。

 

中国で本当に大騒ぎか?

 中国発の大事件!ということになっているが、本土では本当に騒ぎになっているのだろうか?

 

 炎上ポイントは

1、中国「轻文」掲載取りやめ(5月下旬)

2、日本でのアニメ取りやめ(6月頭)

の2点である。

 

 試しに微博(Weibo)で"在异世界开拓第二人生"(「二度目の人生を異世界で」の翻訳タイトル)を検索してみると、記事として20件(6月9日調べ)しか出てこなかった。コメント自体も全部合わせて2000件程度、記事の中でまぁちょっと盛り上がったくらいで、全体から見ると大した騒ぎもなく、すでに終わった出来事として流れてしまっている。一番古い記事で6月5日なので、内容としては中国発の1の騒ぎなのではなく、日本発で起こった2の騒ぎについて、日本の記事から転載したと考えられる。

 1の時点で大手では食いついていない・・・1についてどういった動きだったかと、他にもいくつか向こうのネトウヨ系サイトをざさっと見た。5月30日前後に1についての記事もあったが、攻撃的なコメントも比較的少なく、また「日本が絶対悪」「オタクきもい」「アニメと自衛隊が~」のような、おはようございます的なあいさつコメントが多かった。

 

「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む : 炎上して「二度目の人生を異世界で」がアニメ化中止になった件に対する中国の反応

 

↑こちらのサイトに炎上後のコメント訳が出されていますが、自分が見た状態もこんな感じで、なんとなくコミュニティ内でワイワイ言っているだけで、彼らは実際の作品の内容に関してはほとんど無知であり、すでに飽きているといった感じだった。

 また、2の前で日本で騒ぎの中心の一つとなった声優殺害予告みたいなものも見つけることができず、2の後に中国で騒がれているというのが現実だと思う。1の中国発は騒ぎにはなっていなかった。いったい発端はどこで、何が騒ぎの中心なんだろうか、時系列に対する疑問がでたが、はっきりわかるのは

 

この問題、当初から中国ではたいして燃えていないのである。

 

 また、2について言うと、2017年からVPNを介しても、中国からTwitterに直接アクセスすることができないので、この日本での炎上にかかわったメインは台湾系か在日華人ということになるが、基本的に彼らはこういった話題に無関心なので、中国本土の外で騒いでいる連中の纷扰っぽいイキリっぷりは、なんとなく上っ面を叩いたような感じで、五毛党のような安っぽい印象さえ持った。

 

まとめると

 結局のところ、どうみても中国発のサイト掲載中止は大した問題になっていないのに、突然のアニメ化中止を受けて、日本の創作界隈ではなぜか中国の言論弾圧だとか、歴史認識の勝利だとかなんだか意味不明な騒ぎになっていた。その後に、中国でちょっと燃えたとみることができる。

 

 つまり、アニメ化中止の理由がとてもあいまいなのである。

 

 そうは言っても、確かにアニメの制作中止や小説発行は一時停止になっている。

作者としては憤懣やるかたないだろう。

 

歴史問題が原因でないなら、なぜアニメ化中止になったのだろう?…

 

自分はその答えを中国のコンテンツビジネスに見ることにした。

 

その2に続く)

 

 

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