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女城主直虎が終わってみて

【オリジナル】「そっと息を吐く」イラスト/ニッペルフ [pixiv]

↑吐く息が白くなった。

 

 あまり話題に上らなかったが、今年の大河ドラマが終了した。年々時代劇がなくなり、テレビから視聴者の目が遠のく中、結構なチャレンジをした作品だと思う。
 記憶の彼方に感想が飛んでいく前に、自分なりに意見や評価を書くことにしました。

 

優しく見てみると、
直虎・井伊直親小野政次の三角関係、新しい男 龍雲丸・・・
などなど次々と現れるイケメンと歴史に翻弄される女の子の人生模様を赤裸々に語っていく物語だったと思う。
 歴史上の人物が次々と過ぎ去っていくなか、子育ての難しさや周りの人間関係の冷たさに凛と立ち向かう女の子の姿は、現代女性像にも当てはまるもしれないとも思った。


 ここで単にドラマを好き嫌いしてしまうと問題が見えてこないので、役者と配役、視聴率、歴史物としてポイント分けて考えて、総評してみます。

 

・役者と配役

 女性をターゲットにしているのか、ビジュアル重視な配役だと思った。
 MUSASHIであれだけやらかした海老蔵が出てきたときは失笑したし、控え目に言って「こいつ邪魔だな」と思ったが、まぁ大人の事情なんだろう。
 ただ、それ以外についてはおおむねバランスよく配役されていて、今川義元役の春風亭昇太であったり、徳川家康役の阿部サダヲなどの難しい歴史上の有名人物役としては予想以上の熱演であったし、各人がよく考えて演じられていたので、自分としてはこういった慣れない歴史系を演じる彼らを見れたのは大発見だった。
 主役の柴咲コウはいつも通りの柴咲コウだったので、賛否はわかれるが、演じる役自体がほぼ仮想の人物なのでこれはこれでアリなのではないかと思った。
 時代劇俳優というものが成り立たなくなった現在において、役者を探しうまく配役することを考えると苦肉の策みたいなところも多々あったが、それぞれの役者さんは自分の幅でしっかり役を演じた方が多く、とてもよかった。

自分は劇団ひまわり系の演技が大嫌いなので、バイアスがかかりすぎる子役については言わない。

 

 難をあげるとすると、直虎の周りのイケメン勢が全員同じような顔と姿で、明らかに誰かの好みで選んでいたので、色んな種類のいい男をはべらかしたほうが見栄えはよかったのではないかと思った。この辺は女性視聴者を意識している風を装い、ビジュアル重視のはずなのに、多様性がなく、イケメン動物園を期待した女の子には不満が残ると感じた。
 ぱっと見の絵としては綺麗だが、映像としてはぼんやりとしていてどの役者にスポットが当たっているのかわからなかった点が痛かったと思う。

 

 全体としては、今までの大河と比べると灰汁のある役者や極端な下手糞がいなかったので、良くも悪くも小さくまとまっていたような気がする。

 

・視聴率
 視聴率がとにかく悪い・・・といってもその動態を見ると、どう悪いかが見える。
 この視聴率をグラフ化したサイト見ると分かるが、最初からたいして期待されておらず、視聴率は少し減らした後にずっと一定の12%前後を維持した。
 これはちょっと異常だなと思った。他年度の大河ドラマの視聴率動態を見ても分かるように、視聴者層によらず最初にみんなそれなりに見て、離れ、折々につき見たり見なかったりを繰り返して、山と谷を作る。ザ☆糞といわれた平清盛であっても、その上下動は常にあって、テコ入れや話題作りの失敗など色々あって数字は動く。
 しかし、今作ではこれがピタッと12%前後で固定している。ほとんど減らないし増えない。想定されることは、見る人は絶対見るが、それ以外の人は絶対見ないという大きな客層の剥離があって、ある意味すごいが、かなり問題だなぁと思った。
 ドラマのつくりから言っても、明らかに「特定層」をターゲットにしたマーケティングをして、その層への強い訴えかけは大成功しているが、明確にそれ以外の層を切り捨てている。配役やテコ入れ、宣伝に関してもそれは一貫しており、当初の目的通り計画を遂行したと言えば聞こえはいいが、低空のまま何も対策しなかった、できなかったのは編成内に大きな問題があると思う。
 

 これが民放のドラマであればスポンサー、コマーシャルを引っ張るという意味では正しいかもしれないが、対象がNHKの「みんなが見れる歴史大河ドラマ」であるので、この方策は大失敗というか、大丈夫なんだろうか?とちょっと不安に思う。


・歴史物として
 やばい。このドラマは全部ウソで作られている。
 衣装も、背景も、人物も、ストーリーも、丸ごとすべてファンタジーである。だから、歴史ものではないし、当然、今までの大河ドラマでもない。
 その点が今回の作品の評価を大きく分けていて、今まで見てきた人から見ると不愉快だが、こういったショーや役者を見たい人には大河の場所を借りた最高の演出になったと思う。
 しかし、この方法にするなら、配役そのままで現代劇でもいいし、宇宙船の中で演技をしても変わらない。わざわざ戦国自体にタイムスリップする必要がまったくない。
 一方で、もし、そのまま現代劇にしてもちょっと薄味になるので、味付けとしてちょんまげを付けたと言われれば納得したのかもしれない。

 

 いずれにしろ、どうして大河の枠でこの劇をやったのかという理由説明をされないまま進んでいったので、いったん疑問に思うと視聴がかなりきつくなった。
なぜ架空の女性なのか? 

なぜ架空の歴史なのか?? 

なぜNHKの大河なのか??? 

といった謎が次々とでてきてしまい何が言いたいのかよくわからなくなった。

 

 これを擁護すれば、様々な制約の中で架空の人物を使って物語を作るには、役者以前に脚本などの基礎を作るのが極めて難しいのだろう。例えば、一向宗という宗教、現代と違う価値観、強い暴力や性などは現状のテレビではほとんど出せないので大変だろう。
 しかし、NHKは同じ傾向の失敗を何度も何度も繰り返しているし、迷走を年々悪化させている。特に架空の女性主人公、女城主直虎、花燃ゆ、八重の桜ではことごとく失敗して年々視聴されなくなっている。

 表面的な話題性や大人の事情ではなく、まず面白い題材かどうかを前提に物語を作った方がいいのではないかと思うが、組織がデカくてカタいと難しいのかと思った。

 

 

・総評

 しっかり見続けた人には好評だが、大多数のそれ以外の人には嫌悪を持って扱われたり、無関心になるのだろう。戦国トレンディドラマとしては佳作だと思った。

 

 残念な点として、明らかに女性目線で話を組み立てようとしていたのに、下手に解説や男視点、客観性を入れてお茶を濁していたことがある。思い切って視野を狭くして直虎から見た主観のみにして、一般的概念などすっ飛ばして感情をもっと押し出せば一本筋の通ったストーリーになったのではなかったのだろうか?

 全体としてこういった新しい取り組みを行おうとしているが、おおむね中途半端になっているために、どうしてももろ手を挙げて非難も賞賛もできないという感覚に落ち着く。

 各項で書いたように、ドラマ単体の質は維持されても、NHK大河ドラマという既存のシステムや価値観が足を引っ張り、価値を下げていることが印象に残った。

 

 ということで、「変わり廃れてゆく時代劇の1ページのような作品」というのが今作の評価となった。

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